九条は昨日会ったのは絶対古井だと思ってたしかし、古井は羽渡とも会ってないと言うのだ。


「おかしいな・・・でもあれは絶対古井だよな・・・」(よし、羽渡に聞いてみるか!)

「おはよう!」


そう言いながら九条は教室のドアを開けた。しかし、教卓に立っているのは先生だ。しかも、皆は机に座っている。皆からの視線が痛いほど刺さる。


「遅刻だぞ、九条」

「すいません」


今日はついてないなと思った。登校しょっぱなから違ってたような気がする。時間を巻き戻して、やりなおしたいほどだったが、さすがにそこまでは出来ない・・・・・不幸だ・・・と思うのは今日だけかもしれない。

九条は、1時間目の後の放課、羽渡に聞いてみることにした。


「羽渡ぉ 昨日は古井に会ったよな?」

「まぁな、というか会っただろ」

羽渡はいつ見てもシャツ肩かけスタイルである。

「いや古井がさ昨日は会ってないって言うんだ」

「それは変だな」

「だろ?」(やっぱ古井が間違えたとしか考えられない、古井はとぼけることがあるからな、きっとそうだ!よし、この話は終わり!)


九条は本当はこの話をさっさと忘れたかった。しかし、忘れることなんかこれっぽっちもできない。古井があんな真面目に練習するなんて、嵐でもきそうだ。やっぱり、ドッペルゲンガーなのかな、とも思っていた。


そして放課後


堂波と柳田が喋りながら部室に来た。


「あー、疲れたなー」

「ふふ、今日も練習しないのか?」

「いいんだよ、最近は結構やったからな、休みが必要だ」

「そうだな」


堂波と柳田は暗黒の表情を浮かべていった。特に柳田の顔が怖い・・・。

そのとき、堂波は古井を見つけた。しかし、そこには真面目に練習してる彼の姿があった。

変だと思いながら堂波は話かけることにした。

ようやく練習も終わり、九条と堂波は帰宅するところだ。


「はぁ、やっと終わったな!」

「いつもより、動いたからな」


それ以上は特に会話もなかった。こういう時、なんにもしてないのに気まずい感じがする。


しばらく歩いて堂波が


「あ、じゃぁ俺コッチだ、じゃぁなもう一人の古井に気をつけろよ」

「・・・もう一人の古井、か」


そのとき九条は誰かに肩をたたかれた


「うわぁ!!!」


びっくりして逃げそうになったが、声を聞いて安心した。ような気がした。


「なーに驚いてんの?」

「!!って、本物の古井か・・・」


しかしよくみると古井のネクタイが結んでいない。そしてその隣には羽渡もいた。


「もしかして、ドッペルゲンガーかと思ったのか?」

「何故それを・・・?」

「どうやら、1年の一部で噂になってるらしいからな」

「じゃ、そろそろ帰るか」

「じゃぁな、飛斗」


次の日


少し遅くなってしまったような気がする、というかこれはもう遅刻か?と思うほど遅れている。

しかし、九条の前に古井がいて、少し安心した。


「飛斗、今日は遅めだね」

九条は、羽渡と何処へ行ったか聞くことにした。

「昨日は羽渡とどこかにいったのか?」

「え?昨日は誰とも会ってないよ」

「え・・・でも」

「それってもしかして、なんとかゲンガーじゃないの?」


九条は頭を殴られたような衝撃を感じた。

(いやいや・・・そんなまさか)

「くく・・・なーんてねそろそろ授業始まるぞ?」


そういうと古井は先に行ってしまった。


九条もその後を追うように走った。




しばらく練習した後、皆は休憩することにした。

その休憩の場を借りて、堂波はあのときのことを言うか迷ってたが、結局言うことにした。

「なぁ、昨日の夜に古井を見た奴いる?」

みんなの視線が堂波のほうへ向いた。すると古井が

「その話は終わったじゃん!」

「いや、でもあれは絶対古井だって」

九条が柳田に聞く。

「何が・・・なんだ?」

「実は、かくかくしかじかで・・・・・・・・」

柳田はこれまでのことを九条に話した。

「俺は見てないけどな」

「役立たず」

「う、うるさい!」

そのとき、大山が初めて口をひらいた。

「・・・それってもしかして、ドッペルゲンガーじゃないんですか?」

古井がわざとらしく

「ドッペリゲルガー?」

「ドッペルゲンガーな」

あっけもなく修復されたようで恥ずかしかった。

「なんじゃそりゃ?」

堂波が聞く。

「簡単に言うと、もう一人の自分ですよ」

「なんだそれ?すっげぇ痛いな」

「自分のドッペルゲンガーを見た者は、死んでしまうらしいですよ?」

「ええー!?」

大山が薄い笑みを浮かべたので、堂波は背筋が凍るような気がした。

「そ、そんなの噂だろ?さっさと練習始めるぞ!」

皆はそのことを忘れるように、とっとと練習を始めることにした。