1時間目の授業後、堂波は無田に昨日の夜、古井と一緒にいたか聞くことにした。

「なぁ、無田昨日の夜9時くらいに、古井と一緒にいたか?」

「ああ、古井は9時には俺らと一緒にいたな」

今気づいたが、そのとき古井と遊んでいた羽渡も無田の隣にいた。

「な、何~~?」

無田は冗談を言わねぇよな、と思いつつどうしてこんな奴らが古井の友達なんだ・・・とも思っていた。

実を言うと、無田は浮いた存在の不良なのだ。いつも学校には9時前にくるし、ネクタイは首にかけてるだけで結んでやしない。しかも隣にいる羽渡は夏でも冬でも白い半袖のシャツを着てるのではなく、肩にかけてるだけだ。当然、ネクタイは縛っていない。普通なら先生の指導が入るハズだ。なのにどうして・・・

こう思っているうちに古井がいつの間にか堂波の隣にいた。

「ヘヘーン!これでジュース一本おごってくれるんだよな?」

「な!俺はそんなこと言ってねぇ!」

「いや、聞いた!このオコリザル」

「そんなこと言うのはこの口か~~~」

堂波は古井のほっぺをつかみ、ぐりぐりしてじゃれていた。


放課後・・・

結局古井にジュースをおごった堂波は自分のサイフを見てためいきだけをついていた。まるで、通販で頼んだものが自分の想像してたのと違っていたような・・・そんな感じがした。(当然、堂波は通販で物を買ったことがないが。)

「おーい、そろそろ練習はじめるぞー」

「えー?」

そこにいたのは同じく、同クラス、同じ部活の九条飛斗がユニフォーム姿で立っていた。

「そうですよ!ゆったりしすぎです!」

またもや同じユニフォーム姿の大山輝之が九条の隣に立っていた。大山は堂波たちとは1学年下である。

堂波たちが入ってる部活は、野球部。

しかし、ほかの部活と比べ全くやる気のない部でもある。

一人、やる気を見せているのは大山だけで、あとの全員はいつものんびりしている。

大山に続くように、しかたなく、堂波も練習することにした。

翌日。

堂波たちが通ってる中学校の制服は学ランやセーラー服ではなく、白のシャツにブレザーを着ている、ちょっとほかの中学とは違った制服だ。

「おーーっす」

スポーツバックを肩に下げて教室に入った堂波は、まず先に古井のところへ行った。

「お、お早う堂波」

堂波は聞いてないようすで、

「なぁ、古井昨日の夜9時くらいに外に出てただろ?」

「え、そんなことはないよ。昨日は3人で泊まりだったし」

3人というのはおそらく、古井といつも一緒に遊んでいる無田と羽渡のことだろう。

「いやいや、じゃなくて、昨日外に出てただろって、俺は見たんだよ」

「はぁ?見間違いじゃないのか?」

「いや、俺は見た!お前が路地裏に消えてったのをな!」

「本当か?ちなみに俺は外には出てねーからな」

「な!テメェふざけるのもいい加減に・・・・・・・・・」

「おいおい、2人とも落ち着けって」

2人に割り込んで入ってきたのは同クラスで同じ部活の柳田和樹だ。

彼は顔色がほかの皆より悪いので、あだ名が「ゾンビー」になっているが、彼は別に気にしてないようだ。

「・・・そこまで言うなら、無田に聞いて見ろよな?」

「ああ!これで嘘だったらジュース一本おごれよ!」

柳田はそれを阻止しようとしたが2人はそれを無視した。

「はぁ・・・全く」


とある商店街に一人の少年が歩いていた。

彼の名は堂波おこる。

もう夜9時だというのに中2が夜の商店街をぶらぶら歩いてるので、

なんとも不良っぽく見える。

「はぁ、お腹空いたなー」

少し歩いて堂波は見た。

建物の角に隠れるようにして人が立っていたのである。

「ん?あれは・・・」

彼は結構目がよかったので夜の暗いところでも

それが誰なのか確認することができた。

「あれは・・・古井だよな・・・?」

そこには堂波と同じクラス、同じ部活の古井健太が立っていたのである。

「おーい古井ー」

堂波は声をかけたが、聞こえてないのか、古井はさっと姿を消した。

「あ、路地裏に消えた・・・待てーー!」

堂波は路地裏を見てみた。

しかし、そこにはもう古井の姿はなかった。