九条は自分の家の部屋の中にいた。九条の家は2つある。一つはもともとあった家で、もう一つは新しいが、いかにも地震が来たらくずれそうな、そんな感じの家である。


九条は自分の部屋のベットの上で考え事をしていた。古井と堂波のことだ。


(今日は古井と堂波が自分から練習していた。いつもなら真っ先に遊んでいた二人がだ。古井に関して言えば数日前からおかしかった・・・まさかドッペルゲンガー?いや、違うにしても何かあるとしか・・・)


そこまで考えたそのとき、何者かが部屋のドアを思いっきりあけた。

そこに立っていたのは、堂波だった。


「どうしたんだよこんな時間に・・・?」


そこまで言ったとき、堂波にいきなり肩をつかまれた。あきらかに様子が違う。


「飛斗、飛斗、飛斗、飛斗、飛斗」

「な・・・っ!?はなせ!!」


堂波はなおも、九条の名前を連呼しながら襲いかかってくる。


「飛斗、飛斗、飛斗、飛斗、飛斗、飛斗」


このままじゃ殺されるとおもったそのとき、誰かが堂波を押し倒した。

大山だ。


「九条先輩!」

「大山」

「さぁ、ここは逃げましょう!」

「おう!」


そして、なんとか逃げ切ったが、いつ堂波が来るか分からないので、しばらく身をひそめることにした。


「ここまでくれば大丈夫です」

「おい!アレは?あのおこるはなんなんだ!?」


九条は息が切れて、酸欠になるかと思うくらいに叫んだ。


「いきなりですが・・・九条先輩はドッペルゲンガーの存在を信じますか?」

「へ・・・?それは分からないけど・・・」

「あの堂波先輩はドッペルゲンガーなんです」

「そ、そんなバカな・・・」


「ドッペルゲンガーは存在します。そしてあることがきっかけで、ドッペルゲンガーが現れるとそいつは徘徊しだします。ドッペルゲンガー自体に人を襲う能力はありません・・・・・が、ドッペルゲンガーはその本人に入り込むことによって支配することができるんです」


「な・・・なんだって・・・?」

「奴らは仲間を増やそうとします。苦情先輩が襲われたのはそのせいでしょう」

「じゃぁおこるは・・・?元にもどせるのか!?」


大山は少し間えおあけて

「残念ながら・・・・・」

そう答えた。


九条は顔から血の気がひいてくるのが自分でも分かった。


「う、嘘だ・・・そんなのいやだ!」

「先輩、ここは逃げましょう。俺たちだけでも助からないと」

「ああ・・・・・・そうだな・・・・・」


堂波、古井、みんな俺が助けてやる・・・かならず助かる方法があるハズだ・・・。そう思い、九条は走った。


翌日

昨日は家から出るのが遅かった九条も今日は早くでることにした・・・というか、早くですぎたみたいだ。


そこで九条は古井と無田に出会った。無田はいつも遅く来るハズだが。


「おう、古井と無田か」

「お!飛斗今日は早めだね」

「そっちもな」

「じゃ、また学校でな」


そう言って九条と古井は別れた。

そこで九条は考えたやっぱり、古井がどうもおかしい。だが、そう決めつけるのも変だなと自分で思った。


「はぁ~もう!もどかしいな」


九条は正直言ってイライラしたが、今はイライラしてもどうもならないと思ったのでやめた。


放課後

九条が部室に入るといつものメンバーがそろっていた。


「おっす」

「遅い!もう練習はとっくにはじまってるぞ!」


そこには早速バットを持って今から練習します、という雰囲気をかもしだしてる堂波だった。


「え、もう練習か?」


大山がグローブを手にかぶせて九条のもとへ歩いてきた。大山はピッチャーなのだ。


「はい・・・先輩たちがやる気なんです」

「いつもの遊びもなしにな」


柳田が言った。

そう言うと堂波が


「何言ってんだよ俺たちも練習くらいするよ」

「そうだよ、柳田」


柳田は一瞬え?とした顔をしたが、すぐに


「ああ、そうだな・・・」


その会話を聞いてた九条は思った。堂波もあきらかにおかしい。こんな練習してる堂波はいままで見たことがない。それなのに彼は自分から練習をしているように見えた。


そして部活が終わり・・・


「ふぅ~今日はいっぱい練習したな」

堂波が口を開いた。

「そ、そうかな」

「なんかみんな元気ないっていうか・・・・・・・・」

「そう?いつもどおりだったよ」


古井が言った「いつもどおり」という言葉がおかしいと九条は思った。

真面目に練習するのがいつもどおり・・・ほかの部に関したらいつもどおりだが、ココの野球部は例外である。


そして帰り

九条と堂波は一緒に帰ってた。

このしーんとした空気の中、九条は思いきって口を開いてみた。


「なぁ・・・今日はやけに静かじゃないか?何かあったのか?」

「別に・・・何もないぞ」

「そ、そうか」


やっぱり堂波も古井みたいにおかしい。そう思っていたら


「飛斗」

「へ?」


九条は急に声をかけられたのでビックリした。


「もう家だから・・・じゃぁな」

「あ、ああ、じゃぁな」


そう言って堂波と九条は別れた。

部室に来た堂波と柳田は真面目に練習している古井の姿を見つけた。

堂波は、古井の元へと近づいた。


「どうしたんだよ、先に行ってると思ったら一人で練習しちゃって」

「え?俺たちは野球部なんだぞ?これくらい当然だろ」

「・・・・・・・・・・・」


そう言うとすぐ練習に戻った。古井が自分から練習するなんてありえない。野球部がどんだけ練習しても変わらないのは古井だって、堂波たちだって分かってる。なのに、こんな真面目に練習してるなんて・・・変だ。


「おーーーっす」

「こんにちは」


九条と大山が部室に入ってきた。すると九条は古井の姿を見て


「あれ?古井が練習してる」

「たまには先輩らしいとこ見せないと!」

「すばらしい心がけです」


大山がすごく感心している。まぁ、大山はこれが普通なんだろう。

堂波たちもうんざりしたような顔で


「はぁ、しかたない今日は練習するか」

「遊びは後だな」


そして皆は練習に入った。



部活後 堂波と九条は一緒に帰ってた。


「はぁ、今日はほんっと疲れたぜ」

「そうだな、でもまぁいいじゃないか。古井のおかげで皆やる気だしてたし」

「まぁーな・・・」

「でも最近の古井はおかしいんだよな」


少し間があいた。やっぱこの話は持ち込むべきではなかったのだろうか、と考えてたが


「あんま考えすぎると体によくないぜ!じゃぁな」

「おう!」(そうだ・・・深く考えすぎだよな)


この話は終わりと思ってたのに、どうしても気になってしょうがなかった。

そのとき九条は後ろから足音が近づいてくるのを感じた。

しかし、そんなこと気にするわけない。


「あれ?」

なんと、その足音の正体は堂波だった。変だなと思いながら

「おこる、どうしたんだ?戻ってきて何かあったのか?」


だが堂波はまるで九条の声など聞こえてないように、スタスタ歩いていった。


(な、なんだ今のおこる・・・話かけても無視するし・・・もしかしてドッペルゲンガー?)


九条は身震いした。

「はは・・・まさかな」


そう独り言を言って、九条は家へと帰った。