さようなら | 作家 坂井あおのブログ

作家 坂井あおのブログ

    絶えず移動していく僕ら
      止まれない私たち

小説・シナリオ(ドラマ、映画、CM)・写真詩集作家、坂井あおの日々浮かんでは記憶の海に消えゆく思いを気ままに綴るブログです。



12月の半ばに、97才の祖母が他界しました。
私が実家に戻った日の夜中でした。

実家に戻った私は、眠り続ける祖母の手を取り、
祖母から聞いた祖母の小さい頃の話や故郷のこと、私との思い出を、ずっと話して聞かせていました。

そして、「おばあちゃんが話してくれたこと、全部私が覚えてるから、安心してね。大好きだよ、おばあちゃん」と呼び掛け続けました。

覚えてるからと言ったのは、認知症が始まり、不安を覚えていた祖母に安心してもらおうと言ったことで、まさかそのまま永遠の眠りにつくとは思っていませんでした。

結果的に、亡くなるおばあちゃんへの誓いのようになりました。

訪問看護師さんは、耳は聞こえているから、と言っていたので、私の言葉がおばあちゃんに届いていて、少しは安心していけたのならいいなと思います。
確かめようもないけれど。

訪問看護師さんと一緒に、おばあちゃんを綺麗に拭いて、浴衣に着替えさせてもらいました。
整えると、まるで微笑んでいるようないつもの顔で、とても亡くなったとは思えなかった。

あまりにも可愛いから、その後も何度も何度も見てしまうくらいでした。

火葬したあとも、この年齢とは思えないほどの立派な骨がたくさん残っていて、焼かれてもなお、驚かされる祖母でした。

身近な人の死であり、最期の身支度をしたことは、私のなかに何か大きなものを残しました。

それが何かはまだわからないけれど、とても大きな大切な何かです。

おばあちゃん、長い間お疲れ様。
大好きだよ。
たくさん、ありがとう。


年の瀬に、東京にほんの少しだけ雪が降りました。



お世話になったみなさんに感謝して、戻ることのできない時の門を、またひとつ潜ろうとしています。