いつかの置き土産 | 作家 坂井あおのブログ

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小説・シナリオ(ドラマ、映画、CM)・写真詩集作家、坂井あおの日々浮かんでは記憶の海に消えゆく思いを気ままに綴るブログです。

遠い昔、ひととき暮らしていた町を通過した。

広くて浅い川の流れる町。

家に行くには駅から線路を潜った。
その狭くて四角いトンネルの先は、なんとなく別次元に感じた。

川には必要以上に大きく立派な橋がかかっていて、中洲で鳥たちが騒がしくしていた。

瓦には石の段があって、下手くそな音階練習をする楽器を持った人がたいていいた。


その町に暮らしていた頃の私は、とても傷ついていて、とても若かった。
好きな人に影響を受け(それは今も同じ)、自分をしらなかった。

広がる時間の大切さも知らずに、影に憧れていた。

あの頃の自分と友達になったら、私は何て思うだろう?
あの頃の私は、今の私をどう思うだろう?

何故時は戻れないのか?
本当に戻れないのか?知らないだけなのか?
何故人は記憶をこんなにも持ち続けるのか?

何故忘れないのか。
忘れられることが怖いのは、何故だろう?