
先日、地元に帰ったとき、友達が車で迎えに来てくれた。
車が私の生まれ育った家の前を通る。
かつての町並みは、新しく建ち並んだ高層マンションですっかり様変わりしている。
その先に、私が生まれ育った家があるはずだった。
その家は、父が建てた家で、母の夢だった白い壁に真っ赤な三角屋根の家だった。
真っ赤なバラが大木になって、2階までおおっていた。(バラは写真よりずっと成長した)
その家は、もう十数年前に売ってしまったのたけれど、そのあと、ペンキで色が塗り替えられて、バラの木もなくなっていた。
それでも、そこを通れば、たくさんの思い出があった。
でも、先日、友達の車で通りかかると、家はなくなっていた。
そこは更地になっていた。
私が生まれる前に建てたわけだから、家も年を取っていた。
子供の頃は、地域のしがらみとか好きじゃなかった。
一人暮らしをしたとき、自由になったとほっとした。
それでも、それでも悲しかった。
私が生まれ、両親や兄弟と過ごせたその場所は、やはり特別な場所だったのだ。
でも、それは今も変わらない。
兄が海外に渡り、姉が育児と旦那さんの店の手伝いで忙しくて会えなくなっても。
たまに兄が帰国すれば、私たちは集まって、共に過ごす。
家族は増えたけど、そこにある暖かいものはかわらない。
私は、あの家に生まれた末の娘として、みんなに愛されていた。
そして、私は家族を愛していた。
あのバラも赤い三角屋根ももうないけれど、私はこの先も夢であの家に帰るだろう。
あの場所が私にくれた時間は、私の中にあって、消えることはない。