さよなら生家 | 作家 坂井あおのブログ

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小説・シナリオ(ドラマ、映画、CM)・写真詩集作家、坂井あおの日々浮かんでは記憶の海に消えゆく思いを気ままに綴るブログです。




先日、地元に帰ったとき、友達が車で迎えに来てくれた。

車が私の生まれ育った家の前を通る。
かつての町並みは、新しく建ち並んだ高層マンションですっかり様変わりしている。

その先に、私が生まれ育った家があるはずだった。


その家は、父が建てた家で、母の夢だった白い壁に真っ赤な三角屋根の家だった。

真っ赤なバラが大木になって、2階までおおっていた。(バラは写真よりずっと成長した)


その家は、もう十数年前に売ってしまったのたけれど、そのあと、ペンキで色が塗り替えられて、バラの木もなくなっていた。

それでも、そこを通れば、たくさんの思い出があった。


でも、先日、友達の車で通りかかると、家はなくなっていた。
そこは更地になっていた。

私が生まれる前に建てたわけだから、家も年を取っていた。
子供の頃は、地域のしがらみとか好きじゃなかった。
一人暮らしをしたとき、自由になったとほっとした。

それでも、それでも悲しかった。

私が生まれ、両親や兄弟と過ごせたその場所は、やはり特別な場所だったのだ。


でも、それは今も変わらない。
兄が海外に渡り、姉が育児と旦那さんの店の手伝いで忙しくて会えなくなっても。
たまに兄が帰国すれば、私たちは集まって、共に過ごす。
家族は増えたけど、そこにある暖かいものはかわらない。

私は、あの家に生まれた末の娘として、みんなに愛されていた。
そして、私は家族を愛していた。

あのバラも赤い三角屋根ももうないけれど、私はこの先も夢であの家に帰るだろう。


あの場所が私にくれた時間は、私の中にあって、消えることはない。