ものの成り立ち | 作家 坂井あおのブログ

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小説・シナリオ(ドラマ、映画、CM)・写真詩集作家、坂井あおの日々浮かんでは記憶の海に消えゆく思いを気ままに綴るブログです。

鉋(かんな)職人の碓氷さんは、今年の春に亡くなられたそうです。


私の好きな番組、和風総本家(テレビ東京)のスペシャルで、

世界で愛される日本職人の作品の特集をしている中で、出てきた人物です。


スウェーデンの大工さんも、日本の鉋職人さんも、

そして、一緒に喧嘩しながら工房を支えてきた碓氷さんの奥さんも、

みんなが、涙をこらえきれず、鉋にいちずに人生をかけた碓氷さんのことを思い出し、

語る言葉をつまらせていました。



大変な労働だし、

鉋自体は、ごく専門的な人にしか目にすることもないけれど、

その鉋によって生まれた建築や家具は、世界にたくさんあるんですよね。




鉋は、私を懐かしい気持ちにさせました。

子供の頃、よく階段下の扉から、鉋やのこぎりを出して、眺めていたんです。


うちにはすごく立派な大工道具がありました。


祖父が船大工だったからです。

もちろん、私が生まれたころには、もう祖父が作る木の船ではなく、

現代的な船が主流になっていたけれど、

田舎の家も、田舎にある家具も、祖父が作ったものでした。


鉋が削る木の匂い。

細かい粉と薄く丸まった木。

その木目。


懐かしい。


そういえば、魚を釣ってきて自分でさばく父も、

青森ひばの大きなまな板をよく、鉋かけていたな。





たまに、思うんですよね。

なんか、日常的に科学素材とか色いろ使用しているけど、

あまり意識していなくて、

でも、こういうものを、人間は産み出して、生きている。


この素材、ひとつ、ひとつ、

部品のひとつ、ひとつ、

本当に必要なのか、人間は不思議な生き物だけれど、

誰かがこれを生み出して、

その利用法をどんどんふくらましていく。



道具として、飾りとして、贈り物として、作品として、消費として・・・。



私はこのペットボトルのキャップについて、どこまで知っているのだろう?

私はこのSDカードのことを、ちゃんとわかっているのだろうか?


当たり前のように使用している、日常にあふれている、生活を取り巻く道具たち。

それを作り出している人たちは、この道具にどんな思いを乗せたのだろうか。




理解できないものに囲まれ、知った風に過ごしているけど、

中身がわからなくても、これを作った人の思いが少しでもわかったらいいのにな。



そんなことを、たまに思って、そして、忘れて、いろんなものに囲まれて生きています。


脚本家・写真詩集家 さかいあおのブログ