『中国の隠者』読了。 | 呉下の凡愚の住処

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井波律子先生の『中国の隠者』(文春新書)を読み終えました。


井波先生と言えば、『三国志』や『三国志演義』の翻訳者として
三国志好きには馴染みの深い先生ではないでしょうか。


かく言う私もご本人の著書を実際に見かけたのはこれが初めてだったのと、
本文で取り扱われている時代が古代~清と幅広かったので、迷わず購入。



この本は16章から成っており、
中国の歴史と絡めながら各時代ごとの“隠者”が紹介されています。
隠者と言ってもみんながみんな許由みたいな人ではなく(笑)、
官界に隠遁した東方朔、官界と俗界を渡り歩いた李白
官界を退いて庭園を楽しんだ袁枚などなども“隠者”として扱われてます。


ここでの“隠者”は
「時流や政治に逆らいながら、自分の生き方を貫いた人」といった意味合い。
なので仙人のような人の記述は求められませんが、


米フツ(くさかんむり+市)や徐霞客八大山人……


といった、(自分からすると)「知らないよ!」という人が半分以上だったので、
この本を読んで得られたものは非常に大きかったです。
さらに彼らが生きた時代背景も追ってくれているので、
中世以降の歴史の勉強にもなりましたし……


自分を貫いた人っておもしろい人が多いですよね。虞翻とか。(……)
そんなおもしろい人たちの話がこの本には詰まっています。



印象的だったのは李白について書かれた章。
私、李白のことをこれまで何も知らなかったんですが
この章を読んで、目から鱗が落ちまくりでした。
酔っ払って、池に浮かんだ月を掬おうとして溺れ死んだって……
(↑あくまでそういう“伝説”ということですが)
なんとも素敵な伝説ではありませんか!


長江(仮)に船を浮かべて、いい感じに酔っ払って、
水面の月を掬うなんて、もうカッコよすぎます。
想像したら涙が出てきました。(……)
ほんとカッコよすぎだろうこの人。


この本に出会うことがなければ、
李白のことをロクに知らない、味気ない人生を送っていたでしょう。
どうしてこんなに感動してるかって、わたし酒飲みなんですよ(笑)。
酒飲みとして、李白のあの伝説はもはや神々しいです。
あんな伝説が立ったら酒飲み冥利に尽きるでしょう。


もう今、李白が「自分の尊敬する人物リスト」のものすごく上位に来てます。
熱しやすく冷めにくい性格なもので、
こういう素敵な人を知るとすぐ熱を上げてしまいます(笑)

彼の詩も気になるけど、李白本人もすごく気になってしまいましたよ。



あと、この本で紹介されている“隠者”さんは
江南、江東地方を旅して回っている人ばかりです。
本の題名を「隠者はいかに江南が好きか」に読みかえてもいいくらい。


西晋以降の時代、華北は異民族がモリモリやって来るので
江南に人が集まるのは仕方ないっちゃ仕方ないんですが……

政治的事情で仕方なく、ということもあると思います。
そのうえ、南京はとっても発展都市だったらしいので
「旅をするなら江南」という理屈も分かります。
ここで取り上げられている以外にも、
江南地方の魅力に取り付かれた人は山ほどいたでしょう。


けどね、ずるいですよね、こういうの。
私が長江ファンだと知っててやってるのか! と思ってしまいます(……)
私も隠者になりたい。毎日酒を飲みながら長江を眺めて暮らしたい。



この本を読んだ感想
「隠者のことが分かった」
を超越して
「自分も隠者になりたいと思った」


…………(間)


そして江南がもっと好きになりました!
それはそれは魅力的な場所だったのでしょうね、
中国の歴史の中で、長江に遊んだ人たちのことをもっと知りたくなりました。


肝心の“隠者”について言及していなくて申し訳ないですのう……
そこはぜひ実際にお手にとって見てみてください(笑)
あ、読みやすさは申し分ないです。この私が三日とかけずに読み終えましたから。



『中国の隠者』 (文春新書) / 井波 律子



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