角川文庫『ソクラテスの弁明』読了 | 呉下の凡愚の住処

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読むのに何日かかってるんですか!?
というのはさておき(おけないよ……)、いい本でした。
文体に慣れないうちは読みにくいなーとおもってたけど、慣れれば大丈夫。
ざっと読み返したときも意味を把握できてたし。

でももし機会があれば、違う出版社の訳本も読みたいね。


ソクラテスという名を聞く機会はやはり哲学に接するときだろうから、
この本も“哲学の入門書”みたいにおもわれてしまいそうだけど、

特にそんなことはない、という印象。
「プラトンから見た、ソクラテスという人を紹介する本」のような……
(他のソクラテス関連のものを読んでいないので)この本に限っては、ですが。
この本に収録されている『エウチュプロン』からは哲学臭がしますが。


角川文庫から出ているこれは
『エウチュプロン』『ソクラテスの弁明』『クリトン』の3篇から成っていて、
本の題名である『弁明』はそんなに長くないです。
ソクラテスさんは裁判で死罪になって処刑されちゃった人なので、
その裁判での弁明の様子を記したものが表題の1篇なんですね。

ちなみに自分は『エウチュプロン』が気に入りました。



自分の備忘録として、雑感を書いておきます。


私が多感だったお年頃(笑)、「無知の知」という考えに非常に感銘を受け、
リアル中二だったこともあり、ソクラテス信者みたくなってました。痛い。
まあ中二病というのはそういうものですよね(笑)
しかしソクラテス本人について理解を深めようとするでもなく、
なぜかそのまま懐疑論に萌えてしまったので、
この歳までこの本を読んだことはなかった。というのが前提。


(ここから雑感)
ソクラテスという人はね。頑固な人。頭が固くて自分を曲げない人。
頭がよいはずなのにそれを政治に活かそうとはしない……
古代中国にもそんな人はたくさんいますね(笑)
そして、自分に絶対の自信を持ってる気がする。
(↑あくまでプラトンの書いたものを読んでみた上での感想ですが……)
ある意味「無知の知を悟ってるぶん自分はすごい!
 そりゃ自尊心にも溢れますよ~無知の知を悟ってるから!」的な、
開き直りのようなものすら感じる。


「負けめの議論を勝ちめにひっくりかえす人(ほぼ訳文まま)」
なんて言われてたけど、ほんとその通り。
哲学的視点を一切拭って読んだとしたら屁理屈かと思いますもの、彼の言葉。
ソクラテスという人は何を言われてもきっと黙らないとおもう。
哲学では「なおも食い下がる」って大事ですよね。
駄々をこねるとは違うのですが。
まあ実際、今回の本を読んだ限りでは、議論において
ソクラテスが常に優勢に見えるので、食い下がるっていうのは違うんですけど。

(なので、この本自体は哲学書じゃないにしても、

 哲学に興味を持ってる人のほうがより楽しんで読めるかも)


彼が自信にあふれた(ように見える)人というのはかなり意外。
「自分が実は知者ではないことを知っている」って、
謙虚っぽい見解だと思いませんか?
世界史の教科書でも「(無知の知を発見するなど)謙虚な人物だが、
頭がよすぎて危険と見なされ処刑された」的な書かれ方をしてたし……(笑)


だからこの本読むまで、
“変人で議論の押し売りをしてくるけど謙虚な人”だと思い込んでました。
対話相手に「それは違うんじゃないの? もうちょっとがんばろうよ」
みたいなことを延々と言い続けるような人だとはとても想像つかなかった(笑)
謙虚ってわけじゃないけど、かと言って反国家的でもないんですよね。

自分は彼のこの辺りを孔子と比べちゃったりしました。
ソクラテスは、政治に積極的に関わろうとはしなかったけど、
生涯ほとんどアテナイに暮らしてたらしいです。
孔子は最後こそ諦めて戻ってきましたが、

自分の考える政治ができる国を求めてめっちゃ移動しましたよね。


二人とも、
「徳を説こうとした」「変人だけど(失礼)人が集まってきた」
って点は共通しているんですよね。
対話によって相手の徳を高めようとしたソクラテスと、
政治によって国に徳を施そうとした孔子。
ぜひ二人で議論を戦わせてほしいですね。
勝敗なんかはないでしょうが、性格的に仲尼がいじめられそうな気がします(笑)


(今回の本を見た限りでは)ソクラテスの発言にはイラッとするものも多い。
が、彼には友人も多いのだから、愛される一面が確かにあったのだろう。
ソクラテスは、彼を愛した人たちの目にはどのように映っていたのか?
そこが非常に気になるので、(史料としての信憑性はこの際気にならない)
彼の他の弟子が書いたとされる書も読んでみたいと思います。