仕事関係で知った、福永武彦の本。
気になるきっかけになった作品はまた別なのだけど、これが圧倒的に面白い、と同僚の先生に紹介されたので読んでみることに。
おもしろそうなんだけど、BLあるよ、と言われて一瞬テンションが下がったわたくし。
相変わらず小説とかドラマとかそういうのを嗜むときには共感をひとつの大きな軸としている身(恋愛ものなんかは特にね!)からすると、BLなんぞ共感しようがないじゃないと思ってはいたのよ。
だからかつて面白いな、と思ったことのあった三浦しをん作品についても心惹かれなくなっていったわけで。
でも、やっぱりきっかけになった本がものすごく面白かったから、BLだとてやっぱり面白いところもあるんじゃない?と借りてみることにした。
まだ第一の手紙までしか読んでいないけれど、うん、やっぱり名作に書かれる愛は普遍的じゃないか!!というのが率直な感想。
ぜんぜん共感できるようん、むしろ普通の小説より恋愛の本質をついてる感があって、そうそう、恋愛ってそうだったと自分の経験に意味づけをしてくれる感覚がある。
この感覚なんだよ、最近の私が求めていたのはー。
「僕等のように芸術家でない人間にとって、人生は彼が生きたその一日一日と共に終って行くのだ。未来というものはない、死があるばかりだ、死は一切の終わりだ。現在というものはない、……そう、多くの場合に現在さえもないのだ。そこには過去があるばかりだ。それは勿論本当の生きかたじゃあるまい、今日の日を生きなくて何を生きると言うのだ。しかし人間は多く、過去によって生きている、過去が、その人間を決定してしまっているのだ。生きるのではなく、生きたのだ、死は単なるしるしにすぎない。」
「そうかもしれません。しかし汐見さんが本当に苦しんでいるかどうか、表面以外にどうして分かるんです?僕なんか何の価値もない人間なのに、汐見さんにはもっと別のように僕が見えるんでしょう。僕たちはそうした、表面だけの、眼に見えるものの中に住んでいるんです。そこからは抜け出せないんです。」
恋愛がらみでなくても考えさせられる言葉の多い本である。
この後に第二の手紙の賞もを待っているので楽しみだ。