翌日の朝、「私は昼間は仕事がありますので。」 と、宋さんは孫さんというおじさんを連れてきた。
どうやら代わりに僕を接待して常州の町を案内してくれるらしい。
孫さんはかつて茨城で研修を受けたことがあるそうだ。
そしてさらに、孫さんは周さんという貿易会社経営のおじさんを連れてきて、3人で町をうろうろすることになった。
これが『面子』を重んじる中国流の接待の見本なのだろう という感じの、完璧な一日観光であった。
天寧寺というお寺と紅梅公園という庭園を巡り、昼食は立派なホテルの別館で食べる。
ここでさらにそのホテルの総経理をしている王さんという人が登場。
すごい豪華な料理をごちそうになったが、誰も一銭も払わずに出る。
どうも総経理の王さんが帳簿をいじくってなんとかするらしい。
正直言って、少々肩のこるような思いであった。
皆立派な肩書きをもつ年上の3人が、ただの旅行者の僕にこれでもかの接待をしてくれるので、申し訳なくて恐縮してしまうのである。
気軽に宋さんを訪ねてきたのは軽率だったのかもしれない。
しかし、これも中国での経験のひとつという事なのだろう。
それぞれのおじさん達は、客人としての僕を預けたそれぞれの知人の顔に泥を塗る事のないよう、全力を尽くして僕を歓待してくれた。
その強固な横のつながりを感じるのは、ちょっとした感動であった。
常州は、緑と水路の多い美しい町だ。