#20 長距離バス 揚州―常州  | かふぇ・あんちょび

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このカフェ、未だ現世には存在しません。

現在自家焙煎珈琲工房(ただの家の納屋ですけど…)を営む元バックパッカーが、

その実現化に向け、愛するネコの想い出と共に奔走中です。

 『中国人』と聞いて思い浮かべるビジュアルのイメージには、ある程度決まったパターンがあるのではないかと思う。
僕の場合はそうだ。
特に、老人と若い女の子について。
きっとカンフー映画の観過ぎだと思う。

 今回のバスは座席指定ではないらしかったので、僕は、鳥打帽をかぶり杖を持った”いかにも中国のじーさん”的風貌のおじいさんの隣の席を選んだ。
なんとかしてこのじいさんとコミュニケーションをとってみたくてもうそわそわであったが、じいさんはバス出発前後のあわただしさの中、まるで仙人のように無我の境地に入ってしまっている。

 僕は朝食に買ったガビガビのパンをちぎって、いかがですか?と勧めてみたが、ワシはいらないのじゃ という風に小さく手を振って断られてしまった。
次には折鶴を折り、鶴は千年生きるおめでたい鳥だから、じいさんも長生きしてくれ というような意味の漢字をノートに並べると、ホッホッ、好、好。と大事そうにポケットにしまってくれた。
そのあと、おもむろに煙草を勧めてきたのでありがたく頂戴する。
バスの中で吸っても全然問題ないらしい。
吸殻は床で踏み消す。

(僕は後にこの煙草の処理の癖が抜けず、日本に帰国した際、迎えに来た従兄弟と入ったミスタードーナツの床で煙草を踏み消し唖然とされた。)

 そうするうちに、今度は3人掛けの座席のじいさんと反対側の空席に、途中乗車してきためちゃくちゃ綺麗なおねーさんが座り、ツーンとした感じでウォークマンを聞き始めた。
中国じーさんとチャイナむすめにはさまれ、まさに理想的な座席配置である。

 試しに彼女にも折鶴を渡してみると、なんとこの女性は少し英語ができた。
会話には自信がないらしく、英語と中国語のちゃんぽんを筆談する という妙な形でやりとりが始まった。

中国には「千紙鶴」という歌があって、とてもうれしいわ。

と言う彼女の名は徐海雲(Xu Haiyu)、24歳、中国外運江蘇集団公司揚州高港公司というまことに長い名前の会社に勤めているOLさんらしい。
一緒に鶴を折って遊ぶ。
実家のある高港という場所までの短い時間であったが、彼女は途中下車する際、筆談ノートに、「一路順風 」の文字と共に電話番号を残していった。

 僕が出会った中国女性のなかで文句なしに一番の美女であった。