ゲリラの車は森へ入るように、大きく右へ車間距離を開けた。
アーリャとタイキの思惑が当たれば、次の急カーブで攻撃を仕掛ける筈。
車内の四人は口を食いしばり、その時を待つ。
山からは冬眠できなかった熊のように荒々しいエンジンの音が聞こえてくる。
「後はスナイパー君頼みか」
ケイトがしっかり荷物に張り付きながら呟いた。
そして遂に、死神が待ち受ける急カーブがガタガタ揺れるヘッドライトに薄く照らされ、目の前に露わになった。
対岸に居るアーリャは立射を諦め、膝立ちでの射撃を試みていた。
出来る事なら伏せて撃ちたい所だが、丁度低木が道路脇に生えていて視線が覆われてしまう。
荒くなった呼吸と心拍数を戻そうと、大きく冷たい空気を吸い込んだ。
狙うは体当たりを仕掛けようとする、ゲリラの黒い車。
肉眼では霧と闇で全く見えないが、サーマルゴーグルにはしっかり写っている。
二台があと少しでカーブに差し掛かろうとした時…ゲリラが樹木の無い坂から輸送トラックに向け、ハンドルを鬼のように切り始めた瞬間、アーリャは引き金に掛けた指へ力を込めた。
そんな僅かな一撃必殺の可能性をアーリャは見逃さない。
発射用の筒の中、ロケットは点火した。
――シュバァッ
対戦車榴弾であるロケット弾は灰色の煙で濃霧に上書きしながら一直線に進む。
――ゴオォォォ
そんな音が聞こえ、左を見たライバー。
そして、煙を吹き出しながら細長く奇妙な形をした物が、高速でフロントガラスを横切った。
運転中にも関わらず、思わずタイキもその物体を目で追いかける。
その先には斜面を走るゲリラの黒いバギー。
輸送トラックをスレスレに飛んで来たロケット弾は、バギーの屋根を捉えてガンッと貫通、そして…
――ドゴォォォ…ン
オレンジ色の煌々とした炎を背景に、車内はギリギリのカーチェイスの結末に弾ける歓喜の声。
「くっそクレイジーだなコノヤロー!!」
「戦功者が目の前だぜ、ヒャッホー!!」
カーブを抜け、白い映像で表現されたアーリャの目の前でタイキは車を停めた。
疲れた足取りでゆっくりとアーリャが近付いて来る。
「よう、変態」
「やあ、変態」
アーリャはサーマルスコープを脱ぎ捨て、タイキと拳と拳で軽く小突く。
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