● ゆっくり練習する 空手編
以前の記事でゆっくりと練習する事の大切さを、私がオーケストラの練習で体験談を元に説明しました。
今回は空手についてのエピソードをお伝えしたいと思います。
こういった身体の使い方に関しては基礎から応用まで幅広くエピソードがあります。
まずは立ち方ですね。
基本中の基本にして永遠に学ぶ事が出てくるとも言われるナイハンチ立ちはもろにゆっくりとやった時に習熟度が見えるものです。
ゆっくりやろうとすると、進行方向の逆側の足を動かす時に蹴ってしまったり、バランスが崩れる事がよくあります。
速いスピードでポンポンやっていると勢いでごまかせる部分が、ゆっくりやる事によってごまかしがきかなくなってしまうという事ですね。
ここで問題になるのが、速くやった方が出来た気分になるという事と、「基礎なんて早く終わらせて凄い技をやりたい」というこれもまた中級者に良く生まれる思考です。
特に武術等の場合、なにか超奥義のようものを身に着けて楽々相手を倒してしまうというような幻想に囚われる事はよくあります。
凄い技を追い求めることが悪いわけではありませんが、師範の動きなどを見ていると凄い技の根本にあるのは揺るがない基礎です。
まずは立ち方と移動を覚えるのが一番大事、というか体感としては立ち方や移動がしっかりしている状態で技を使うのが一番楽というような感じがします。
技の練習をする時も、ゆっくり練習することは非常に大事です。
約束組手や想定の動きに対して返し技を入れる練習は、丁寧に原理を考えながら再現性を取ることを目的として行います。
よく「実践ではそんなにゆっくりきてくれない」とか「そんな決まった動きを相手がしてくれるわけがない」と言ってそういった稽古を否定する人も居ますが、それは半分合っていて半分間違っているのです。
稽古で行う技をそのまま実践で使おうと思えばそれは確かに不可能ですが、稽古は原理を抽象化する言わば分析の作業です。
そう考えるとゆっくりと丁寧に動いて細部まで確認することの大事さもわかりやすくなるのではないでしょうか。
また、これは実際そういう稽古をやってみたことがある人は分かると思うのですが、エイヤッと一気に技をかけるのは意外と簡単に出来る感覚があるのですが、ゆっくりやろうとすると難易度がかなり跳ね上がるのです。
ゆっくりやればやるほど「これでよかったのかな?」とか「今途中のプロセスが上手く行かなかったかも」という思いや緊張がが湧き出てきてしまうのです。
考えようによっては、そういった緊張や余計な考えが浮かぶ状態になっても正確に技を出せるということが実践で使える習熟度とも言えると思うのです。
ゆっくりと丁寧に、最初のうちはもどかしさが強いでしょうが、そこをなんとか耐えましょう。