● ゆっくりと練習する オーケストラ編
今回お伝えするのは「何か技術を身に着ける」という事に関して人が陥りがちな落とし穴について書いていこうと思います。
趣味の領域でも仕事の領域でも「技術を身に着けたい・向上させたい」と思う気持ちに反して全く修得が進まないという悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか?
そういった悩みを解決するのに大事なのが「ゆっくりと練習する」ことなのです。
「もったい付けて何を当たり前な事を」と思う人も居るかもしれません。
しかしむしろそのように感じる人ほど改めてゆっくりと練習する事の大切さを思い出してほしいのです。
ちょっと具体例を挙げて説明しましょう。
まずは先日投稿した記事を参照ください。
この曲は特にコントラバスに関して細かい動きを長く続ける部分が多く、パート譜を追うのもなかなか苦労する曲なのです。
その記事でも書きましたが、そこそこ経験を積んだと自負していた私でもちゃんと弾ききれないのではないかという程の難しさです。
そう思っていました。
個人練でさらっていても中々先に進まず、本格的に諦めかけていたあたりで、指導者を呼ばず団員だけで行う自主合奏があったのですが、そこで「ゆっくり練習する」事の重要性を痛感したのです。
普段指揮者に振ってもらう合奏では曲の雰囲気や全体の流れの話をするので、個々のパート譜の習熟度というところまでは中々見れないので自主合奏を行うのですが、そこで強制的にみんなでゆっくりのテンポで弾くという練習をしたのです。
すると今まで「これは無理だ」と思っていた部分がするする弾ける。
そしてテンポを上げても弾けて「今までの苦労は何だったんだ?」となったわけです。
この現象を自己分析してみると、「ある程度速いパッセージも弾ける」という自負と「早く先に進みたい」という焦りが混ざっていたなという反省が浮かび上がりました。
半端に先の事を気にしながら手癖で多少弾けてしまうので突っ込んでは上手く行かず、また考えなしに突っ込んでは何も得ずに時間だけ無駄にする、そういう練習をしていたのです。
これは何事においても中級者位になってから起こり得る現象だとも思っています。
中級者くらいだと、「大成功とはいえないがそこそこの成功」みたいな経験は多く積みあがります。
本来上級者に上がるにはその「そこそこの成功」を超える何かをしないといけないのですが、中級者で終わってしまう人は「そこそこの成功」で満足するか、それ以下の失敗を恐れて挑戦せずに、結果として中級の成功体験に収束する行動しかできなくなるのです。
実際、プロの演奏家の話を聞くと、技術の修得に必要なのは地道な練習の積み重ねしかないとの事です。
うすうす自覚していた所もありますが、初心者が積み重ねる地道な練習をいかに飽きずに続けられるかが技術の境目になるのだなと思いました。
技術がついてきたなという自我が芽生えた時が踏ん張りどころです。
焦りを感じる時ほどゆっくりと練習しましょう。