前回の記事からの続き、人が奏でる音楽の方が良いと思っていた私が「これはむしろ人の手を介さない方が良い作品なのかもしれない」と思った音楽についてのお話です。 

 

 一つ目は弦楽曲。カール・ジェンキンス作曲の「パラディオ」の1番と3番です。 

 

 

 

 

 

 

 

 

※3曲目の打ち込みっぽい音源は消えてしまいました…

 

 私自身の楽譜制作ソフトに関する知識が浅いので、後者が本当にソフトに打ち込んだ音楽かは怪しいのですが、より正確にきっちり演奏しているのは後者の方では無いでしょうか。 

 

 最初の動画を見て貰えれば分かる通り本来は3曲構成なのですが、2曲目に関しては楽譜制作ソフトによるものと思しき物は見つかりませんでした。しかし、曲調的に2曲めは流石に人の演奏の方が良さそうな気はします。

 

 本題の1曲目と3曲目、皆さんは確実に人の演奏である最初の動画とそうでは無さそうな後者2つの動画どちらが良いと思いますか?

 

 音楽の何が良いかを判断する感性は人それぞれ違うので個人の主観になってしまうのですが、私は後者二つの動画のほうが良いと思います。

 

 その理由は楽譜を見る限り、この曲は正確性を追求する曲だと思ったからです。それぞれのパートがパズルのようにきっちり正確にはまっていくことが曲の良さに繋がっているように私は感じたのです。

 

 そういった正確性を追求するタイプの曲に関しては、前回の記事で挙げた人の演奏の特徴である、アンサンブル面での駆け引きによる演奏の変化=ライブ感のような物が逆に不利に働いてしまうように思えます。

 

 これは勝手な推測ではありますが、作曲家の方はこの作り方は狙って作っているのかなとも思います。

 

 3曲構成のうち最初と最後が正確性の求められる音楽だからこそ2曲目が際立つのではないかと思うのです。

 

 

 さて、もう一つ私が衝撃を受けた曲を紹介しましょう。一気に毛色が変わってボーカロイドの曲です。

 

 それは米津玄師がハチ名義で活動していた時の曲「リンネ」です。

 

 

 

 どことなく暗い雰囲気、意味深な世界観、ミステリアスな魅力を持った歌です。歌詞の内容や映像から真意を考察という点でも盛り上がりを見せる曲です。

 

 内容の考察に関しては、探せば私より深い考えを持っている方は多くいると思いますのでここではいたしません。

 

 私が注目するのは、感情に訴えかける曲でありながら感情が差し込まれないほうが心に響くという点です。

 

 考察までは出来ませんが、歌詞をざっと聴いただけでも辛いことに見舞われながらも感情が吐き出せないようなドロドロしたものを感じると思います。

 

 吐き出せないほど大きいのか、それとも壊れてしまったのか、ある種人間らしいとも言える暗い感情が内包されているのに妙に淡々としたトーンで歌われている様が聴くものを曲の世界観へより深く引き込んでいるように感じます。

 

 ボーカロイドの曲というものは、正直な話クリエイターの方針にもよって色が大きく変わるので、そこで括って分類するのは難しい所があります。

 

 しかし、一つの捉え方として人がカバーしても良い曲と、そのままボーカロイドの方が良い曲というのはあるように思えます。

 

 そこの境目は曲そのものが人間らしいかであるというのが私の一つの見解です。

 

 ボーカロイドでの曲作りはしたことがありませんが、色々な曲を聴くと絶妙な調整で本当に人間が歌っているような曲もあれば、少したどたどしいと言うか、機械っぽさを出している曲もあります。

 

 前者のパターンの良曲は人が歌ってもあまり違和感がないと言うか、一般的なカバー曲と変わらない印象があります。

 

 後者の良曲はとんでもなく無茶な早口があったり、世界観が吹っ飛んでいたりと、あえて人間らしくない歌声のほうが良いなと思えるパターンになります。

 

 その中でこの「リンネ」はすごく特殊に感じるのです。

 

 曲の雰囲気は人間ならではのものが感じられるのに、どこか浮世離れした声の方が合うように感じたのです。

 

 この曲も人気曲なので色々な人がカバーしています。勿論それぞれの良さがありますが、私は作品に対して下手に人が歌うことで「人間らしさ」を注いでしまうとバランスが崩れてしまうイメージがあります。

 

 簡単に言うとこの曲をカバーして良い曲だなと思わせる方は、歌の部分だけ変えるのではなくエフェクトを入れたり、声色を使い分けたり等のプラス要素を入れているのです。

 

 語れば語るほどよく分からなくなってきてますね(笑)

 

 無理くり纏めるなら人間離れした正確性を求められる良い曲と、人間離れしているからこそ人の心に染みる曲があるというところでしょうか。

 

 まだまだ音楽の世界は奥が深いです。色々な楽しみ方が出来るので皆さんも色々な角度から音楽を解釈してみてください。