今回は前回に引き続きの聴きに行った演奏会の感想、というか演奏面での気づきがあったのでその備忘録です。前回よりは具体性の高い話になりますがお付き合いください。 

 

 やはり特に感銘を受けたのはチェロの先生の演奏でした。学生の頃も低弦の練習を見てもらった時に指導の一環でお手本で軽く 弾いてもらえることはありましたが短い時間とはいえ客席から聴くことが出来たのはとても良い機会でした。

 

 その方の演奏のどこが素晴らしかったかと言うとやはりその音質でしょうか。さらさらと爽やかな広がりのある音でした。

 

 弦楽器に限らず、色々な楽器には奏者毎に色と言える様な違いが生まれるものです。とても説明は難しいのですが私はそういった個性も2つに分けられると考えています。

 

 それは鋭く直線的なツヤのある音柔らかく広がりのある豊かな音です。ここで見本となる動画でも上げられれば良いのですが、あくまで大別した傾向なのでどちらか一方の要素しか無いという演奏は流石にありませんし、録音の機材や再生機器によっても違って聴こえるので動画でのお伝えは出来ません。

 

 それこそ演奏会に行って色々な奏者を聴き比べたり、自分自身で楽器を演奏してみて感じて貰えれば多少は分かると思います。

 

 大別した二つの音の質は優劣があるわけではありません。先にも述べた通り一方の要素のみの演奏は無いです。場面ごとに使い分けますが、自分のやりたい音楽をしたい時にどちらを選ぶかといった所に個性が出るのでしょう。

 

 ただ、あくまで私の主観としては鋭く直線的な音を出す人がかなり多い傾向にあるように思えます。実際そういった音は本当にストレートに耳に残りますし、テクニックを凝らしている様も分かりやすく「凄い」と言う認識を自他共に得やすいと思います。

 

 柔らかく広がりのある音の方は特にソロだったりなどで一人の音が必要な時にはあまり用いられないような印象です。しかし、この音はストレートに聴こえるタイプの音よりも倍音が多いのかむしろ空気感というか、肌で音をキャッチしているような感覚が生まれたりします。

 

 弾き方としてはこれはあくまでイメージとして捉えてもらいたいのですが、鋭く直線的な音は楽器に対して弓でエネルギーを与えて鳴らす、どちらかといえば力強い感覚です。

 

 対して柔らかく広がりのある音は与えるエネルギーは必要十分以上は決して与えず楽器の振動を一切邪魔せずに響かせるという感覚が一番強いというのが現在の私の認識です。

 

 初めて客席で聴いた先生個人の音は、柔らかく広がりのある音の要素が凄く強いように感じました。上品で優しい音そんな感覚です。

 

 何より一番感動したのが高い音域になってもその音質が変わらないことでした。

 

 高い弦を弾いた場合、悪くすると叫んでいるかのような棘のある音になりがちです。比較的どんな奏者も高い音は鋭い音になりがちです。

 

 上手い人がそういった音を鳴らした時はシャープな洗練された音に聴こえますが、いずれにせよ柔らかさや優しい音質の要素はなくなりがちな傾向にあると思います。

 

 しかし、先生はかなり高い音域を弾いても柔らかく歌っているかのような音質だったのです。

 

 弾いている姿を観る限り大事な要素は余分な力を加えず、弓と弦の接触点のコントロールを正確に行う事ではないかと思います。

 

 余分な力がかかり過ぎないように弓は軽やかにかつ大きなモーションでのびのびと弾いていらっしゃいました。

 

 私も楽器は違えどああいった音が出せるようになりたいものです。新たな目標が出来たことでモチベーションも上がったので先生の様な音が出せるよう頑張ります。