実は前回の記事の空手の稽古と、前々回の記事の母校の管弦楽部の練習を見に行ったのは同じ日の事なのですが、短い時間の間に拙いながらも教える立場と教わる立場両方に立ったことで得た気付きが有りました。

 

 オーケストラと空手の内容が入り乱れてなかなかカオスですが両者に通ずる物を感じたので抽象化してみようと思います。

 

 タイトルにもある通り今回のテーマは基礎応用についてです。

 

 先に部活の練習を見に行ったのでそちらの話からになります。過去の記事にも書きましたが、本来楽器の奏法を習得するには基礎を徹底して扱いを身体に落とし込んでからでないと曲に移るべきではありません。

 

 基礎の徹底の度合いとしては「最初の3ヶ月は開放弦のみ」と言われるほどです。開放弦とは要するに左手を押さえずに右手だけの練習です。

 

 基本的に弦楽器は4本の弦が張ってあります。まずはそれぞれの弦に干渉しないように弾く練習、違う弦に移る時に音が不自然に途切れないようにする練習、音量を出す練習細かいリズムを表現する練習を重ねるという事です。

 

 実際確かにそれくらい奥が深い要素なのは間違いないです。因みに急に空手の話をぶっ込みますが、空手の方にも稽古に入る前段階として「立ち方に3年」という言葉があったりします。

 

 私が所属する稽古会の指導者は古くからいる人なので本当に最初は約3年立ち方に費やしたそうです。しかし、それが自らの基礎への自信にもなっていると仰っていました。

 

 確かに弦楽器の基礎にせよ空手の基礎にせよ、間違いなく言える事は本当に言葉通りの期間基礎だけに費やした人はやはり高度な何かを得ているのです。

 

 話を戻しましょう。部活として音楽に取り組む以上合奏は必ず通る道です。そうすると右手で開放弦しか弾けない状態では行けないため学生オーケストラではそもそも格言通りに基礎を費やすことが出来ません。

 

 左手というのも中々に厄介で、主にオーケストラで使われる範囲だけに絞っても4本の開放弦に対し14のポジションさらにどの指で押さえるかも考え、音の並びや音色も考慮に入れると相当なパターンを頭に入れなくてはいけません。

 

 それを真正面から積み重ねていると半年以上は個人と向き合わなくてはならないので曲に至れないのです。

 

 既に曲の練習が始まってしまっている中後輩にどうやって基礎を身に着けさせるか…考え抜いた末に私は一つの対策を考えました。

 

 それは曲に出てくる所から基礎練を作る。つまり応用から基礎を取り出すということです。

 

 幸いにして聞き馴染みがあって取り組みやすいフレーズが有ったのでそれを区切っていき、「ここまでは同じポジションで全ての指を使う練習をする」「ここは音階練習に出てくるポジション移動を身につければ出来る」「ここを弾く事を意識して移弦の練習をする」といった指示を出しました。

 

 難しいもので基礎練というものは成長の実感が自分では捉えづらい物です。だからこそ敬遠されてしまいがちなのです。

 

 曲と結びつければ弾けるようになった実感も湧きやすいのでは無いかなと思ってのことです。結果はすぐには見えませんが今後に期待です。

 

 とはいえ後からこのアドバイスも中々良いものだったのではないかなと思える瞬間がありました。

 

 それは空手の稽古…ではなくその後の懇親会を兼ねたちゃんこ会での稽古会長の言葉です。

 

 黒帯稽古会等で師範から指導を受ける訳ですが、師範の多彩な技術を習った全て追った所で出来るはずが無いという話でした。それはつまり表面をなぞった所で意味が無いということだそうです。

 

 大事なのはその技術がどうこれまで身に付けてきた基礎と繋がるかを理解できた時に真の意味で習得したと言えるのだそうです。

 

 なんとなく基礎と応用の結びつきとしては、オーケストラと変わらないなと思った瞬間でした。

 

 基礎ばかりをひたすらやるのではなく、応用と行き来する。そうする事で基礎の練習のそれまで気づかなかった所まで目が行くようになる

 

 とのことでした。こう考えると私が管弦楽部の後輩にしたアドバイスも馬鹿にならない気がしませんか?

 

 勿論これは自分自身にも言える事なのでしっかりと基礎と応用の行き来を積み重ねたいと思います。