前回の記事では臨場感を大切にするという認識が、1つの分野だけで語られる偏った考えでは無いという話を収斂進化を例に挙げつつ違う分野の書籍でも近いことが語られているというお話をしました。

 

 今回は私の実体験に基づく話になります。

 

 初めに、前回紹介した高岡英夫氏の理論である重力を意識に上げるため、「地球の中心から約6000km上空に立っているイメージを持つ」を実践した時の話です。

 

 正直な所このイメージを読んだだけでは「???」となりませんか?重力を意識すると言っても、最初は想像だけでは分からないのでガラリと体感が変わるとは思えませんでした。

 

 そこで取り敢えず6000kmは脇に置き、「上空に立っている」イメージを体感しようと思いました。

 

 ちょうど職場にある実験場のベランダに床の一部分が格子状になっている場所が有ったのでそこに立ってみました。

 

 面白いものでそこに立つと床の強度は充分な筈なのに不安定に感じるんですね。安全靴を履いているので直接足が着いてない部分を感じることはほぼ出来ないのにも関わらずかなり体感が変わります。

 

 確かにこの感覚を知るとなんとなく「これが重力か?」と思える様な物が感じられる様になりました。その上で書籍のその項目を読むと理解度が上がっていることも分かります。

 

 空手の稽古においても同じ様な臨場感が伴う事で1つ体得をした経験があります。

 

 約束組み手に近い二人組で行う練習で「相手に気づかせないで躱す」という練習をしました。

 

 内容としては片方が軽くジャブを打ち、もう片方が手のひらでその拳を掴むように当てるという動作を何回か繰り返します。

 

 何回か繰り返すとお互いの中で「だいたいこの辺りでぶつかる」という認識が揃います。そうして認識が揃った辺りでジャブを受けていた方が、途中までは全く同じ軌道で当たる瞬間に手を少しだけずらして躱す。という練習です。

 

 この練習はかなり面白かったです。ジャブを打つ側で上手く躱されるとスッポ抜けるような不思議な感覚があります。

 

 多少近いイメージを挙げるならば階段で最後の一段を見誤った時の感覚でしょうか。来ると思い込んでいる衝撃が来なかった時の違和感は凄かったです。

 

 面白いものでこの不思議な感覚を実感できた躱しの練習は初心者ながらかなり上手く出来るのです。反対に骨格を揃えるといった基礎はまだ正解の感覚を掴めていないため、なかなか上手く行きません。

 

 躱しの練習があった稽古の後の雑談で、先生はまた面白い話をしていました。それは師範からの言葉で

 

 術は自分で掛かると信じないと掛からない

 

 という言葉でした。特に今回体感が強かった躱しのような不思議な感覚を起こす術は自分でどの様な感覚が有るかを理解して、その上で掛からないかもと思ったときには掛からないのです。

 

 これも一種の臨場感を大切にした観点だなと思いました。そもそも躱しの稽古も「ここで拳と手のひらがぶつかる」というイメージ=臨場感が強いからそれが無かった時に途轍もない違和感が生まれるのです。

 

 躱された側の違和感は文章でも分かりやすいかと思いますが、ポイントなのは自分自身も出来ると信じることです。

 

 これは無意識下の働きでも有りますが、出来ないかも…という認識を持ってしまうと本当に身体は上手く行かない様に動きます。

 

 分かりやすい例で言えば何かを発表する時等に自分が緊張していると思ってしまったら身体のコントロールが利かなくなることに近いです。ポジティブかネガティブかではなく臨場感を強く持ってしまった方に動きは流されるのです。

 

 反対に言えば出来るという臨場感を持てば身体がある程度勝手に動くということでもあります。もちろん訓練されていることが前提では有りますが、刷り込まれた動きは直感としてかなり正確に働きます。

 

 実はこの空手の師範からの格言と近いことは私のもう一つの趣味であるオーケストラでもあったりするのです。

 

 もはや権威ある誰かがいった言葉かどうかすら分からないのですが、弦楽器界にまことしやかに語り継がれる格言で

 

 この音が鳴ると確信して弾けば何処を押さえてもその音が鳴る

 

 というものです。これは有る種暴論に聞こえるとは思いますが、先程も言ったように訓練を前提とした直感としたら説明が付きます。

 

 要するに、その音が鳴る臨場感を強く持って直感に従えば無意識が勝手に正しい身体の動かし方をする。という事です。また逆の捉え方をするとその状況で変な場所を押さえた時はまた直感として確信が持てなくなる筈なのです。

 

 これはなんとなく私自身後者の経験の方はよく分かります。ここであってるかな?と疑問に思ってしまうと途端にソワソワしてしまい、必ず変な音が鳴ります(笑)

 

 

 前回と今回に示した通り、苫米地式コーチングに限らず他の分野においても違った形で臨場感の大切さは見いだされているようです。

 

 今後このブログでも良い臨場感を持つのに良い方法があれば紹介していきますが、皆さんも自分なりに良い臨場感を持つ方法を探してみてください。きっと実りが有るはずです。