鈴木一葉選手のYoutubeチャンネルに埼玉栄高校の清田先生が出演し、日本人短距離選手の限界について語っています。

 

 

詳しい話は動画を見ていただくとして、現状の日本人の限界は男子が10秒0、女子が11秒3と語っており、これは日本人の将来に渡っての限界ではなく、日本人指導者×日本人選手の組み合わせによる現状の限界がそのタイムになっているとしています。

 

この限界を突破するには、サニブラウン選手や勝瀬選手などが強く主張している海外に身を置いて新しい知見を得る事を清田先生も推奨しています。

 

もちろん、海外に出て新たな知見を得てパフォーマンスを高めるという方法は非常に有効な手段だと思います。

 

しかし、それ以外にも日本人選手の限界を引き上げる方法もあるのではないかと特に最近ここ10年ほどの日本選手権決勝のデータを測定していて感じています。

 

日本人コーチが日本人選手の可能性に蓋をしていると考える選手や関係者も少なからずいると思います。

 

筆者も日本選手権のデータを測定して、その思いを強くしました。

 

X(Twitter)で筆者の投稿を追っている方は気付いていると思いますが、世界に近づいた桐生・山縣時代の日本選手権でさえ理想的なレース展開が出来ている選手が非常に少ないのが現状です。

 

ケンブリッジ選手のみほぼロスのないレース展開で走れていて、他の選手は多かれ少なかれ伸びしろのある数値ばかりでした。

 

日本人コーチはレース展開の最適化に対してのノウハウが少なく、日本人選手の潜在能力を最大限まで引き出していないように見えます。

 

100m走においてアジア人の限界を突破したと言えば中国の蘇炳添で間違いないと思います。

 

蘇炳添と言えば、ゴリゴリのマッチョ化したところに目が行きがちだと思います。

 

もちろん、フィジカルを鍛え、その鍛えたフィジカルを生かす技術を習得するのもタイムを短縮する大きな要因になると思います。

 

しかし、それだけでなく、蘇炳添もレース展開の修正がタイムを短縮するひとつの要因となっています。

 

 

マッチョ化する前の2015年時点では前傾後のピッチアップが全くない状態でした。

 

それでも10秒10(-0.1)で走るのですからレース展開が最適化されれば9秒台で走れる潜在能力を感じさせます。

 

山縣選手に完勝したアジア大会決勝では理想的な数値が並んでおり、無風9秒台という日本人コーチ×日本人選手では到達出来ていない領域に到達しています。

 

海外の有名コーチならば前傾後のピッチアップが全員の共通認識かと言えば違うと予想されるのでそこは注意が必要だと思います。

 

モーリス・グリーンを育てたジョン・スミスはその辺りはしっかりと認識してそうですし、ジャマイカのキシェイン・トンプソンやシェリカ・ジャクソンが所属しているMVPも分かっていると思います。

 

対して、カーリーのコーチのクインシー・ワッツは400m出身なだけにその辺りの認識はなさそうです(カーリーの前コーチのアレイン・フランシクも400m出身なので認識していないと思います)。

 

100mのレース展開の最適化というのは日本人がこれまであまり取り組んでこなかった分野なのだとデータを計測して強く感じます(フィジカル強化や動きの最適化に目を奪われがち)。

 

ここもしっかり意識する選手が増えれば、日本人選手全体のレベルが底上げされ、海外に行かなくても10秒0や11秒3の壁は突破される可能性は十分あると思います(もちろん海外に行けるチャンスがあるのなら海外に行くべきだとは思いますが)。

 

日本では中学生や高校生のうちから海外に行くことはほぼないです。

 

中学生や高校生のうちからしっかりとレース展開の最適化を意識した練習に取り組むことによって、その後のパフォーマンスにも良い影響を与えるのではないかと思います(目的を持ったブレない練習が積める)。

 

筆者は、常日頃、1~16歩を大きく走り、16~21歩で前傾後のピッチアップを行えているかどうかを一番注目してデータ計測を行い、発信しています。

 

直接的・間接的にもそういう走り方が少しずつ増えてきている実感があり、様々な世代で好タイムが出始めています。

 

最近でも広島県新人戦にて松本真奈選手が11秒57(+1.0)の高校歴代8位、高2歴代3位の好タイムを出していましたが

 

松本選手は昨年の国体の時とは全く違う走り方をしています。

 

 

やはりレース展開の最適化を多くの選手が実践するようになれば全体のレベルが上がっていくと確信しています(全体のレベルが上がれば頂も高くなる)。

 

フィジカルを鍛え、そのフィジカルを生かす技術を習得し、そしてレース展開を最適化する作業をすることによって選手の力を引き出す事に繋がると考えています。

 

日本人だけの環境でも10秒0や11秒3が限界ではないと思うので、多くの選手・指導者がどのようなレースパターンをすれば100mを効率的に走れるのかを意識し(もちろん筆者が提唱している走り方が一番のオススメですが)、多くの選手が実践できるようになれば個人でも世界と戦える選手が増えていくのではないかと思います。