パリ五輪まで半年足らずとなった室内シーズン真っただ中の2月17日。

 

ブダペスト世界陸上100m銀メダルの若干二十歳のボツワナ人のレツィーレ・テボゴがヴァンニーキルクの持つ300mの世界記録を0.11秒更新する30秒69を叩き出した同日、ブダペスト世界陸上100m200m四継の3冠のライルズが約2週間前に大幅自己ベスト更新していた60mを0.01秒さらに更新して6秒43を記録しました。

 

今シーズンのライルズは中盤までには前半型選手を捕らえるパワーアップを見せつけ、パリ五輪に向けて両者とも視界良好と感じさせました。

 

ノア・ライルズの昨シーズンまでの60mの自己ベストは6秒51でした。

 

そこから0.08秒の短縮幅が大きい所に目が行きがちだとは思いますが、室内の記録というのはこれまで本気で取り組んできたかどうかという事もあるのであくまで参考記録という見方をしています。

 

特筆すべき事はライルズの今回の室内60mの凄い所は屋外の100mの60m通過タイムよりも速いという事です。

 

 

ライルズの昨年の主要大会の60m通過タイムは最速で世界陸上決勝の6秒46でした。

 

6秒44通過だとこのまま行くと9秒79~80辺りが見込まれます。

 

通常、室内の60mタイムよりも屋外のピークを合わせた大会の方が通過タイムは速くなります。

 

室内世界記録の6秒34を持つコールマンでさえ、100mの通過最速は6秒32と上回ってきています。

 

このまま怪我無く順調にパリ五輪を迎えれば、ライルズは風が悪くなければ60m通過が6秒44よりも速く入ってくる可能性が高く無風でも9秒7台が期待されます。

 

300mの世界記録を樹立したテボゴはまだ二十歳とこれから体が大きくなる時期です。

 

今大会のテボゴを見ると、昨シーズンよりも僧帽筋が発達していて体が大きくなってきている印象があります。

 

スプリンターは筋肉がつきやすくなる二十歳過ぎて22~23歳辺りでドカんと大きくタイムを伸ばす事が多いです。

 

まだまだ大きくタイムを伸ばす時期だと思うので、正直テボゴがどこまで記録を伸ばすのか良い意味で想像がつきません。

 

昨シーズンまでの課題を見てみると、20~40mまでの加速力がライバルに対して劣っている事が挙がります。

 

 

深い前傾区間である20m辺りまではライルズを圧倒します。

 

しかし、世界陸上決勝では20~40mの20mで0.05秒も差を詰められているので、ここの加速力の向上がテボゴが無風で9秒7台に突入するカギと見ています。

 

今シーズンのライルズは16~21歩のピッチが速くなり、この20~40mの加速力にさらに磨きがかかっています。

 

テボゴも前傾が終わるか終わらない辺りからのピッチアップがもう少し良くなるとライルズに対してもそこまで大きく負けないのではないかと思います(元々スタートから大きく入るタイプなので十分ピッチアップ出来る余地はある)。

 

40mまでの加速が良くなれば最終的なトップスピードも上がるでしょうからライルズ得意の後半でも遜色ない走りが出来ると思います。

 

今シーズンのテボゴの100mは16~21歩のピッチをきっちり上げられるかに特に注目したいと思っています。

 

パリ五輪では無風換算9秒7台対決を見たいと思っているので、その最有力候補の二人が非常に良いシーズンのスタートを切った事に非常にワクワクします。