100m男子日本記録は山縣亮太選手の9秒95(+2.0)で、サニ・ブラウン選手の9秒98(-0.3)無風換算9秒96が日本人の歴代最高パフォーマンスです。
サニブラウン選手の無風での9秒台は世界大会決勝進出レベルで、実際に世界大会でこのパフォーマンスを見せて2年連続決勝進出を果たしています。
世界大会決勝進出ラインが無風換算9秒台、世界大会メダルラインが無風換算9秒8台後半というのが最近の傾向です。
サニブラウン選手を除くと世界トップレベルに到達している日本人はおらず、日本短距離界は世界を追いかける立場です。
短距離トップ選手は黒人選手が圧倒的に多く、人種や骨格が違うので世界レベルの選手の走りは参考にならず、日本人独自の道を追求するべきだという意見もあります。
反対に、世界レベルの選手が結果を出している実績があるのだから、世界レベルの選手の走りを参考にし、細かいところは自分に合った走り方を追求すべきという考えもあるので、それぞれの考え方がどのくらいの割合いるのか知りたくてアンケートを取りました。
世界基準が6割、日本人独自路線が4割とやや世界基準派が多かったものの思ったよりも接近した結果というのが正直なところです。
筆者は世界のトップ選手のデータも集めている事から分かるように、世界基準を参考にする方が良いという考えです。
新指標の前傾後のピッチアップについて、歴代世界トップスプリンターはほぼ例外なくプラスになり、+0.10前後が多いです。
今年の世界トップスプリンターのデータを見て行きましょう。
全員プラスの数値となり、一番低い数値でもトンプソンの+0.05です。
では、日本人トップ選手達のデータを見て行きましょう。
パフォーマンスTOP3の3選手は全員世界基準の数値が出ていますが、前傾後のピッチの数値がマイナスになっている選手も多く、世界トップレベルと比べると1~16歩を細かく刻み過ぎて前傾後のピッチが上がっていない傾向が見て取れます。
世界レベルの選手ではセビルのみ1~16歩が2秒台ですが、セビルの身長は170cm台前半のように見え(170cmちょっと?)、身長を考えると特別刻んでいるわけではありません。
桐生選手でさえ、シーズンベストの時は前傾後のピッチがグンと上がったのでタイムが出ましたが、他のレースでは前傾後のピッチが上がらずタイムも伸びておらず、再現性を考えると個人的には細かく刻み過ぎているように感じます(9秒98のレースの1~16歩は3秒03)。
前傾後のピッチがマイナスの選手の中で最もスタイルを変えやすいと思われるのが小池祐貴選手です。
そもそも、9秒98(+0.5)の時は前傾後のピッチが+0.09と世界基準を満たしていました。
そして、現在師事しているジョン・スミスコーチはモーリス・グリーンを育てた名コーチで、モーリス・グリーンは前傾後のピッチがグンと上がるタイプでした。
小池選手自身変化を求めて渡米しているでしょうし、世界レベルのコーチングを受けて復活したいという思いが強いと思います。
小池選手はスタートの走り方においても色々試すタイプの選手ですし、前傾後のピッチアップが世界標準という事を知れば素直に受け入れて実践してくれそうな選手のように見えます。
来シーズン小池選手の走り方が変わり、今年のパフォーマンスを大きく上回ることを期待しています。
また、トップ選手に限らず一人でも多くの選手が前傾後のピッチピッチアップで二次加速を行うという意識を持って日頃の練習を行い、試合で実践して日本陸上界のレベルが上がることを願っています。