ブダペスト世界陸上2冠のノア・ライルズはダイヤモンドリーグファイナル100mに出場し、9秒85(+0.1)と世界陸上決勝に近いタイムを記録するも2位で今シーズンを終える事になりました。

10m区間タイムから見るライルズの強みと課題を見て行きたいと思います。

ライルズと言えば後半の強さが売りです。

ライルズに近い特性を持ったスプリンターを思い浮かべなら誰を思い浮かべるでしょうか?

筆者はタイソン・ゲイがライルズに似たスタイルだと考えます。

タイソン・ゲイの2009年世界陸上9秒71(+0.9)と今回のライルズを比較してみましょう。

 



スタートで出遅れるイメージの強いゲイの最初の10mは1.91秒です(2007大阪世界陸上の時も1.91秒)。

対してライルズは1.94秒とここで0.03秒の差があります。

10mを1.90秒掛かってしまうとかなり遅い部類です。

好調時の山縣選手の10mが1秒85を切ってくる事を考えると1秒94というタイムは9秒7台中盤かそれ以上のタイムを目指すとなるとネックとなってきます。

ライルズの最速区間は60~70m区間で0.83秒です。

ゲイも60~70mが最速で0.82秒となっています。

ゲイの0.82秒というのは非常に速いです。

手持ちの資料の中では0.82秒以上を記録しているのは北京五輪のボルトと2009年世陸のボルト(0.81秒)だけです。

0.83秒でも2001年エドモントンのグリーンと1991年のルイスしか見た事がないので0.83秒でも歴代でも有数のトップスピードです。

高いトップスピードがライルズの後半の強さの源泉というのがここでも分かります。

後半の強さには高いトップスピードとスピード維持能力のふたつが大きな要因になります。

トップスピード維持能力に関しては、最速区間のタイムと最後の10mのタイム差を比較するとよく分かります。

ライルズもゲイも最後の10mは最速区間から0.03秒落ちです。

0.03秒はスピード維持能力が高い部類と言って良く、0.02秒だと非常に高い数値となります。

パリ五輪では無風状態でも9秒7台は狙っていきたいところです。

まずはスタートの改善を行い、理想は10mで1.90秒を切る事ですが、少なくとも1.90~1.91秒ではまとめたいところです。

そしてトップスピード区間で0.82秒を記録するのが理想ですが、0.83秒区間を複数記録しても良いと思います。

現在のトップスピードは0.84秒よりの0.83秒だと思うので、これを0.82秒よりの0.83秒にすることで、0.83秒区間が複数出現するようになると思います。

ゲイは0.83秒以下が4区間、つまり40mあります。

ライルズも0.83秒が複数出るようになると無風で9秒7台が見えてくると思います。

パリ五輪では無風換算9秒7台決着を期待しているので、その可能性がある一人であるライルズには上記のポイントに気を付けて見て行きたいと思います。