ブダペスト世界陸上後最初の100mのダイヤモンドリーグは中国福建省の厦門(アモイ)で行われました。

 

走路が10レーンある珍しいトラックで、出場10人の恩恵を受けた1番大外の10レーンのジャマイカのキシェイン・トンプソンが好走したことによって、エンターテイメントとしても成功しました。

 

優勝したのは2019年世界陸上覇者のクリスチャン・コールマンで9秒83(+0.4)と今季世界最高タイをマークしました。

 

世界陸上では9秒92(-0.2)で5位と、このパフォーマンスを世界陸上で出せよという声が聞こえてきそうですが、以前の記事にもあるように、コールマンは決勝のスタートで躓いてしまいスピードに乗れませんでした。

 

準決勝では余力を残しながら9秒88(0.0)と今回のパフォーマンスに近いものを残していただけに、ライルズに勝って金メダルは難しかったと思いますが、銀メダルは十分可能な調子ではありました。

 

2017年ロンドン世陸決勝、2019年ドーハ世陸決勝、そして今回の10mごとの区間タイムです。

 

 

最も強かった時期のコールマンがほぼ戻って来ています。

 

2017年の世陸では10mの区間最速タイムは0.86秒です(水色で塗った部分が最速区間)。

 

2019年と今回は0.84秒が最高となっているので、トップスピードは復帰前の水準に戻っています。

 

前半速いコールマンが60~70m地点で最高速を迎えて、区間タイムが0.84秒だと他の選手はそうそう勝てるものではありません。

 

復帰後1年1年着実に調子を戻してきているコールマンだけに、パリ五輪も現状維持か僅かにパフォーマンスアップしてくる可能性が高いです。

 

金メダルを取れるかは分かりませんが、メダル有力候補になってくると思います。

 

コールマンと共に注目を浴びたのがジャマイカ選手権予選で9秒91を出して注目を浴びながら準決勝以降を棄権したキシェイン・トンプソンでした。

 

 

トンプソンの区間タイムを見ると、前後半バランス型に見えます。

 

50~80mの各10mを0.85秒で駆け抜け、最後の10mは0.88秒と最速区間から0.03秒落ちは悪くないので、前半からスムーズに加速しながら後半もある程度伸びるオールラウンダータイプです。

 

世界陸上準決勝敗退で今大会もコールマンから0.13秒遅れの3位に終わったフレッド・カーリーは無風換算で今回は9秒98と世界陸上とほぼ同じパフォーマンス(予選が無風換算9秒99、準決勝が10秒00)で世界陸上が絶不調という訳ではない事が示されました。

 

カーリーの持ち味は後半から終盤にかけての伸びですが、世界陸上では後半で追い上げられなかったので、今回のカーリーは頭を下げる歩数を伸ばし18歩にして後半対策を施してきたように見えました。

 

50mから90mまで0.86秒とスピード維持は出来ていますが、いかんせんトップスピードが低いので上位2人に後半の50mのタイムでも0.01秒負けています。

 

カーリーが9秒8台前半を出そうと思えば、最低でも区間最速が0.84秒、出来れば0.83秒台は欲しいところです。

 

前に人がいると力みが生じてタイムが落ちる事がよくありますが、カーリーが優勝した今季のダイヤモンドリーグの2試合の区間最速はいずれも0.85秒でしたので0.01秒今回よりも速いです。

 

絶対的なトップスピードの欠如が今季のカーリーの不振の大きな原因です。

 

反発力最強のナイキのマックスフライから、反発力はマックスフライやアディダスのプライムSP2に劣るアシックスのメタスピードSPに変更した影響が最高速不足に如実に表れているように思います。

 

久々の中国開催となったダイヤモンドリーグ厦門大会は、パリ五輪に向けて順調な歩みを見せているコールマン、トンプソンとこのままではアメリカ代表になることさえ危ぶまれるカーリーと明暗がくっきり分かれる大会となりました。