MDレコーダー 『 DENON DMD-1550 』 の修理 | アナログ三昧、そして時々ディジタルな日々

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ネットオークションで MDレコーダー『DENON DMD-1550』の中古品を落札しました。
天板に小さな凸凹が有ったりして外観には“やや難”があったけど、機能、動作は
全く問題ありませんでした。

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リモコンと取扱説明書も付いていました。

その後、主にFMの深夜放送をタイマー録音する用途で使用していたのですが、
半年ほど経った頃から、タイマー録音したはずの番組が録音できていないという
不具合が発生し始めました。
徐々に頻度が上がり、ほとんど100%録音されなくなりました。

タイマーを使わない通常の録音は正常に動作するので、先ずタイマーの故障を
疑って調べてみたけど、異常は見つかりませんでした。

次にMDレコーダーの取扱説明書を丹念に読み直したら、『電源ボタン』の説明の
所に次のような記述がありました
=========================================================================
 ご注意
 ・本機は、電源ボタンをOFFの状態にしたときや電源プラグをコンセントから
  抜いたときでも、録音や編集した目次情報(TOC)を記憶するためにバック
  アップ機能を有しています。
 ・バックアップ機能をご使用の際は、あらかじめ電源ボタンを押して、
  15分程度通電させてから使用してください。
 ・このバックアップ時間は2、3日となっていますので、録音や編集後は
  すぐにTOCの書き込みを行ってください。バックアップが切れた場合は、
  録音や編集した内容が消去され回復できません。
=========================================================================

このMDレコーダーには“TOC”(Table Of Contents:録音内容の目次情報)を
保持するためにバックアップ用の電池?を内蔵していて、そのフル充電時間は
15分程度で、その放電時間は2、3日程度という事のようです。

タイマー録音においては、録音終了時刻にタイマーがMDレコーダーの電源を
オフしてから次にマニュアル操作で電源をオンするまでの時間、MDレコーダー
は電源プラグをコンセントから抜いた場合と同じ状況に置かれるので、バック
アップ機能が働いて電池が少しずつ消耗(放電)する事になります。

しかし、私の使い方では連続60分以上の録音をしているので充電時間は十分確保
できるし、タイマー録音終了からマニュアル操作で電源をオンするまでの時間は
最大でも数時間までなので、放電しきってしまう事はないはずです。

念のため、タイマー録音をセットする前に15分以上の充電時間を確保してみた
けど、やはり結果はNGでした。

この結果からバックアップ用の電池が故障しているものと推定して、電池の
交換を試みる事にしました。

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先ず、使用されている電池の種類や実装方法を調べる事にしました。

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カバーを外しました。
手前の真ん中がMDドライブ、左奥は電源基板、右がメイン基板のようです。

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メイン基板にズームイン。
基板の左手前の赤円内に電池と思われる部品が実装されています。

パソコンのマザーボード上の電池のようにソケットに実装されたボタン型の
電池を想像していたのですが、これは基板に直付けされているようです。

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電池と思われる部品の真上から撮影。
“-”を示す矢印が右から左を向いているので、左が“マイナス電極”です。

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“プラス電極”側から撮影。
部品の縁の左上部分に『 5.5V 1.0F(ファラッド) 』と表示されているので、
これは“電池”ではなく“コンデンサ”のようです!

それにしても『 1.0F 』というのは超大容量です。
右隣の電解コンデンサが『 10μF 』なので、その10万倍です!

部品の縁の右下部分に“ELNA”とメーカー名が表示されています。
ELNA(エルナー(株))のホームページを覗いてみたら、これは『電気二重層コン
デンサ』という種類のコンデンサで、大容量なので二次電池のようにメモリー
のバックアップ用電源として使えるようです。、

『電気二重層コンデンサ』または『電気二重層キャパシタ』という名称は
聞いた事があったけど、実物を見るのは初めてです。

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プラス電極側の斜め上から撮影。

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マイナス電極側の斜め上から撮影。

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MDレコーダーの電源オフの状態でコンデンサの電圧を測定したら『約2.53V』。

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MDレコーダーの電源をオンしたら『約3.24V』になりました。

一応充電回路は機能しているようです。
コンデンサが故障しているかどうかは判断しかねるけど、とにかく
交換してみる事にしました。

ネット上の幾つかのパーツショップを捜したけど、『電気二重層コンデンサ』
を扱っている所は少なくて、あっても水平実装タイプのみだったりして一時は
入手を諦めかけました。

ようやく、大阪日本橋の『共立エレクトロニクス』がパナソニックの
“ゴールドキャパシタ”という商品名の電気二重層コンデンサを扱って
いるのを見つけて、現用品と同じ『 5.5V 1.0F 』の製品を注文しました。

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側の部品が着荷した“ゴールドキャパシタ”です。

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コンデンサを交換する前に現状をもう少し調べてみる事にしました。
電源オフの状態でのコンデンサの電圧は『 0.436V 』。

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電源をオンした直後は『 3.242V 』。

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電源オンで約30分経過した時の電圧は『 3.243V 』。
電源オン直後とほとんど同じです。

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電源をオフしました。
数秒後の電圧は『 1.3299V 』。
オフ前の電圧から『 約1.91V 』低下して、半分以下になりました。

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電源オフ後約30分の電圧は『 1.223V 』。
オフ前の電圧から『 2.02V 』下がりました。

以上の結果からコンデンサの故障と考えて間違いないと思われるので、
予定通り新しい物と交換する事にしました。

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シャーシからメイン基板を取り外しました。

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取り外したメイン基板です。
赤円内が電気二重層コンデンサです。

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電気二重層コンデンサにズームイン。

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メイン基板の裏面(ハンダ面)です。
電気二重層コンデンサは矢印の先にあります。

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ズームイン。
基板にハンダ付けされています。

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2本足のハンダを交互にハンダゴテで加熱して溶かしながら、
コンデンサを指で摘んで徐々に引き抜いて取り外しました。

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赤円内はコンデンサを取り外した後のパッドです。

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再び部品面側です。
緑円内がコンデンサを取り外した跡地です。

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取り付ける“ゴールドキャパシタ”です。
『 [M] GC 5.5V 1.0F 』と表示されています。

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反対側には『 JAPAN 』と表示されています。 安心な日本製です。

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そのまま端子間の電圧を測定してみたら『 53.96mV 』。
ほぼ『 0V 』です。

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“ゴールドキャパシタ”の2本足を基板上のスルーホールに
極性を間違えないように注意して挿入し、ハンダ付けしました。

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部品面側です。

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少しアングルを変えて撮影。
特に問題はなさそうです。

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基板上に小さなハンダ屑などが付いていたので、ホーザン製のハンダ付け
作業補助工具セットに入っていたステンレス製ワイヤーブラシで軽く掃いて
みたら、基板表面が傷だらけになってしまいました。

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「取り返しの付かない事を・・・」と反省しながら、藁にもすがる気持ちで
サンハヤトの『 電子機器の洗浄剤 Hi-SHOWER 』をスプレーしてみたら

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あら不思議?
こんなに綺麗になりました!

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メイン基板をシャーシに取り付けました。

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コンデンサの充放電動作の電圧を測定するために、テスターのリードを
コンデンサの端子に接続しました。

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電源オフの状態でのコンデンサの電圧は『 45.34mV 』。
ほぼ『 0V 』です。

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電源をオンしました。

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電源をオンした直後の電圧は『 3.158V 』。

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電源オンから約17分後の電圧は『 3.244V 』。

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電源オンから約18分後、電源をオフしました。

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電源オフ直後(約10秒後)の電圧は『 3.239V 』。
オフ前の電圧から『 5mV 』しか低下していません。

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電源オフから約22分後の電圧は『 3.166V 』。
オフ前の電圧から『 78mV 』低下しただけです。

交換前のコンデンサの場合は電源オフ後の数秒間で『 1.91V 』低下し、
約30分間で『 2.02V 』低下していたのが、ほとんど低下しないように
なりました。
やはりコンデンサが故障していたようです。

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テスターを外して、本体のカバーを取り付けました。

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ラックに戻して、タイマー録音が正常に動作する事を確認しました。

以上で修理は完了です。

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《参考リンク》
DENON Museum>Others>DMD-1550
DENON Museum (TOP)
エルナー(株)
共立エレショップ
パナソニック エレクトロニックデバイス(株)

-完-