アンプの出力DCを抑えるために使うDCサーボというものがあります。
これは簡単に書けば出力のDCを増幅してメインアンプの入力端子へ戻すことでDCを抑えます。この回路は時定数が大きいのでDCが収束するのに少し時間を要します。万能ではありません。
そのため出力のDCが急速に変化するとき、たとえば入力バイアス電流の大きなアンプでバイアス抵抗を突然変更した場合などは一度DCが出て徐々に収束していく動作をします。動作中にバイアス抵抗を意図的に変えることはあまりないと思いますが、ボリュームを取り付けたことにより変わってしまっているものは結構あるようです。
実際に使われる回路は大きくわけて3種類の形にわけられます。なお以下の説明内ではすべてメインアンプはオペアンプの非反転増幅回路とします。
1.非反転型DCサーボ
これはサーボの出力をメインアンプの反転入力に戻すよく見かける形です。戻す位置がよく使いやすいのですがフィルタ用のコンデンサが1回路あたり2個必要になるので部品点数が少し多くなります。
2.反転型DCサーボ
こちらは非反転入力に戻すもの。見かけることは少ないのですがコンデンサは1個で済む利点があります。
3.反転型DCサーボに反転アンプを組み合わせたもの
これは2.のサーボの出力を反転させてメインアンプの反転入力へと戻すものです。私はよくこの形にしますしメーカー製品でも見かけます。
この3種類は書籍に載っていることも多いのですが3.を見たことないという人が結構いるようです。たしかに3.はネットではあまり見かけませんものね。ネット頼りで本を読んでいないのはどうかと思いますが。
私はディスクリートアンプでドリフトが気になる場合や調整する部分を減らしたい場合にDCサーボを用いるようにしています。IC化されたオペアンプを使う場合はあまり必要性を感じないので用いることは少ないです。たとえばバイアス電流が大きいなら入力バッファを設計するか、強引ですがカップリングコンデンサでDC的に切り離してしまえば良いと思います。そういったことをしても対応しきれない場合には使います。
なおDCサーボは低域がカットされますので忠実な再生のためにはできるだけカットオフ周波数を低くしたいところです。
私は2decくらい値を変えて試したことがありますが、部品や他の値の兼ね合いや思想からだいたいいつも同じような設定することが多いです。
またこの回路はメインアンプの利得にも影響を与えます。影響を最小限に抑えるための定数選びもできますしはじめからその影響を考慮した設計をしてもいいと思います。
極端に大きな出力DCのアンプを強引に動かさねばならなかったときはセオリーから外れた値しか選べなかったため、DCサーボ込みでの利得を計算し狙った値に持っていきました。