夫への報告はその日の晩だった。
自分からは切り出す勇気がなく、相手が聞いてくるまでは何も言わないでおこうと思った。
実際に身ごもる女と、そうじゃない男はやっぱり危機感が違うと思った。
私なら検診の結果は気になってすぐに聞くはず。
夫は寝る前にベッドの中で、ついに今日診察日だったことを、ようやく思い出したようだった。
「そうや、あれ!今日どうやったん⁉︎」と聞かれ、少し間をあけて答えた。
「ちょっと…最悪なことになってしまった。」
「え!どーゆうこと⁉︎子宮外妊娠とか言ってたやつ⁉︎」
「違うけど…子宮内やったけど…2週間以内に手術しないとあかんみたい。」
病院での経過を説明した。
簡単な処置って言えば良かったかもしれないが、あえてそのまま手術という言葉で伝えた。自分がどれだけショックだったか分かってもらいたかったのか、ただ優しく言う余裕がなかったのか分からないけど。相手は子供の父親なのだからありのまま伝えていい、と思った。
夫は「そぅか…」と言い、突然自分も検査を受けると言った。
仕事休むから、もしかしたら自分にも原因があるかもしれないから、と。
主治医にはまだ精液検査のことは何も言われてないけど、したいなら言っとくねと答えた。
私にはやっぱり今の現実の方が重要で、これからの検査のことを考える心境にはなれなかった。
帰る途中、車を運転中も涙が流れてきた。流産した人はこんな気持ちなんだな、と感じた。初期でこんなに泣いてたら、後期で残念な事になってしまった人はどんなに辛いだろう…

今後どうなるのか、また妊娠できるのか、もしかしたらもう子供は持てないのか、色んな想いがありすぎて頭が痛くなってきた。泣きすぎて目の奥も痛かった。
今まで飲んでた葉酸サプリはどうしよう、続けて飲んだら育つかもしれない。
糖質制限なんてしたから栄養が足りなかったんじゃないか。
遺伝子に異常があったのかもしれない。
赤ちゃん用品を早まって買わなくて良かった。
妊娠雑誌は片付けよう、カフェインレスは一応続けよう、掻爬手術は休みをもらおうか、周りには何と言おう、仕事のストレスもあるのかな、夜勤はやめれば良かったかな……

色んな事を考えながらも上の空だった。


妊娠したかも、と思った時は真っ先に夫にラインで知らせた。
でも、今日の結果はラインを送れなかった。
仕事中なのにがっかりさせたくなかった。残念な結果は家に帰ってきてから、言葉を選んで伝えたかった。エコーの写真も、見せなくてもいいかもと思った。

クリニックを出てからはやっと人目がなくなって気にせず泣けた。車でホットラテを飲んでしばらく泣いていた。昨日まではカフェインを気にしていたのに、自販機で買った。とりあえず落ち着きたかった。
久しぶりに泣いた気がした。明日も休みだから目が腫れてもいいや、と思った。
自分が掻爬手術をしなくてはいけないなんて、思った事は全くなかった。
日帰りでできると先生は言っていた。それ以上の詳しい事は聞かなかった。

妊娠した事は自分の親と姉には言っていた。職場や義母には、まだ伝えてなかった。まだ初期だから何があるか分からないし、と思ったから。
今日の診察で胎嚢が見えるから、来週月曜日に職場の上司に報告しようと思っていた。
そして今回の結果になってしまった。