冬には他にも楽しみがあった。雪が一晩で2メートル以上
降ると、屋根から雪下ろしをしなければならない。
すぐ雪下ろしをしないと根雪となって屋根を傷めるたり、
家を破損したりという危険な状態になる。これが大変な重
労働で、男の子はときどき手伝わされる。
雪下ろしをしたものは、道路の脇を流れる川に捨てるか、
家の横に積んでおくが、これはたいてい子どもの手で滑り
台に変わる。片手乗りのスコップ滑りをやるが、どこまで遠
くまで滑り降りられるかを競う。
滑り台の表面は水で凍らせてツルツルに固めてあるので、
ルージュとまではいかなくても、子どもにとってかなり危険
な遊びだ。10メート以上一気に滑りおりるため、転ぶとケガ
をする。
この外に、雪国の子はスコップ一本で何でも作れるし、
それで遊ぶ方法を知っている。
たとえば「かまくら」なんかはその代表例で、雪で室(むろ)
作ってもらった中で、女の子たちはままごとをするのを楽
しみにしている。
たとえ雪であっても、女の子にとっては一軒の家の主人
になれるものだから、男の子たちは競って立派な「かまく
ら」を作ってやろうとする。
これがライバル同志だと喧嘩になるくらいヒートアップし
てしまう。
町の外れにあるお寺の境内では、毎年小学生と中学生
を対象にした「かまくらコンテスト」があり、優秀作品は表彰
されることになっている。
今年は伸介と健太のグループも参加していて、なんとか
相手をへこましてやろうと考えていた。
暮れの28日から3日間で完成しなければならならず、
かまくら作りはけっこう重労働だ。しかも相手に作品を知
られてはいけないので、うまくカモフラージュしながら作っ
ていく。
一番よくあるのは、事前に組み立てた部分を作っておき、
最終日にきちんと形にまとめ上げることだった。
その年は予選を通過した12チームが参加していた。
伸介グループも健太グループも本選に臨んでいた。
伸介はこの前のスケートの件もあったので、心中期する
ものがあった。
「いいか、今度のかまくらはぜったいに健太グループに
勝つがいちゃ」
と伸介は仲間の一人、徹に言った。
「そりゃもちろんそうだけど、作った部分はどうやって隠し
くがけ」
「馬鹿だなあ、おまえんとこの庭広いながけ(=広いだろ
う)?そこに置いて莚をかぶせておくがいちゃ。それから
前の晩に寺まで運ぶがいちゃ」
「どうやって運ぶがけ?」
「大丈夫、おれんとこのソリを出すから、それでみんなで
運べばいいがいちゃ」
「そうか、それで決まったちゃ」
みんな普通の丸屋根の「かまくら」を作っていたのだが、
伸介グループは円棟のかまくら燈台にして、みんなを
アッと言わせ、堂々の優勝を飾った。
これには健太グループもそうとう悔しがったようだ。燈台
かまくらは年末から正月の参拝客の話題をさらい、伸介
グループは鼻高々だった。
とにかく何でもいいから一つ勝つたびに、それで溜飲を
さげることが楽しみだったのである。
最近は暖冬のせいか、年末に雪の降ることが少なくなり、
そのコンテストもだいぶ前に中止になったらしい。
→「届いた手紙(11)」に続く
