私の好きな<ハチミツ入りのパン>を売っている店は 坂のふもとにある。
駐車場に車を入れる時 目に入った老人は まだ 坂が始まったばかりだというのに 息も絶え絶えという感じだった。
4点杖をやっと前に進めながら 一歩一歩。 危なっかしいったらありゃしない。
パンを買う間も その人が気になって仕方がない。
いったい どこまで登っていくのだろう。
住宅地が広がるのは坂を上り切った先で あの様子だと 前に進むより 後ろに倒れそうな感じだ。
店の前を通ったら お店の人に どこら辺の人なのか 知っているか聞いてみようと思ったが ほんの数メートル前に居たのに ついぞ現れない。
外に出てみたら 電柱にもたれて休憩していた。
手には 少し離れた場所の量販店の袋を持っている。
あそこから此処まで来るだけでも けっこう大変だったんじゃないかなと思う。
思い切って声を掛けた。 どこまで行くのか?と。 顎で上の方を示す。
車で送ろうか?と聞くと よく解らないが断る感じではない。
もし認知症なら 交番に行けば良いだけのコト。とりあえず この爺さんを乗せた。
私の車は車高があるので 助手席に乗せる時に支えたら オムツをしているのが判った。 しかし キチンとした感じはある。
道は解るかと聞くと 頷いて 、坂のてっぺんあたりで そこを曲がると言う。
私も知っている辺りだ。 少し行って もう一回曲がる。
そこを 突き当りへ・・・と爺さんは言った。
ビックリしたのなんのって。 大豪邸の前である。 本当か!??
玄関のドアの前には 高級なドイツ車が止まっている。
爺さんは苛立たし気にチャイムを何回も押して 家人を呼び 車が入れるようにゲートを開けろと指示する。
ゲートも家の中から開ける様になっているらしい。 なんたるセキュリティ。
私に お茶でも出すからと言う。 『いえいえ・・・結構です!』
急いで車をバックさせて帰って来たが・・・本当にあの家で間違いないらしい。
ワケが判らない風で玄関に立っていた奥様らしき人は きちんとしたセーターにスカートでロイヤルファミリーの様だった。
かつては 名も立場もある人だったのでしょうね。
(認知症かもなんて思ってゴメンね。~ (^^ゞ )