まわりを見渡すと、
お母さんが迎えに来てくれてた。

苦労しながら、スーツケースを車に載せ、
苦労しながら、助手席に座る。

長旅で、
患部はすっかり腫れてしまって、

円座(ドーナツ状のクッション)があっても、
痛い。

家に向かい始めた車に、
旅の終わりが見えて、ちょっとホッとする。

母「大丈夫なの?」
幸「んー、身体は元気なんだけどね。」

幸「患部は、腫れてて痛い。」

それだけ訊くと、
それ以上訊かない母。

痛いと言ってるけど、無事そうなので、
安心したみたい。


痛みで、乗っているのが辛いので、
ここにはいないアイツの話をしてみる。

幸「コタさん(猫♂)、どうしてた?」
母「寂しいからか、触り放題だったよ。」

クスッと思い出し笑いをしつつ、
お母さんが答えてくれた。

普段は、私以外には、
馴れ馴れしくさせないコタさん。

寂しさに負けて、
家族に甘えてるコタさんに、
ちょっと不満を感じつつ。

「あのプライドの高いコタさんも、
 寂しかったんだろうな」
と、ちょっとかわいそうになる。

3週間は、やっぱり長い。

"猫は3日で恩を忘れる"
なんてことわざ(?)もあるし。

3週間も放って置いた私を、
コタさんは許してくれるかなぁ?


コタさんに思いを馳せているうちに、
家について。

痛みをこらえて、から降り、
痛みをこらえて、スーツケースを下ろし。

ゆっくり玄関のドアを開ける。

車の音で、帰ってきたのが分かれば、
コタさんも様子を見に来てくれるかもしれない。

そう思っていたけど、
姿はない

「やっぱり、3週間は長かったかなぁ?」
と、少し寂しく思っていると。

ヌルッと、黒い影が現れた。

コタ「ニャーオ」
幸「ニャーオ」

甘えや、寂しさや、放って置かれた不満や、
会えた嬉しさ

いろんな思いが詰まった「おかえり」の「ニャーオ」。

それに猫語で応えつつ、
優しくなでてやる。

2、3日、家を空けるくらいなら、
ツンデレのコタさんは、
そこで距離を取り、すねてみせる。

「寂しかったんだぞ!」
不満げに、私から離れて、
でも、甘えたようにこっちを見る。

でも、今日は、そんな余裕もないみたいで。

ゴロゴロとのどを鳴らしつつ、
身体を寄せて、甘えてくる。

それにゴロゴロと鳴きマネ(?)してやり、
応える。

久しぶりに触る、フサフサの毛並み。

入院中に、何度も思い出した手触り

「あぁ、やっと帰ってきたんだなぁ」
と思っていると。


お父さんの登場。

父「おかえり。」
幸「ただいま。」

息子になって帰ってきて、
気恥ずかしいのか。

仲が悪いワケじゃないけど、
相変わらずそっけない

言うべき言葉が見付からないお父さんは、
コタさんの話題で、場をつなぐ

父「コタさん、30分前くらいから、
 ニャーニャーさわいでたぞ!」

幸「えぇ!?」

その時間は、
私がようやく地元に帰ってきた時間。

もしかして、なにか感じてた?

コタさんの瞳を見つめても、
ホントのことは分からない。

でも。

まぁ、そういうことにしとくかな!

嬉しくなった私は、
相変わらずすり寄ってくるコタさんを、
もうひと撫でしてやると、

玄関を上がり、キッチンへ。

身体がカラカラだから、まずは水分補給

ダイレーションしなきゃだけど、
とりあえず休まないと。

寝そべって、コタさんを撫でてやり、
ひと息ついて。

ようやく、すべて日常へ戻れた感覚。


でも、患部の痛みは相変わらず。

ここがホントの意味で大丈夫になったら。

ようやく大きな山を、
越えたことになるんだろうなぁ。

まっ、でも、時間かかるから、
気軽に行かないとね!

寝る時間がどんどん遅くなるから、
身体を起こして、ダイレーションの準備を始める。

日常非日常をつなぎ合わせる作業は、
これからも続く。

非日常が日常になる日が、とても楽しみ。