最近、ハイレゾと呼ばれる音源ファイルをダウンロードして音楽を楽しんでいる。聴いてみると、CDと比べて空間的な表現が優れているように感じる。音の広がりや細部のニュアンスがより豊かに再現されているようだ。え、本当にわかるのかって?そういうツッコミは無効です。
ふと見渡すと「ハイレゾ対応プレーヤー」というものが売り出されている。高音質を携帯して聴きたいというニーズがあるのだろう。とはいえ、少し懐疑的でもある。
携帯用のファイルといえば、やはり mp3 が主流だ。そこでふと疑問が湧いた。
mp3 にハイレゾという概念はあるのか?
ソースがハイレゾならば mp3 もハイレゾと呼べるのか?この点を調べてみた。
まずハイレゾをして認知されているものは何か。
<ハードウェアとして必要なもの>
ハイレゾ対応プレーヤーを名乗るには、以下のような条件が必要になる。
- DAC(デジタル・アナログ変換器):96kHz/24bit以上の処理能力を持つこと
- アンプ回路:高精度の信号を歪みなく増幅できること
- イヤフォン/ヘッドホン:周波数帯域の広い再生能力を持ち、ハイレゾの情報量を表現できること
<認証と定義>
日本オーディオ協会(JEITA)の定義では「CD(44.1kHz/16bit)を超える情報量を持つ音源」を広義にハイレゾと呼ぶ。ただし、認証マークを付けるには 「96kHz/24bit以上」 が条件とされる。
参考: ヤマハ公式FAQ
つまり、mp3 は定義上ハイレゾから除外される。
<再生できるファイル形式>
携帯プレーヤーが再生できるファイルには以下がある。
- WAV / FLAC / ALAC / AIFF → ハイレゾ音源になり得る(仕様次第)
- DSD(SA-CD由来) → 技術的にはハイレゾ相当だが、認証制度では扱いが異なる。
- MP3 / AAC / WMA → 非可逆圧縮であり、ハイレゾ音源ではない。
この中で「ハイレゾ」と呼びうるのは WAV / FLAC / ALAC / AIFF、そして場合によっては DSD のみである。
<mp3 がハイレゾといえない理由>
- 非可逆圧縮:聴感上不要とされる成分を削るため、元の情報量を保持しない
- ビットレート制約:128kbpsや320kbpsといった固定ビットレートで情報量が制限される
- サンプリング周波数やビット深度:変換前の値は継承されず、内部的に再構成される
- 結論:どんなに高品質なソースから変換しても、mp3 はハイレゾ音源にはなり得ない。
大事なことだからもう一度書きます。
mp3 はハイレゾではない!!!
<現実的な課題>
ファイルサイズ: 下表に示したようになる。可逆圧縮(FLAC)なら内容次第でさらに小さくなるが、携帯用途ではストレージ圧迫は避けがたい。
音源フォーマット別ファイルサイズ目安(ステレオ・リニアPCM)
- バッテリー消費:大容量ファイルの読み込み・デコードは電力負担が大きい
- ストリーミング再生:ハイレゾストリーミングは 4.6Mbps 程度必要。5Gなら余裕だが、移動中や地下では途切れる可能性がある
ストリーミング環境別比較
結論
正直、買っても mp3 ファイルを再生する程度なら、あまりメリットを感じられないかもしれない。
もちろん「有用ではない」と言い切るつもりはないが、検討する際にはファイルサイズ・バッテリー・通信環境といった現実的な要素を考慮することが大切だ。
願わくば、「ハイレゾ対応」という言葉が、40数年前に流行った「デジタル対応」という意味不明な宣伝文句と同じように、ファンをヒキツケ、思考停止させる魔法の言葉とならないで欲しい。

