LTspice:「今度はレベルアップが早かったな」
画蔵:「中ボスが手強いので早く上げておく必要がある」
scilab:「何かが逆のような気がしますけど」
前回、デジタル信号処理の中でスペクトラム分析をしようとすると周波数領域でも離散的になるということを説明しました。今までの例で云うと、1 秒間データを取得すると結果は 1Hz 単位でしか見ることが出来ないということです。ですが端数の周波数は普通にあるはずなので、それらが入ってくるとどうなるかやってみたらあるはずのない周波数まで見えてしまうという結果になりました。
M くん:「やっぱり、、、」
と突っ込まれてしまいましたが、実はアナログ式のスペクトラム分析だと別の問題が隠れています。その一つが一番最初に出てきたバンドパスフィルタの特性です。そもそも 1Hz 刻みでフィルタの特性を作れるのか、という問題です。というよりはバンドパスフィルタの特性を鑑みた精度でしか周波数分解能はないということです。
scilab:「どや!」
さらにいうと、アナログ式は当該周波数のレベルを見ようとすると他の周波数は同時に見ることは出来ません。極端な話、1Hz を見ようとすると最低でも 1 秒間はバンドパスフィルタの中心周波数を固定しておいて信号を見ていなくてはいけません。で、次は 2 Hz を見ようとすると 500 ms、3 Hz は 333ms という風になって結構時間が掛かってしまいます。中途半端な周波数も含んでみようとするともう大変です。さらに周波数を振っている間に肝心の波形がなくなってしまうかも知れません。それと比較するととりあえず 1 秒間取り込んでおいてお茶を一杯飲んでから、FFT を掛けると(前回に出てきたスクリプトでも大丈夫です。時間は掛かりますが)1 Hz から(サンプリング周波数 / 2)まで、1 Hz 刻みで見ることが出来ます。
ということで、デバイスや測定時間などの現実性を無視すればアナログスペアナの方が解像度も余計な信号処理もいらないはずなのですが、実は制限はかなり多そうです。またデジタル方式はデータを取り込むのに高性能の ADC がいるとかデータを取っておくメモリがいるとか、分析するための高性能のプロセッサがいるとかが現実的な問題になります。その辺りの棲み分けを見ておく必要があります。
大ざっぱなトレンドとしては、GHz を越えるとアナログ式、それ以下だとデジタル式という感じでしょうか。周波数変換などを使うと非常に高い周波数でも一旦低い周波数に落として(周波数の引き算で)、ADC で取り込んでから高い解像度で分析することが可能なので、デジタル式の方が主流ではないかと思います。
Excel:「で、中途半端な周波数は?」
画蔵:「まあ、マテ。その前にクリアしなくてはいけない中ボスがいる」