前回は簡単な測定でも SPDIF 信号のジッター値に差が検出されたコアキシャルケーブルと光ケーブルについて、モノトーン信号の歪み率に差が出るかどうか調べてみた。結果は差があるとはいえないという程度だった、ということだが、実際のオーディオ信号はモノトーンではなく、たくさんの周波数成分を含んでいるので、数値的な測定は難しい。そこで及ばずながら二つの近接した周波数を作って、それらが干渉して原音にはない周波数が現れないかどうかを調べてみることにした。いわゆる混変調歪みというやつである。
私の個人的な感覚では、高調波歪みよりもこちらの方が音質に影響を与えるのではないかと思っていて(良い影響もあるのでは、とか)、原音にない周波数が現れることで、耳障りな音になったり、低音が膨らんだ感じになったりすることがありそうな気がしている。
例えば、ピアノやギターのようなピッチとアタックがある信号の場合、特定の音程が音量に変化を持ちながら鳴っているわけだが、あくまでも周波数成分としては、特定の音程しかない。ところが伝達系が非線形だとアタックのエンベロープの周波数が聴こえてきたりしそうな気がするのである。ただし通常の楽器のエンベロープは非常に低い周波数なので音程としては感じられず、オーディオシステムによってはアタックの質感に差が出るのではないかと思ったわけだ。

前置きが長くなったが、まずは二つの周波数を含んだ波形を作って表示させたのがこれ。近接といっても 500Hz の差を持たせ、もしこの周波数が現れれば可聴帯域なので何か聞こえてくることを期待した。10KHz と 10.5KHz の組み合わせと、15KHz と 15.5KHz の組み合わせの 2種類を試してみた。昔高校の物理ので習ったとおり、波形的には周波数差であるビートが現れている。振幅変調信号に似ている(本質的には全然違うので間違えないで下さい。振幅変調に関してはこちら
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これらの wave ファイルを CD-R に焼いて、コアキシャルと光ケーブルのそれぞれで再生させた結果が以下のようである。

コアキシャル
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光ケーブル

 

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う~ん、残念なことにこのレベルのジッターではビートの周波数がスペクトラムに現れることはなかった。コアキシャルケーブルと光ケーブルでジッターに差があると云っても絶対値が小さすぎるので、差になることはないのだろう。

もちろん使った機器が SC-D70 なので、機器が違えば差が発生する可能性はゼロではない。ただそれは直感的には「弱すぎるだろう~」と思う。

ということで単なる「ジッターの多い少ない」->「音質の違い」を語るのであれば、このやり方では不十分のようだ。ADC によってはジッター対応力が設定できるものもあるとのことだから、そういう機器を持っている方が同様の実験をしてくれるとありがたい。
私の方が別の工夫をしてみようと思う。

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