リッピングを話題にしていたら、天空で竜虎が舞い、相搏つが如くコメント欄が賑わっている。双方攻撃力、守備力共に強力なので決着が付かないようである。それではと八岐大蛇でも召喚しようかと思ったが、伝説に従うと今度はそれを自分が退治しなくてはいけなくなるようなので放っておくことにした。

リッピングで話題になった倍速の話だが、前回までの記事では「データエラーが気になるなら倍速を落としましょう」としたが、その技術的背景を簡単に紹介したい。

ただし自分は CD プレーヤ、CD-ROM ドライブの技術者ではなく、MO や DVD などを手がけてきて中で CD 再生に関して技術的に知っている内容の範囲ということと、10年以上前に使われていた技術知識での話ということでご理解願いたい。

データエラーが起きる要因として、以下の点を挙げてみた。

・ディスク再生信号に重畳される電気的ノイズ
・ディスク上の欠陥、指紋、傷
・ディスクの歪み、面ブレ、偏芯
・エラー訂正能力=回路設計上の制約

それぞれに付いて倍速が変わると有利不利があり、簡単かつ独断と偏見かつ強引にまとめると以下の表のようになる。
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お前本当に技術屋かよ、といわれそうな表現が並んでいるが、こればっかりは今の製品がどうなっているか分からないので明確に書きづらい。
言い訳がてらにどういうことなのか簡単に説明しておく。

信号 S / N
単純に高速再生の方が S / N は悪くなる。確か速度のルートに反比例する。そういうものだと思っていただきたい。これはそのまま再生信号ジッター(オーディオ信号ジッターではない)につながり、確率的にエラー発生につながる。ただし、この理由だけで訂正出来ないデータエラーにはならない。


欠陥対応力 / ディスク歪み対応力
一言で言うとサーボ的問題であり、これが起きると、それによる信号劣化に前述のジッターが加わって大きなエラーになることがある。
ところがサーボ設計上、あちらを立てればあちらが立たずというのがあり、単純に倍速が低いと有利、高いと不利というものではない。ちょっと長い話になるので次回以降にしたい。今の私の見解は中倍速 2000rpm から 3000rpm で動作させている辺りが一番安定のように思う。
設計次第である。

エラー訂正能力(倍速に応じてリアルタイムで訂正出来るという観点)
原理的には 1mm 以上の欠陥がない限り C2 エラーなど出ない。初期の頃ならともかくプロセッサの進歩により C2 四重訂正がリアルタイムで出来ないことはない。もちろんそれ以上エラーが増えたらダメである。とはいえ原理的に訂正出来るエラー発生範囲でも倍速優先でデータ転送されると補間に走るドライブがあるというのは私の経験通りだと思う。


概ねこういった傾向を持つ、ということを知っていただければ、お手元で起きている現象を推測する一助にはなるかもしれない。

ちなみに最近の CD プレーヤのほとんども CD-ROM ドライブも回転数は一定である。もともと CD フォーマットは CLV といって、線速が一定になるように規定されていて内周では約 500rpm、外周では約 200rpm で回転している。現在は訂正能力の向上、サーボ設計上の優位性などを考慮して回転数を上げてデータ読み取るようにして、ストリーミングの場合はディスク上からは手早く読み取った後、データを規定のレートで DAC 経由で再生し、その間読み取り回路は休んでバッファ上のデータの残りが少なくなってきたら、また読みに行くといった処理を行っている。どのくらいの回転数で回しているかは CD プレーヤならば経済性とデータ信頼性を鑑みて決めているだろうから、まあその会社の技術の一番いいところで選んでいるだろうと想像付く。
CD-ROM ドライブに関しては「倍速命!」とされると、場合に因っては思わぬトラブルがありそうである。

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