前回、CD オーディオ再生とリッピングの違いについて軽い気持ちで「愚痴」を書いたところ、ツッコミや質問、説明になっていない、という結構な書き込みがあった。興味のある人は多いんだな、と改めて思った次第である。
ならばもう少し精度の良い情報、意見、考察を書かねばと友人などに尋ねたり、評価ツールを確認したり、サイトでの情報を多少なりとも集めてみたので、それらを整理しながら考察を試みようと思う。そうはいっても記憶は薄れているし、専門ではないし、曖昧なこと、勘違いは多々あると思うのでやさしく指摘してくれると有り難い。
なお、CD 再生に関する都市伝説は山ほどあるらしく(自分は全然知らなかった)、これについてもいずれ考察してみるつもりでいるので、あまりここでは突っ込まないでいただきたい。
では最初に一言。
デジタルコンテンツの関係者はもっと真摯にデータを取り扱わんかい!
みなさんのコメントみて思ったのは、マジでこう云いたくなるような都市伝説や奇妙なデファクト仕様などが跋扈していて、この原因を作っているのがクリエータ、技術者にあるまじき行為のようで、多くのマニアが混乱しているとしか思えないのだ。
と、フラストレーションの吐き出しはこのくらいにして、まずは CD データの読み出しについて確認をしたい。
用語から
LBA:Logical Block Address 論理ブロックアドレス
HDD を始めとしたコンピュータ周辺機器のデータ記憶装置で必ず使われる。データの場所を特定するのに使われる。
MSF:Minute / Second / Frame
CD の物理層で使われるアドレス。楽曲の位置は MSF で表示されており、曲の頭出しする際はこのアドレスを頼りにアクセスされる。
では物議を醸したデータ読み出し方法についてだが、ツールを調べていたら私が扱ったことのない CD 用のコマンドがあったのでそれらも載せることにする。
Read:
前回 Data Read と書いてしまったもの。通常のデータを読み取るときに使われるコマンドで、アドレス指定は LBA である。もともと HDD や MO などからデータを読み取るためのコマンドだが、これを CD-DA のオーディオデータも読み取る(再生ではない)ように CD-ROM ドライブは内部で LBA → MSF 変換テーブルを持つ。読み取りエラーが出たらひたすらリトライしそれでもダメならエラーを返して終了。
再生速度は指定がない限り Default(つまり最高速)で再生を行う。
Read CD:
前回は存在を知らなかったので紹介しなかった。基本的に Read コマンドと同じような動作をするが、オプションとして Error Flag を返すが追加されている。詳しい仕様は分からないが、Error Flag が有るところをみると読み取りエラーが出ると Flag を出して、再生を続行しそう。
Play Audio:
前回紹介したもの。LBA 指定でアクセスを行う。基本的にストリーミング再生なので I / F 上の速度は 1 倍速(なはず)。読み取りエラーが出たら「補間」して続行する、と聞いた。
Play Audio MSF:
MSF で再生箇所を指定出来る Play Audio コマンド。おそらくストリーミング再生、エラー時「補間」だと思う。
Play CD:
前回は存在を知らなかった。CD-DA に対して MSF でも LBA でも指定出来る。Speed というオプションがあって 2 段階に切り替えられるらしい。他に Composite と Audio という名の奇妙なオプションがある。想像するにハーフハイトの CD-ROM ドライブに付いているオーディオアウトを有効にする / しない、辺りを切り替えているのではないか。あくまでも想像である。
残念ながら I / F 仕様書が手元にないため(なぜある?)これ以上の情報は得られないが、少なくとも以下のことは高確率で想像つく。
・CD-ROM ドライブでオーディオ再生する場合は Play Audio または Play CD を使っている。
→ Play Audio 系ならば高速リッピングができない。
みなさんはどう思われるだろうか。これでお手元で発生している現象を説明出来るだろうか。
そして、コメントにあった「リッパーで音が変わるのはなぜだと思います?」という問いかけに対して、
「そんなの知るかよ~。どうせディスクとドライブがボロなんだろ!」
と蹴散らしたい気持ちを理解していただけるだろうか。
どうもデジタルオーディオを疑心暗鬼ながら楽しんでいる(弄んでいる?)人は 1980年代の CD が出たての頃の印象から脱け切れていないような気がする。さらに CD-R に関しても 1990年代後半の出たてのころの話が頭の中から脱け切れていないようだ。
CD 再生技術はその要素技術の向上と共にどんどん進歩しているのだ。だからといって 1980年代の技術がボロなどというダメ出しする気持ちはない。それはエジソンに向かって「白熱電球なんか発明したのかよ~。今は LED の時代だぜ。ダッセー」などといっているようなものだ。
で、使う側も進歩しているということを理解して、その上で現状のツールや機器を評価しなくてはいけないと思う。
で、リッパーによって音が変わるとしたら、それはドライブの性能が悪いかディスクが悪いかのいずれかまたは両方が要因だ思う。その理由は、1990年代後半(CD-ROM が PC に標準搭載された時期)辺りからドライブの性能は飛躍的に向上し、倍速競争も相まってディスクがよほど悪くなければエラー訂正出来ずにデータを転送することはあり得ないぐらいになっている。それは CD-ROM がファイルデータを記録したものなのでデータの読み誤りが許されず、ドライブメーカも再生技術に磨きを掛けたため結果として CD-DA の再生能力も向上した、ということもある。
よってリッパーで音が変わる = 補間が行われている(Read CD でリッピングしている)ということを指すので、エラーだらけの状態でリッピングしているのと同じことだ。
そもそも音が変わるという印象はどういうことなのか。全体的に音が変わった、というならディスク全面に渡って適当にエラーが発生していることになるし、それこそドライブがボロとしか云いようがない。瞬間的に「なんか違うぞ?」というのが数回ぐらいならあり得るが、これは「音が変わる」と云うだろうか。
ということはもう一つの可能性、「リッパーが音を操作している」である。もしそうなら「アプリを作ったやつ出てこい!」である。デジタルデータをなんと心得るのか。教育し直す必要がある。
とまあ少しヒートアップした論調になってしまったがいわんとしていることが伝わるだろうか。
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ならばもう少し精度の良い情報、意見、考察を書かねばと友人などに尋ねたり、評価ツールを確認したり、サイトでの情報を多少なりとも集めてみたので、それらを整理しながら考察を試みようと思う。そうはいっても記憶は薄れているし、専門ではないし、曖昧なこと、勘違いは多々あると思うのでやさしく指摘してくれると有り難い。
なお、CD 再生に関する都市伝説は山ほどあるらしく(自分は全然知らなかった)、これについてもいずれ考察してみるつもりでいるので、あまりここでは突っ込まないでいただきたい。
では最初に一言。
デジタルコンテンツの関係者はもっと真摯にデータを取り扱わんかい!
みなさんのコメントみて思ったのは、マジでこう云いたくなるような都市伝説や奇妙なデファクト仕様などが跋扈していて、この原因を作っているのがクリエータ、技術者にあるまじき行為のようで、多くのマニアが混乱しているとしか思えないのだ。
と、フラストレーションの吐き出しはこのくらいにして、まずは CD データの読み出しについて確認をしたい。
用語から
LBA:Logical Block Address 論理ブロックアドレス
HDD を始めとしたコンピュータ周辺機器のデータ記憶装置で必ず使われる。データの場所を特定するのに使われる。
MSF:Minute / Second / Frame
CD の物理層で使われるアドレス。楽曲の位置は MSF で表示されており、曲の頭出しする際はこのアドレスを頼りにアクセスされる。
では物議を醸したデータ読み出し方法についてだが、ツールを調べていたら私が扱ったことのない CD 用のコマンドがあったのでそれらも載せることにする。
Read:
前回 Data Read と書いてしまったもの。通常のデータを読み取るときに使われるコマンドで、アドレス指定は LBA である。もともと HDD や MO などからデータを読み取るためのコマンドだが、これを CD-DA のオーディオデータも読み取る(再生ではない)ように CD-ROM ドライブは内部で LBA → MSF 変換テーブルを持つ。読み取りエラーが出たらひたすらリトライしそれでもダメならエラーを返して終了。
再生速度は指定がない限り Default(つまり最高速)で再生を行う。
Read CD:
前回は存在を知らなかったので紹介しなかった。基本的に Read コマンドと同じような動作をするが、オプションとして Error Flag を返すが追加されている。詳しい仕様は分からないが、Error Flag が有るところをみると読み取りエラーが出ると Flag を出して、再生を続行しそう。
Play Audio:
前回紹介したもの。LBA 指定でアクセスを行う。基本的にストリーミング再生なので I / F 上の速度は 1 倍速(なはず)。読み取りエラーが出たら「補間」して続行する、と聞いた。
Play Audio MSF:
MSF で再生箇所を指定出来る Play Audio コマンド。おそらくストリーミング再生、エラー時「補間」だと思う。
Play CD:
前回は存在を知らなかった。CD-DA に対して MSF でも LBA でも指定出来る。Speed というオプションがあって 2 段階に切り替えられるらしい。他に Composite と Audio という名の奇妙なオプションがある。想像するにハーフハイトの CD-ROM ドライブに付いているオーディオアウトを有効にする / しない、辺りを切り替えているのではないか。あくまでも想像である。
残念ながら I / F 仕様書が手元にないため(なぜある?)これ以上の情報は得られないが、少なくとも以下のことは高確率で想像つく。
・CD-ROM ドライブでオーディオ再生する場合は Play Audio または Play CD を使っている。
→ Read または Read CD でも良いが、ディスクが高速回転しかねないのと、読み取りエラーが
起きたとき面倒なことになる。
・リッピングは Read または Read CD を使っている。→ Play Audio 系ならば高速リッピングができない。
みなさんはどう思われるだろうか。これでお手元で発生している現象を説明出来るだろうか。
そして、コメントにあった「リッパーで音が変わるのはなぜだと思います?」という問いかけに対して、
「そんなの知るかよ~。どうせディスクとドライブがボロなんだろ!」
と蹴散らしたい気持ちを理解していただけるだろうか。
どうもデジタルオーディオを疑心暗鬼ながら楽しんでいる(弄んでいる?)人は 1980年代の CD が出たての頃の印象から脱け切れていないような気がする。さらに CD-R に関しても 1990年代後半の出たてのころの話が頭の中から脱け切れていないようだ。
CD 再生技術はその要素技術の向上と共にどんどん進歩しているのだ。だからといって 1980年代の技術がボロなどというダメ出しする気持ちはない。それはエジソンに向かって「白熱電球なんか発明したのかよ~。今は LED の時代だぜ。ダッセー」などといっているようなものだ。
で、使う側も進歩しているということを理解して、その上で現状のツールや機器を評価しなくてはいけないと思う。
で、リッパーによって音が変わるとしたら、それはドライブの性能が悪いかディスクが悪いかのいずれかまたは両方が要因だ思う。その理由は、1990年代後半(CD-ROM が PC に標準搭載された時期)辺りからドライブの性能は飛躍的に向上し、倍速競争も相まってディスクがよほど悪くなければエラー訂正出来ずにデータを転送することはあり得ないぐらいになっている。それは CD-ROM がファイルデータを記録したものなのでデータの読み誤りが許されず、ドライブメーカも再生技術に磨きを掛けたため結果として CD-DA の再生能力も向上した、ということもある。
よってリッパーで音が変わる = 補間が行われている(Read CD でリッピングしている)ということを指すので、エラーだらけの状態でリッピングしているのと同じことだ。
そもそも音が変わるという印象はどういうことなのか。全体的に音が変わった、というならディスク全面に渡って適当にエラーが発生していることになるし、それこそドライブがボロとしか云いようがない。瞬間的に「なんか違うぞ?」というのが数回ぐらいならあり得るが、これは「音が変わる」と云うだろうか。
ということはもう一つの可能性、「リッパーが音を操作している」である。もしそうなら「アプリを作ったやつ出てこい!」である。デジタルデータをなんと心得るのか。教育し直す必要がある。
とまあ少しヒートアップした論調になってしまったがいわんとしていることが伝わるだろうか。
異論は無制限に認めます。

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