デジタルオーディオケーブルの質によって音に違いがでるか、経験と議論が百出しているテーマである。
で、私の言い分はいつものように「あっても不思議でない」だ。
これに関する考察として、前回少なくともこういうことは起こりうる、さすがにこれはない、それは実は機器の問題である、などと戯けてみたがどう思われただろうか。

さて S/PDIF によるデータ転送に限ってみると、データ転送フォーマットから想像されるのは、
・44.1KHz / 16bit と 44.1KHz / 24bit で性能が変わることはない。
  → 24bit になったからといってデータ数が増えるわけではない。16bit で "00" に
    なっていたところにデータが入るだけである。

・88.2KHz / 24bit または 96KHz / 24bit でもし音切れなしに音楽が再生されていれば、
 少なくとも、44.1KHz または 48KHz では安定に動作している。
  → 周波数が高くなると伝送系の性能の影響が大きくなる。よって高い周波数で安定に
    動作しているケーブルなら低い周波数ではエラーはないし、ジッターも少なく音質に
    影響を与えている可能性は低い。


なのでお手持ちのケーブルの質が心配なら、高いサンプリング周波数で動かしてみれば良い
それで音切れなく再生出来ているなら、ケーブル、機器の両方に関して CD 系相当の再生なら音の劣化はないと見て良い。
ただしごく低確率で裏切られる可能性もあるので、念のため。

今回は、測定ツールが Analog Disvovery しかないので、測定精度はイマイチ~イマサンだが、コアキシャルデジタル伝送信号にいくつかのケーブルをつないで波形を観測してみた。別のブログに突っ込んだターミネーション = インピーダンスマッチングも試してみた。

まずは、こちらをちょっと見ていただきたい。

オーディオケーブルの特性(容量)を測定してみた

ここではアナログオーディオ信号接続用のケーブルのケーブル容量比較を行っている。これらのうちのいくつかにデジタルオーディオを流しても見ることにした。

測定条件
 出力機器:Roland Quad Capture
 デジタル出力:96KHz / 24bit

これは前回のケーブル A である。どうみてもしょぼいというやつだ。
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左がターミネーションなし、右はありだ。ターミネーションは 75Ωにしてある。本来ならケーブルのインピーダンスに合わせるべきなのだが、そんなデータはないので、単純に仕様である 75Ωでやってある。以下同様。
波形で上は単発、下はいくつかの波形が重なって表示されている。デジタルオシロならたいてい付いている Persistence という機能である。
Analog Disvocery最大 100MHz = 10ns サンプルなので、ナイキスト周波数は 50MHz。ちょっと 6MHz 前後のパルスを見るには実力不足である。
下側の波形をどうみるかというと、時刻 0 でたとえば、上図相当の波形が観測されたとすると、次のトリガーでは形が変わった波形列がやってくる。これが繰り返されると、あるタイミングからみて特定の時間後にくる立ち上がりまたは立ち上がりの時間ズレが分かるというわけだ。右端の 900ns というメモリの辺りを見てみると、立ち上がり、立ち下がり共に複数の線に分離していることが分かる。これらは信号の時間ズレという形を表現していることになる。これが太いあるいは何重にも見えるとジッターが多い、ということになる。

右の波形をみると、波形の振幅は下がっているものの(送信側の出力インピーダンスとターミネータで 1 / 2 のアッテネータを構成している)左図のような輝線のブレはほとんど見えない。オシロの性能の都合上波形はなまっているが、実際はもっと立ち上がりがしっかりしていることが期待される。

以下、ケーブル C ではこんな感じだ。
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ターミネーションのないときはケーブル A よりは輝線のブレは少ない。ケーブル容量がもっとも小さかったものだ。A の 1 / 4 程度である。
ターミネーションを付けると同様にきれいになる。A よりはなまり度合いがましか、という程度だろうか。

ケーブル G はこれ。1.5 m あるが、ケーブル容量が小さいのでなまり度合いも多少はいいか、という程度。
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前回登場しなかったが 3m のものが合ったので見てみた。
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さすがに容量が大きく(トータル 1000pF)パルスが三角波になっている。が、ターミネーションすると一応見られるようになる。

真打ちのデジタルケーブル。オーディオテクニカ製で 2m あり、容量も 166pF あった。
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ターミネーションなしを C、G などと比較すると、パルス幅の広いところでの波形が異なる。で、むしろジッターは多そうだ。ケーブルの特性インピーダンスは 75Ωになっているはずなので、送信側では反射は起きないと期待される。詳しくは見てみないと分からないが。
ターミネーションをすると良好である。もちろんアナログ用のもそれなりにきれいだったのでそれらに劣ることはない、という程度である。

さて、いかがだろうか。なんだ、波形だけならでどれでもたいした差はないじゃん、少し良さげなもので短ければ良いわけね、と思われると思う。事実これがこの通りみなさんの機器でも再現されれば、まあそうだろう。少なくともターミネーションは必ずやってあるはずなので、しょぼいケーブルでもデータ転送エラーになることはまずないだろう。

繰り返すが測定器の都合上波形は全体的になまっている。どこからか研究費でももらえれば、高性能なデジタルオシロとタイムインターバルアナライザをレンタルしてもっと精度良い調査をしたいところだが、そんな酔狂な人、企業がいるわけもなくこの程度が限界である

これらの波形を受信する際にケーブルに外から乗り込んでくるノイズが加わり、受信機器でデータ整形~クロック抽出すると、血を血で洗う乱闘が始まるのである。これについての考察は次の機会にする。

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