オーディオ談義の延長でインピーダンスマッチングについて考えてみようと思ったが、あらぬ方向へと陥りつつある。
まず頭の中にあるストーリを整理しておきたい。でないと自分でも何を書いているのか分からなくなりそうである。

・オーディオ関連でインピーダンスマッチングの必要性はどんな感じか?
・そもそも電気エネルギーの伝達とは何か?
  → 電磁場の変化によってもたらされる。
    ちなみに直流がケーブル上に印加されて電流が流れていない場合は、電界のみが
    存在する。
・電磁場の変化の伝達は異種媒体同士の境界を通過する時反射などが起きることがあり、
 結果として波形が歪む。
・似たような現象は光の伝達で起きており、大気中からガラス、ガラスから大気中に光が
 通過する際、反射が起きている。


というところまで来た。ここから電気回路で起きているインピーダンスマッチングまで話を引っ張らなくてはいけないが、光から電気回路までいきなり行くと、話の進め方のアンマッチが起きてそれこそ思考が反射して進まなくなるので、ミリ波レーダの話をワンクッションとして入れて見る。

電磁波としてみた場合のミリ波レーダと光の違いは波長である。ミリ波レーダは文字通り mm オーダで自動車関連で使われているのは 23GHz 程度で 13mm のものか 76GHz 程度で 4mm 程度のものである。光は長めの赤い光で 0.8um 以下である。これらはどういう違いとして見えてくるかというと、波長にフィットするように何かの部品のサイズを決めようとしたときに顕在化する。早い話が光だと波長が短すぎて通常の加工技術では、たとえばピッタリ 3 波長の厚みや長さのものを作ろうとしても管理しきれないだろう。ちょっと狂っただけで波長に対して大幅な狂いを生じる。それに対してミリ波レーダだと 1 波長分の厚みとか長さが現実的な管理対象になる。

その一つの例がミリ波レーダを用いた自動運転や衝突回避を行う自動車関連技術である。車種にもよるがレーダは車体前方などにカバーに隠れて設置されている。このカバーは樹脂系の材質が使われており、ミリ波レーダから発射された電磁波はこのカバーを透過して、調べるべき範囲に到達する。だが、如何に樹脂材といえどもその素材と作り方によってはミリ波を反射することがある。その反射率に大きく関係するのが、ミリ波の周波数と樹脂材の誘電率、厚みである。それらが上手く調整出来ると 100% に近い透過率を得ることが出来る。カバーの厚みは数ミリ程度で、ミリ波の波長も名の通りミリメートルオーダなので誘電率による波長の短縮を考慮してもだいたいオーダーがあって、樹脂材が一種の共振器作用を持って通過率が改善するというカラクリだ。
なぜそんなことになるかというと、実際には樹脂材の表面で反射は起きているには起きているのだが、内部に透過した電磁波が出口の境界面で反射し、それが戻って最初の境界面に到達したときに、樹脂表面での反射と逆相になるため打ち消しあって、一見反射は起きていないように検出され、また樹脂内での反射の繰り返しによって出口の境界面からの出射量が増えて透過率が上がったように見える。

数式が出てきてうざいと思うが、こんな感じになる。

<大気中から特定の厚みを持った媒質を電磁波が通過する場合>
r_in: 入射面での反射率、r_out: 出射面での反射率、t_in: 入射面での透過率、t_out: 出射面での透過率
εr: 媒質の比誘電率、c: 大気中での電磁波の速度、l: 厚み、k: 媒質内での波長の逆数に 2πを掛けたもの
Rin: 総合反射率、Tout: 総合透過率
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ここで云わんとしているのは k と l の積が、πの整数倍になると各式の位相項 e^(2jkl)が 1 になり、Rin = 0、Tout = 1 となると云うことである。つまり媒質内で電磁波が共鳴状態になる。

この電磁波に対する樹脂材が電気回路での分布定数線路に相当する。実際そういう解析もなされている。

このような媒質内での共振、共鳴現象によって発する波を定在波と呼ぶ。
これは一見電磁場のミスマッチではなくマッチングを取った例のように見えるが、そうではなくミスマッチを利用して定在波をわざと作り、等価的に透過率を上げたということである。
レーダを搭載した自動車の車体はそれが樹脂である場合は、比誘電率を鑑みてこのような厚み調整を行うことになる。

定在波というとオーディオの世界では悪者だが、このようにほぼ単一の周波数を扱う場合は各パラメータを調整すると、電磁波の伝達特性を改善出来る。オーディオ信号の場合は周波数範囲が広い(最低周波数と最高周波数の比で考える。絶対値での広さではない)のでこのような調整は出来ない。せいぜいバスレフ型スピーカで低音を増強するぐらいである。
話ははずれるが、そもそも時系列的にどんどん波形が変化していく音声信号は、その一つ前の波との干渉が起きるようでは、原音と異なってしまう。どこまでの時間なら次の波に影響を与えても差し支えないのかはよく分からない。人によっても違うのかも知れない。
放送の電波や配信信号は、音声や映像よりも非常に高い周波数が変調されており、その周波数(キャリア)の範囲でならこのような共鳴現象を利用することで、伝達ロスを抑えて感度を上げることができるというわけだ。

長くなってしまったので今回はここまで。なかなか本題に入れない...。

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