インピーダンスマッチングの必要性について、二つの理由が少なくともある、といって前回は電力の伝達効率について考察してみた。今回はもう一つの伝送系、これは特に通信分野でテーマになるのだが、これについて及ばずながら考えてみたい。

まず電気=波形=信号の伝達とは何か、何が関心事になるのかを考えてみる。電気信号はケーブルに流れる電流で伝わり、印加先で何らかの仕事を行うというのはまあ分かる。が、受け側がバッファアンプのようなハイインピーダンスだったら電流はほとんど流れないにも関わらず、受け手側ではその受信信号を用いて何らかの仕事をするというのも事実であろう。では一体何が伝わったのか?先に電流はほとんど流れない、と書いたがゼロでなければ電流はケーブル間に多少なりとも流れたともいえるので、単なる大小の議論にしか過ぎない、といもいえる。これについてはこれ以上の考察は難度が高さそうなので勘弁してもらうことにする。で、色々研究者、あるいは私のようなアマチュアの記事を見ると、伝達されているのは「電磁場」という見方が有力そうである。なのでここでは「電磁場の伝達」に視点をおいて、考察してみる。
まずなぜ導体であるケーブルに電流が流れるかというと、導体の中の電子が移動しているからと普通は考えてしまうが、電子の移動自体は非常に遅く(カメの歩みよりも遅いとのこと)ある電子が実際のケーブル入り口に入ってケーブルの終端に出てくるまでにとんでもなく時間が掛かってしまうのである。ではなぜケーブル内での信号の伝達が光速に迫るぐらいに速いかというと、ケーブルの外側に電磁場発生してケーブル内の電子に一斉に運動エネルギーを与えて終端に信号が現れるということである。

電磁場:「動け!」
電子A:「はい」
電子B:「はい」 → 電子Aに押されて動いたわけではない。あくまでも電磁場の指示で動いていることに注意。

以下略

終端の電子:「はい」
次のステージ:「いただきました。電子一個!」


なのでケーブル内の状態だけを議論しても信号が伝わる仕組みを理解しきれない。よってまずは電磁場の伝達の方からどういうものかを考えておかないとインピーダンスマッチングの必要性に行き着けないようだ。
ここで上記の例について登場している主な要素は三つある。一つはケーブルだが、他に電磁場をケーブルに与えた入力端と信号を受け取った終端である。具体的な電気回路においては電圧源、ケーブル、受信器となる。電気信号だけを考えるとただつながっている同じ状態になっているだけに見えるが、電磁場という目で見るとそれぞれ電圧源における電磁場の発生状態、ケーブルにおける電磁場の伝達状態、受信側での電磁場の受信状態とそれぞれ電磁場にとって状態が違うのである。それらの状態の整合を取るのが電気回路的にはインピーダンスマッチングということになる。
ケーブルは特定の長さを持っていて正負(信号とグラウンド)の二本で構成されているが、それは線材の太さや形状、二本の線を絶縁する絶縁体の種類によって特性インピーダンスというパラメータを持つ分布定数線路である。
電圧源で発生した電磁場はこのケーブルの表面を伝わって行き(その速度は光速と同じなのか、それともケーブルを包む絶縁体の影響を受けるのかは調べても分からなかった)、終端のところにある受信器の入力にたどり着いて電子を操って電気エネルギーを印加する。
だが、このそれぞれの電磁場の状態にミスマッチがあると終端のところで電磁場の反射がおき、信号が元の方向に戻り出すのである。それがまた入力端に戻ったときに、ケーブルと電圧源との間に電磁場のミスマッチがあるとまた出力に向かい出す。これが波形を歪ませ、信号の伝達効率を落とすことになる。

電磁場のミスマッチとは何か?
長くなりそうだし、書いていて非常にわかりにくいというのは自覚しているので、次回以降に別の例を挙げながら考えてみたい。

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