こんな記事を見つけた。

日々疲れ果ててしまうのは「感情労働」のせい?
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20170330-OYT8T50031.html?page_no=1

日本にはサービスに対するチップという習慣がない。私自身はチップなどという習慣は前時代的なものと思っていて、「良いサービスは当たり前」や「おもてなしの心」や「接客は笑顔で」などなど奉仕の精神は美徳であり、それこそが日本人の日本人たるアイデンティティであり伝統であるということが強調されている。オリンピックの東京招致活動のトドメの一撃は「お・も・て・な・し」だろう。
もちろんそれはそれで自分にとっても自分がおかれている環境も誇らしいものである。

ところが最近は「良いサービス」の過度な要求がありはしないかと気になってきている。云い方は悪いがそういう気持ちにつけ込んで儲けようという輩も結構多いのではないか。
確かに日常的なちょっとした挨拶や配慮、声かけ、笑顔は双方の気持ちを明るくする効果があるのは自分は実感しているし、みなさんも覚えがあるだろう。
気になっているのはサービス業に携わる人たちが、顧客に対するサービスはプロの仕事でありそれ相応の報酬があってしかるべきなのではないかと云うことである。かといって高級ホテルやレストランのようにサービス料を入れるわけにも行かず、今更チップもないだろう。

消費者側の意識として「良いサービス」は受けて当たり前となっている。なので消費者に気に入られなければ SNS で拡散されてそのサービス業者は淘汰されてしまうのである。競争原理といえばそれまでだが、元々顧客相手の気を使う仕事だけに結構むごい話のような気がしてならない。実際にサービス業を営んでいる人の気持ちをやったこともない(わけではない)私が勝手に推し量るのは失礼なことだが、上述の記事や運送会社の運転手さんが荷物をぶちまけたり、ぞんざいに扱ったりするのが話題になったりすると真面目に心配になってしまうのである。いわゆる「良いサービス」を提供しなくてはならない、そうしないと生きてはいけないという強迫観念になってはいないだろうか。ただでさえ製造業に比べてひとりあたりの生産性の低いサービス業である。

自分の古い記事で恐縮だが、テレビで放映されたデータを写し取ってあるのでこちらを見ていただくと参考になるかも知れない。

「メイド・イン・ジャパン逆襲のシナリオ」雑感
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/8655044.html

こちらの記事を書いたときの自分の意見としては「製造業への回帰」だったが、ここのところ日本の報告性として「観光立国」を目指す声も多いので、サービス業に携わる人たちへのモチベーションアップが重要なのではないかと思ってきた。それがタイトルの「笑顔への報酬」につながる。
淘汰されてはいけないから「笑顔で接客する」ではなくて「笑顔で接客する=顧客満足度を高める」ことで売り上げアップにつながるとストレートに自分の報酬につながるようになれば、前向きな接客態度になるのではないかと思う。前者と後者は結果的には同じかも知れないが、現場の方達にとってはちょっと意味合いが変わるだろう。
たとえば現在消費税は販売価格の 8% だが、このうちの 1 %ポイント分をその日に就業した従業員で山分けするというのはどうか。国へ収める税額は下がってしまうのでこれについては別の方法を考えるとしても、日々の努力=「感情労働」に対する対価を受け取れるようにしておくと、気持ちも違うのではないかと思う。

単純な計算をしてみると、一日 10時間開店している店があって消費税を含まない売り上げが 100 万円あったとする。適当に時間シフトや短時間パートさんなども入れて、延べ 80 時間人で一日を終えたとする。店は実際には消費税を含んで 108 万円を受け取っているわけだが、そのうちの 7 万円を消費税として国に収め、1 万円は延べ 80 時間人で分けるものとすると、1 時間当たり 125 円が時給に加算されることになる。昨今の労働賃金に対してかなりな加算量になる。売り上げが下がると自動的に下がる。
もちろん簡単に実現、運用できるものではない。税収は下がってしまうし、対象者、対象事業をどこの範囲にするか線引きが難しい。例えば外回りの営業担当者などは元々ノルマがあるので対象外だろう。あくまでもエンドユーザを相手に仕事をこなす業種、担当が対象ではないかと思う。
色々難しいことはあるかと思うが、「観光立国」を目指すには現場のモチベーションアップが重要なのである。個人個人のやる気や使命感、倫理観につけ込むようなことは絶対にしてはいけないと思う。

さてこのようなことをいいながら、自分はモンスタークレーマーになっていないか自省してみると結構怪しかったりする。家電製品などは最近は高機能にした分、見た目以上に精密機械だったりする。なので非常に再現性良く安定に長期間動かすには高度な技術が必要なのだが、ある程度のエラーも許容しないといけないのは自分も技術者なので分からなくはない。定期的な保守だって必要なはずだ。
といった話が分かっていながら家電製品だと一言言いたくなってしまう。修理担当者は「感情労働」とは分かりつつも。
でいて、なぜか PC の「予期せぬエラー」には寛容だったりする。

またしてもとりとめのない話になってしまった。妄言に突き合ってくれた方には感謝します。ついでに下のアイコンをクリックしておいて下さい。

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