下図はディジタル技術検定 2 級制御部門第 51 回の (8) である。
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ここからは伝達関数、状態方程式を主体とした問題になる。プログラミングを中心とした仕事しかしていない人にはつらいかも知れない。しかしレベル的にはそれほどでもないので、高専、大学での専門分野の必修授業を思い出せば何とかなる。
伝達関数とは何か、ラプラス変換とは何かということを専門的に説明し出すとページがいくらあっても足りないし、上手く伝えられる自信がないので、基本からやりたい人にはここらのサイトをお勧めする。

やる夫で学ぶディジタル信号処理
http://www.ic.is.tohoku.ac.jp/~swk/lecture/yaruodsp/main.html

ただこれだと式ばっかりでひいてしまうという人向けに簡単に説明しておくと、s という変数で表現された式をラプラス変換された式と呼び、変換される前の式は微分方程式である。で、この微分方程式を解くのがやっかいなのでラプラス変換して代数演算(四則演算)で簡単化して(必ずしも簡単にできるわけではないが)、それも逆ラプラス変換して微分方程式が表す応答を得ようというものである。ここで、入力信号を必要しそれに応じた出力信号が得られる s で表現された数式を伝達関数と呼ぶ。

オペアンプを使った例としてはここを参考にしてもらえると良いかも知れません。

周波数特性を持った回路を作ってみる
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/8047917.html

さて問題に戻ると、伝達関数 G(s) が与えられているからこれに何かを入力すると出力波形が得られる。この場合は単位ステップ入力 u(t) となっているから、これをラプラス変換して G(s) に掛ければ良い。u(t) のラプラス変換は何かというとこれは覚えておかなくてはいけなくて、1 / s である。どうしてそうなのかはここでは触れない。ラプラス変換表を覚えてもらうしかない。
このことをそういうものだと受け入れてもらえると前述のように簡単な話になり、u(t) → 1 / s を G(s) に掛ければ良いから、[16]は(1)1 / (s x (s + 2)) となる。

[17]は先ほど書いたように伝達関数に入力信号を与えたものが出力信号を表すラプラス変換式なので、これを逆ラプラス変換すれば良い。これはちょっと面倒だが、以下のようになる。
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ということで正解は(3)となる。波形はこんな具合だ。
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真面目に解くとこうなるが、選択肢から選ぶ問題なので条件が整えばこういう解き方もある。
u(t) を入力するということは t = 0 で 0 から 1 に変化する、ということで変化する瞬間は無限の周波数を含んでいる。以後、1 がずっと続くということは、変化したということを忘れた頃には直流 = 周波数ゼロということである。よって伝達関数に周波数無限を与えれば時刻ゼロの応答が分かるし、周波数ゼロを与えれば時刻無限の時の値が分かるというわけである。いわゆる「初期値の定理・最終値の定理」ってやつである。なおこれらの定理は求められた出力 Y(s) に s を掛けて計算するが、ここでは u(t) に対する応答ということで Y(s) = G(s) / s の形になっているので、s が相殺して G(s) だけについて調べれば良いということである。
ラプラス変換の変数 s は単独の周波数について議論するときは jω で表すことが出来る。よって s = jω と見なしてω = ∞とω = 0 をそれぞれ代入すると、t =0 と t = ∞ の時の値が分かるので、選択肢の中からそれを示しうるものを探せば良い。
まず G(∞) は 0 で、 G(0) = 1 / 2 だから、y(0) = 0、y(∞) = 1 / 2 になるものということで、(1)は y(∞) = 1 だから違う。(2)は y(∞) = ∞(指数関数部の符号に注意)、(4)は y(∞)= - ∞、(5)は y(0) = 1 となっていずれも違うことが分かる。
なおこの方法は伝達関数が安定系であることが条件であるので、なんでもかんでも使えるわけではないので注意して下さい。

慣れた方なら式を見ただけで、一次遅れ = LPF の伝達関数であることが分かるだろう。先ほどのここのブログのリンクを見て下さい。では HPF ならばどうなるかというと分子が 1 から s に変わるだけだが、その場合は同じような考え方で y(0) = 1 / 2 であることと、y(∞) = 0 であることが確認できるだろう。自分の見ている伝達関数がそもそもどういう性質のものか理解しておくと間違いにくいし、実務でも波形を見て狙ったとおりのものなのか違うのかおおよそのことは分かる。
今は伝達関数の応答は計算で解くのではなくシミュレーションツールに任せれば良いので、このような作業は不要と云っても良いがそれでも問題が発生したときに何が起きているのか推測するためには、一度は簡単なものを計算したりパラメータをいじって何が起こるのか見ておいた方が良い。

またこの手の伝達関数とその応答問題は出題頻度が高そうなので、演習をしておいた方が良い。


下図はディジタル技術検定 2 級制御部門第 51 回の (9) である。
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先ほどのは伝達関数の分母が s についての一次式だったので出力の計算(微分方程式の解)まで求められたが、二次式以上だとそこまでは求められないようだ。ただ二次式以上だと系の安定性についての議論が必要になる。さらにここでは振動しない、振動的な成分は現れてはいけない、ということなので条件がさらに狭まる。
安定性についてはα>0 という条件でクリアしている。さらに振動的でないためには分母の二次式を前問の出力波形を求めるための部分分数分解を行うったときつまり A / (s + a)+ B / (s + b)と表したとき、a、b 共に実数かつ正でなくてはならない。
符号に注意しながら a と b を二次方程式の解の公式から求めてみると、(-α±√(α^2 - 4 x 3 x 3) / (2 x 3) となるので、√ の中だけを見ればよく、α^2 - 4 x 3 x 3 = α^2 - 36 >= 0 であるためには、(5)α>= 6 でなくてはならない。
ユニットステップ(単位ステップ:用語が...)入力に対する出力の最終値は前問と同様に考えればよく(出力が安定である、という条件はクリアしている)、s = 0 とおけばいいので(4)4 / 3 となる。

応答波形を以下に示す。
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α = 4 として少し振動的にした場合はこのようになる。
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この伝達関数は二次のアクティヴ LPF と等価なことはお分かりだろうか。こちらの記事も参考にしてもらえると良いかも知れない。
振動的でないという観点では説明していないが、飛び上がり量で考えていて K <= 0.5 の時に振動的でないという結果が得られる。

修正>アクティヴフィルタを調べてみる
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/10388233.html?type=folderlist

さらにいうと K <= 0.5 の時というのは CR パッシヴ LPF 2 段重ねと同じことで、フィードバックが掛かっていない状態である。よって振動的になりようがない、ということになる。
こちらも参考にしてみて下さい。

パッシヴフィルタの二段接続

http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/10839601.html

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