※ 11月12日 数式をテキスト表現で書いたのですが、誤解を招きそうなので修正しました。
下図はディジタル技術検定 2 級制御部門第 52 回の (11) である。
実はこの問題出題ミスがあって受検者全員が正解となっている。伝達関数の分母が s^2 + 4s + 6 になっていてどうやっても解けない状態だった。試験官に指摘したら他からも指摘されていたようで、もっともらしい選択肢を選んでおいて下さい、ということだった。しっかりやって欲しいものだ。ちなみに第 45 回に同じ伝達関数の問題だ出ていて、αはブロックの中に 2 が書き込まれておりβだけを問うていた。
似たような内容を本ブログでも別テーマの中で扱っていたので、こちらも見ておいてもらえると式の理解が容易かと思います。
もう少し伝達関数表現で考えてみた。>やさしく考えるアナログ回路
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/6036059.html
上記ブログの内容を参考しにしてもらうと、問題図の上側の関数 α /(s + 1) を A とおき、下側の関数 1 /(s + β) を B とおいた場合の全体の伝達関数 G(s) は、A / (1 + A x B) となることが分かる。これを実際に展開して問題冒頭で与えられた式と比較すれば良い。とにかく愚直に丁寧に計算する。

ということで、全体を比較するまでもなく分子から(2)α = 2 がすぐに求まり、α x β が 6 なことから、(6)β = 3 が求まる。で、分母で確認すると 1 + β = 4、α + β = 5 ということでつじつまがあう。
下図はディジタル技術検定 2 級制御部門第 52 回の (12) である。
ここにも出題ミスがあった。(2)、(4)、(6)のそれぞれの第 2 項の x の添え字が 2 ではなく、1 になっており、選択肢の体を成していなかった。これも試験官に指摘しておいた。
「状態変数」とか「状態方程式」とか縁の無い人には文言を見ただけで毛嫌いしてしまうが、なんてことはない高校で習った行列表現を展開しただけである。よって素直に考えればよく、テキスト表現なので見づらいが、

ということになる。
さて、この問題を解くことはどんな応用に関連するのか、ということを簡単に説明しておく。
見ての通り数列を表す式である。高校などで習う数列、漸化式には初期値はあっても刻一刻と変化する変数はない。ここでは u(k) が入力信号ということでその変数と云うことになる。x1(k + 1) と x1(k) とはシステム的にどんな意味かというと、1 ステップずれている、という意味で x1(k + 1) の方が時刻的に進んでいる、が、先に値が現れると云うことは因果律に反するので逆に x1(K) は x(K+1) より遅れている、と表す。そこだけ書くとこんな感じだ。なお、u(k) はステップ関数ではなく単なる信号名なので、誤解のないように。

これを元に上の二つの式をブロック図に書き表すとこうなる。

こうやって書き直してみるとデジタルフィルタっぽい。フィードバックを含むので IIR フィルタの系列だろう。ただどうやらこの状態方程式は安定系ではないようで、エクセルで数列式をそのまま計算してみると疑似インパルス(k = 0 の時 0、k = 1 の時 1、k > 1 の時 0)レスポンスはこうなった。X1(0)、X2(0) はいずれも 0 とした。

かなり派手に振動するようだ。
さらにこれは z 変換に拡張される。先ほどは k は k + 1 より遅れるとしたが、ここでは進み因子 z を入れることで以下のように書き換えられる。

ここから X1 を消去して U を入力、X2 を出力と見なして z^(-1) を使った表現で書き直すと以下のようになる。

これを k が 1 秒間を表すとして scilab で疑似インパルス応答とボーデ線図を書かせてみたら以下のようになった。


ボーデ線図ではナイキスト周波数(ここでは 0.5Hz)のところで急速に利得が上がって位相がなにやら怪しげなので、やはり不安定な系なのだろう。疑似インパルス応答はエクセルでの計算と同じになった。
実践では式の安定性の評価などを行うが、ここでは省略する。余力があれば書庫「ちょっとだけデジタル信号処理」で取り上げるかも知れない。この問題を解くに当たってこのくらいのところまで応用が効けば十分だろう。さらに深掘りする助けになると幸いである。
なお以上の展開はどこかで間違っている恐れもあるので、どなたかチェックしていただけると有り難い。
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下図はディジタル技術検定 2 級制御部門第 52 回の (11) である。
実はこの問題出題ミスがあって受検者全員が正解となっている。伝達関数の分母が s^2 + 4s + 6 になっていてどうやっても解けない状態だった。試験官に指摘したら他からも指摘されていたようで、もっともらしい選択肢を選んでおいて下さい、ということだった。しっかりやって欲しいものだ。ちなみに第 45 回に同じ伝達関数の問題だ出ていて、αはブロックの中に 2 が書き込まれておりβだけを問うていた。
似たような内容を本ブログでも別テーマの中で扱っていたので、こちらも見ておいてもらえると式の理解が容易かと思います。
もう少し伝達関数表現で考えてみた。>やさしく考えるアナログ回路
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上記ブログの内容を参考しにしてもらうと、問題図の上側の関数 α /(s + 1) を A とおき、下側の関数 1 /(s + β) を B とおいた場合の全体の伝達関数 G(s) は、A / (1 + A x B) となることが分かる。これを実際に展開して問題冒頭で与えられた式と比較すれば良い。とにかく愚直に丁寧に計算する。

ということで、全体を比較するまでもなく分子から(2)α = 2 がすぐに求まり、α x β が 6 なことから、(6)β = 3 が求まる。で、分母で確認すると 1 + β = 4、α + β = 5 ということでつじつまがあう。
下図はディジタル技術検定 2 級制御部門第 52 回の (12) である。
ここにも出題ミスがあった。(2)、(4)、(6)のそれぞれの第 2 項の x の添え字が 2 ではなく、1 になっており、選択肢の体を成していなかった。これも試験官に指摘しておいた。
「状態変数」とか「状態方程式」とか縁の無い人には文言を見ただけで毛嫌いしてしまうが、なんてことはない高校で習った行列表現を展開しただけである。よって素直に考えればよく、

ということになる。
さて、この問題を解くことはどんな応用に関連するのか、ということを簡単に説明しておく。
見ての通り数列を表す式である。高校などで習う数列、漸化式には初期値はあっても刻一刻と変化する変数はない。ここでは u(k) が入力信号ということでその変数と云うことになる。x1(k + 1) と x1(k) とはシステム的にどんな意味かというと、1 ステップずれている、という意味で x1(k + 1) の方が時刻的に進んでいる、が、先に値が現れると云うことは因果律に反するので逆に x1(K) は x(K+1) より遅れている、と表す。そこだけ書くとこんな感じだ。なお、u(k) はステップ関数ではなく単なる信号名なので、誤解のないように。

これを元に上の二つの式をブロック図に書き表すとこうなる。

こうやって書き直してみるとデジタルフィルタっぽい。フィードバックを含むので IIR フィルタの系列だろう。ただどうやらこの状態方程式は安定系ではないようで、エクセルで数列式をそのまま計算してみると疑似インパルス(k = 0 の時 0、k = 1 の時 1、k > 1 の時 0)レスポンスはこうなった。X1(0)、X2(0) はいずれも 0 とした。

かなり派手に振動するようだ。
さらにこれは z 変換に拡張される。先ほどは k は k + 1 より遅れるとしたが、ここでは進み因子 z を入れることで以下のように書き換えられる。

ここから X1 を消去して U を入力、X2 を出力と見なして z^(-1) を使った表現で書き直すと以下のようになる。

これを k が 1 秒間を表すとして scilab で疑似インパルス応答とボーデ線図を書かせてみたら以下のようになった。


ボーデ線図ではナイキスト周波数(ここでは 0.5Hz)のところで急速に利得が上がって位相がなにやら怪しげなので、やはり不安定な系なのだろう。疑似インパルス応答はエクセルでの計算と同じになった。
実践では式の安定性の評価などを行うが、ここでは省略する。余力があれば書庫「ちょっとだけデジタル信号処理」で取り上げるかも知れない。この問題を解くに当たってこのくらいのところまで応用が効けば十分だろう。さらに深掘りする助けになると幸いである。
なお以上の展開はどこかで間違っている恐れもあるので、どなたかチェックしていただけると有り難い。

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