下図はディジタル技術検定 3 級第 51 回の (2) である。

ぱっと見単純な電圧と抵抗の問題に見えるがそうではない。交流信号に関する問題なのである。どうして交流だと分かるのか。電圧が普通は V となっているところが、V・(実際は V の上に ・ がある)ということでベクトルを表していることから見抜かなくてはいけない。もう一つコンデンサが使われているが、直流だったらコンデンサのインピーダンス(単なる抵抗値)は無限大なので、Xc = 9Ωになどなるはずがない。とはいえ周波数も示しているわけでもなく(問題を解くのに不要ではある~)はっきりいって不親切な問題である。
さて交流でもオームの法則は成り立つ。その派生であるインピーダンスの直接接続も抵抗の時と同じように足し算で良い。が、ここで注意しなくてはいけないのは、交流なのでベクトル表現または複素数表現を用いた上でのオームの法則であり、合成インピーダンスの計算だということである。
ここでは R = 12Ω の方は純抵抗ということでベクトル表現では横軸 X 座標方向の値であり、複素数表現では実数軸 Re 座標の値である。
ところが Xc = 9Ω の方はコンデンサと云うことでベクトル表現では縦軸 Y 座標方向の値であり、複素数表現では虚数軸 Im 座標方向の値であることを注意しておかなくてはいけない。いずれにしても単純に書いてある数値を足してはいけないのである。
ということで下図のようにベクトルにせよ複素数表現にせよ、R の値と Xc の値は直交するので合成抵抗は斜め方向に向く。図に書いてあるようにベクトルの合成の計算、あるいは複素数の絶対値計算のようになり、自乗和の平方根を計算することで解は得られる。

ここでなぜ Xc ベクトルが下向きなのだろうか。これはコンデンサの両端では電流の位相に対して電圧が 90°(π/ 4)遅れることから、下向きの表示になる。直感的に考えてみると中の電荷が空のコンデンサに対して、電圧を印加すると電荷が所望の値になるように最初は電流がドンと流れる。電荷がたまるについれてコンデンサの電位差が大きくなってくるわけで、どうしても時間的に遅れる。この例は非常に雑な説明ではあるが、コンデンサの電圧と電流の関係につい失念しそうになったら、こういう感じで思い出せば良いと思う。詳しくは前に紹介したサイトを熟読すること。面倒な人はコンデンサの電圧は電流に対して 90°遅れると覚えてしまうことである。で、位相はそうだがインピーダンスの大きさはというと 1 / ωC となってコンデンサの容量や交流周波数に反比例の大きさになる。ここでは ω も C も不明だが、1 / ωC が 9Ωということだ。
複素数表現の場合はどうか。教科書を見るとコンデンサの交流に対するインピーダンスは 1 / jωC と書いてある。このままでは理解しづらいので、分子に j を持ってくると、- j / ωC となり、虚数軸に於いて 1 / ωC だけマイナス方向になる、ということになる。よってインピーダンス Xc は - j 9 Ω であるから、抵抗のインピーダンス R は実数軸のプラス側にあるので、合成インピーダンスは、図の緑色の矢印の先ということになる。
ベクトル表現がいちいちデバイスの性質を考えて、符号を決めなくてはいけないのに対して、複素数表現は形式的にコンデンサの場合は Xc = 1 / jωC、コイルの場合は XL = jωL と置いて、そのままオームの法則を適用して電圧と電流の関係を計算して構わない。オームも偉大なら複素数表現を考え出した人も偉大だ。これで電気回路解析をする人は直流と交流を独立に考える必要はあまりなくなった(ゼロではない)。
よってインピーダンスは上図にあるとおり、15Ω となる。振幅の方だがこれも同様にベクトルないしは複素数表現で考えなくてはいけない。VC = 18 V、VR = 24V と何気に書いてあってベクトルとは書いていない(図はベクトルになっているにも関わらず)ので瞬時値のように見えるので、答えは単純足し算で 42V である。といいたいところだが、おそらくミスプリだろう。VC も VR も交流信号としての実効値を表していると解釈してあげないといけないようだ。ということで、VC と VR には 90°の位相差が生じており、交流的は単純足し算をすることが出来なくて、ベクトルないしは複素数演算を行って計算することになる。面倒くさそうに見えるがこの場合は簡単で、それぞれのインピーダンスの倍の交流実効値が測定されているのだから、電流は 2A の交流実効値が流れていると考えて、直列インピーダンスの倍の交流実効値がある、と単純に考えて 30V を選ぶ。
だまされたような気分かも知れないが、電流は直列接続なため一定の交流実効値を示し、コンデンサと抵抗で位相がズレながら電位差が生じているのでこのような結果になる。
下図の I(IC) が抵抗とコンデンサに流れる電流、青が抵抗の両端の電圧、赤がコンデンサの両端の電圧、緑が全体の電圧である。(上図のベクトルと
数値的に分かりやすいように振幅で表示している。実効値の場合はスケールを 1.41 倍にしてみること。

同様な問題をもう少し見てみる。
下図は第 50 回の (2) である。

電圧をベクトル表現している。選択肢を見ると振幅と位相がそれぞれ異なっているので、100∠(π/4) を表しているものを選ぶのだが、位相について云えばベクトルの座標が Y 軸に対してプラスになっていることから位相は進んでいると考える。
振幅の方だが、これは実は私は迷った。というか知らなかった。100∠(π/4) と表記した場合の 100 が交流信号の電圧を表すのだが、てっきり振幅を表していると思っていたら答えによると実効値らしい。慣例的にそれで正しいのか分からないが、少なくとも自分の持っている本や調べた範囲では実効値と明言している物はない。ただ、Vm とすると明確に振幅らしい、ということで単なる V なら実効値と云うことなのだろう。教科書になんて書いてあるか知っている人は教えて下さい。
この辺りはすっきりしないが、実効値が 100 なら交流信号の数式表現では振幅を使うので、実効値に √2 を掛けておいて、位相が進んでいることも合わせて (3)を選ぶ。
下図は第 49 回の (2) である。

位相差と時間差との関係と問うているわけだが、一周期が 2π(rad) であることを思い出すと、50Hz の一周期は 1 / 50 で 20ms となり、このうちの π / 3(rad) は一周期の 1 / 6 だから約 3.33ms と求まる。
交流に関しては検定で点数を取るだけではなく、実用的にもこのあと伝達関数を扱う上でも色々慣れておく必要があるので、演習はできるだけたくさんやっておくようにしたい。
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ぱっと見単純な電圧と抵抗の問題に見えるがそうではない。交流信号に関する問題なのである。どうして交流だと分かるのか。電圧が普通は V となっているところが、V・(実際は V の上に ・ がある)ということでベクトルを表していることから見抜かなくてはいけない。もう一つコンデンサが使われているが、直流だったらコンデンサのインピーダンス(単なる抵抗値)は無限大なので、Xc = 9Ωになどなるはずがない。とはいえ周波数も示しているわけでもなく(問題を解くのに不要ではある~)はっきりいって不親切な問題である。
さて交流でもオームの法則は成り立つ。その派生であるインピーダンスの直接接続も抵抗の時と同じように足し算で良い。が、ここで注意しなくてはいけないのは、交流なのでベクトル表現または複素数表現を用いた上でのオームの法則であり、合成インピーダンスの計算だということである。
ここでは R = 12Ω の方は純抵抗ということでベクトル表現では横軸 X 座標方向の値であり、複素数表現では実数軸 Re 座標の値である。
ところが Xc = 9Ω の方はコンデンサと云うことでベクトル表現では縦軸 Y 座標方向の値であり、複素数表現では虚数軸 Im 座標方向の値であることを注意しておかなくてはいけない。いずれにしても単純に書いてある数値を足してはいけないのである。
ということで下図のようにベクトルにせよ複素数表現にせよ、R の値と Xc の値は直交するので合成抵抗は斜め方向に向く。図に書いてあるようにベクトルの合成の計算、あるいは複素数の絶対値計算のようになり、自乗和の平方根を計算することで解は得られる。

ここでなぜ Xc ベクトルが下向きなのだろうか。これはコンデンサの両端では電流の位相に対して電圧が 90°(π/ 4)遅れることから、下向きの表示になる。直感的に考えてみると中の電荷が空のコンデンサに対して、電圧を印加すると電荷が所望の値になるように最初は電流がドンと流れる。電荷がたまるについれてコンデンサの電位差が大きくなってくるわけで、どうしても時間的に遅れる。この例は非常に雑な説明ではあるが、コンデンサの電圧と電流の関係につい失念しそうになったら、こういう感じで思い出せば良いと思う。詳しくは前に紹介したサイトを熟読すること。面倒な人はコンデンサの電圧は電流に対して 90°遅れると覚えてしまうことである。で、位相はそうだがインピーダンスの大きさはというと 1 / ωC となってコンデンサの容量や交流周波数に反比例の大きさになる。ここでは ω も C も不明だが、1 / ωC が 9Ωということだ。
複素数表現の場合はどうか。教科書を見るとコンデンサの交流に対するインピーダンスは 1 / jωC と書いてある。このままでは理解しづらいので、分子に j を持ってくると、- j / ωC となり、虚数軸に於いて 1 / ωC だけマイナス方向になる、ということになる。よってインピーダンス Xc は - j 9 Ω であるから、抵抗のインピーダンス R は実数軸のプラス側にあるので、合成インピーダンスは、図の緑色の矢印の先ということになる。
ベクトル表現がいちいちデバイスの性質を考えて、符号を決めなくてはいけないのに対して、複素数表現は形式的にコンデンサの場合は Xc = 1 / jωC、コイルの場合は XL = jωL と置いて、そのままオームの法則を適用して電圧と電流の関係を計算して構わない。オームも偉大なら複素数表現を考え出した人も偉大だ。これで電気回路解析をする人は直流と交流を独立に考える必要はあまりなくなった(ゼロではない)。
よってインピーダンスは上図にあるとおり、15Ω となる。振幅の方だがこれも同様にベクトルないしは複素数表現で考えなくてはいけない。VC = 18 V、VR = 24V と何気に書いてあってベクトルとは書いていない(図はベクトルになっているにも関わらず)ので瞬時値のように見えるので、答えは単純足し算で 42V である。といいたいところだが、おそらくミスプリだろう。VC も VR も交流信号としての実効値を表していると解釈してあげないといけないようだ。ということで、VC と VR には 90°の位相差が生じており、交流的は単純足し算をすることが出来なくて、ベクトルないしは複素数演算を行って計算することになる。面倒くさそうに見えるがこの場合は簡単で、それぞれのインピーダンスの倍の交流実効値が測定されているのだから、電流は 2A の交流実効値が流れていると考えて、直列インピーダンスの倍の交流実効値がある、と単純に考えて 30V を選ぶ。
だまされたような気分かも知れないが、電流は直列接続なため一定の交流実効値を示し、コンデンサと抵抗で位相がズレながら電位差が生じているのでこのような結果になる。
下図の I(IC) が抵抗とコンデンサに流れる電流、青が抵抗の両端の電圧、赤がコンデンサの両端の電圧、緑が全体の電圧である。(上図のベクトルと
数値的に分かりやすいように振幅で表示している。実効値の場合はスケールを 1.41 倍にしてみること。

同様な問題をもう少し見てみる。
下図は第 50 回の (2) である。

電圧をベクトル表現している。選択肢を見ると振幅と位相がそれぞれ異なっているので、100∠(π/4) を表しているものを選ぶのだが、位相について云えばベクトルの座標が Y 軸に対してプラスになっていることから位相は進んでいると考える。
振幅の方だが、これは実は私は迷った。というか知らなかった。100∠(π/4) と表記した場合の 100 が交流信号の電圧を表すのだが、てっきり振幅を表していると思っていたら答えによると実効値らしい。慣例的にそれで正しいのか分からないが、少なくとも自分の持っている本や調べた範囲では実効値と明言している物はない。ただ、Vm とすると明確に振幅らしい、ということで単なる V なら実効値と云うことなのだろう。教科書になんて書いてあるか知っている人は教えて下さい。
この辺りはすっきりしないが、実効値が 100 なら交流信号の数式表現では振幅を使うので、実効値に √2 を掛けておいて、位相が進んでいることも合わせて (3)を選ぶ。
下図は第 49 回の (2) である。

位相差と時間差との関係と問うているわけだが、一周期が 2π(rad) であることを思い出すと、50Hz の一周期は 1 / 50 で 20ms となり、このうちの π / 3(rad) は一周期の 1 / 6 だから約 3.33ms と求まる。
交流に関しては検定で点数を取るだけではなく、実用的にもこのあと伝達関数を扱う上でも色々慣れておく必要があるので、演習はできるだけたくさんやっておくようにしたい。

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