ディジタル技術検定試験を受けたという話を日記に書いたが、個々の試験問題としては電気電子工学に携わる / 携わろうという人ならさほど難しいものではないと思う。ただし一口に電気電子工学といっても、その中でこの試験に出てくるすべての分野をカバーしようとするとちょっと大変だろうと思う。まあ、センター試験のようなものなのかも知れない。
ここの書庫では今回私が受検した 3 級と 2 級制御について、実際に出た問題と過去問題を解説しながら、実業務でその知識がどんな関わり方をしてくるのか、できるだけ例を挙げながら試験に合格するだけではなく、その知識を実務で活かすのはどんな機会かなどを解説してみようと思う。
是非、このブログをご覧の方で「こういう考え方もある」「こういう風に応用できる」などの例、サイト情報などをお持ちでしたら紹介してもらえると有り難いのでよろしくお願いします。
ディジタル技術検定 3 級 第 52 回
ちょっと問題文や図などは自作もしくはスキャンだったりするので、実際と印象が違うかも知れないがご容赦願いたい。
(1) 下図の直流回路で、抵抗 R に流れる電流は何アンペアですか。1~4の中から選びなさい。

1:0.10A
2:0.12A
3:0.48A
4:0.6A
まず最初は鉄板のオームの法則である。さすがに電気電子工学に携わっている技術者でこれを知らない人はいないだろう。力学における運動方程式と同じくらい基本中の基本である。
とはいってもちょっと結線を複雑にされると読み解きにくくなるのも事実だ。
お時間のあるかたはこちらも覗いて見て欲しい。
高校の物理の問題(応用レベルらしい)
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/11755905.html
さて、結線が複雑になった問題が時々あるといってもそれらを公式、定理で解く方法も考え出されている。が、ここでは出来るだけ愚直に解く方法を用いることにする。
まずオームの法則で解く第一歩は電圧源に対してこの形に追い込むことである。

そう、ただのオームの法則を説明してる図である。ということで問題の回路もまずはこの回路の形になるように変形していかなくてはいけない。
そこで 24Ω、20Ω、80Ωの抵抗の合成値を求めることから始まる。
おさらいになると思うが、抵抗の合成値は以下のように計算する。

ちなみに R1 // R2 は並列接続を表す。特に数式表現として定義されていないのかも知れないが、書籍、サイトなどでこういった書き方を見かけるのでここでもたまに使っている。見ての通り直列接続は足し算なのでオームの法則の適用が直接出来るが、並列接続が中に入るととたんに面倒になる。合成抵抗は教科書的には上の図右側の分数の足し算という形で書かれているが、合成抵抗の値はこの式だとすぐには数値がピンと来ないので、その下の式のように直しておく。
つまり「抵抗値の積」/「抵抗値の和」と覚えれば良い。ただしこの簡易式は並列抵抗が二つの場合までで、三つ以上は教科書の式で右辺に 1 / R3 + 1 / R4 + ・・・ となるので間違えないようにしたい。つまり並列抵抗の逆数の和が合成抵抗の逆数になるということである。
もとの回路に戻って 20Ωと 80Ωが並列になっているのだから、下の図のように値は計算されて 16Ωになる。

よって今度は 24Ωと 16Ωの合成抵抗なるわけだが、上図に示したように足し算で良い。よって問題の回路は下図のように簡略化される。

ここで始めてオームの法則が分かりやすく適用できる。
40Ωの抵抗に 24V を印加したら何アンペアの電流が流れるかと云うことで、図にも書いてあるように I = V / R ということで 0.6A を得る。
元の回路に戻って、この 0.6A が 24V 電源から流れ出し、24Ωを通過した後 20Ωと 80Ωに別れて流れていくことになる。求めたいのは 80Ωに流れる電流であるからここにオームの法則を適用したと云うことになり、80Ωの両端の電位差が分かれば良い。色々手順は考えられるが、20Ω と 80オームの合成抵抗が 16Ωであることは先ほど求めたとおりなので、これを一つの抵抗と考えて回路を書き直すと下のようになり、16Ωに 0.6A が流れているということでここでも簡単にオームの法則 V = I・R が適用できて、16Ωの両端の電位差 0.6A x 16Ω = 9.6V を得る。

80Ωの両端の電位差が分かったので、ここにも簡単にオームの法則が適用できる。なおここで 20Ωの抵抗の存在が気になるが、今までの計算はそれを織り込んでの計算なので全く気にする必要がない。錯覚しがちなので気をつけて下さい。
そこで下図のように追い込むことが出来て I = V / R となり、0.12A を得る。ということで正解は2.ということになる。

以上は解き方の一つである。0.6A が全体に流れているところから、合成抵抗の両端の電圧を求めたが感覚的に戸惑いそうな人は 24Ωにおける電圧降下量を下図のように求めて、80Ωの両端の電圧を求めても良い。

また 0.6A が 20Ωと 80Ωに分流しているというところから、以下のように連立方程式を立てて解いても良い。

試験の時私は「抵抗比が 1:4 だから電流比は 4:1。よって 80Ωにはトータル電流の 1 / 5 が流れていることになる」と考えて解いた。たまたま数値がシンプルだったら暗算で解いたが、数値的に難しくても電卓があれば問題はないので解き方の一つとして覚えておいても損は無いだろう。解き方のアイディアが色々あると検算にも使えるので演習しておくといいと思う。
また最初に紹介した記事の中で、電圧源を分圧して新たな電圧源を仮設しその時の出力抵抗を求めて、そこから負荷に電圧が供給されるという考え方を挙げているが、ここでも同様に 24V を一旦 24Ωと 20Ωで分圧して、その電圧から 24Ωと 20Ωの並列合成抵抗値を通して、80Ωに供給したときの電流を求める方法もある。ここでは数値が分数表現になってしまうので不向きだが、問題によってはこの考え方の方が容易になることもあるので、覚えておくと良い。
さてこんな問題を解くことにどんな実践的応用があるのだろうか、と思う人もいるだろう。
たとえば入力を直流ではなく交流だったらどうなるのか、R ではなく C = 1uF だったらどうなるのか、発展させてみて欲しい。
交流ならばある周波数を決めてから考えるので、R の部分のインピーダンスは 1 / (jωC) になる。80Ωの代わりにこれをいれて計算することになる。交流ならば振幅のみならず位相も考えなくてはいけないので一見複雑そうに見えるが、そこまで含めてオームの法則は成り立つので丁寧にやっていけば答えに行き着くことが出来る。
またオペアンプでこんな回路を作ったらどんな出力が出るのかも考えてみて下さい。

次回も過去問題でオームの法則を用いた物をいくつか紹介しながら解いていこうと思う。
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ここの書庫では今回私が受検した 3 級と 2 級制御について、実際に出た問題と過去問題を解説しながら、実業務でその知識がどんな関わり方をしてくるのか、できるだけ例を挙げながら試験に合格するだけではなく、その知識を実務で活かすのはどんな機会かなどを解説してみようと思う。
是非、このブログをご覧の方で「こういう考え方もある」「こういう風に応用できる」などの例、サイト情報などをお持ちでしたら紹介してもらえると有り難いのでよろしくお願いします。
ディジタル技術検定 3 級 第 52 回
ちょっと問題文や図などは自作もしくはスキャンだったりするので、実際と印象が違うかも知れないがご容赦願いたい。
(1) 下図の直流回路で、抵抗 R に流れる電流は何アンペアですか。1~4の中から選びなさい。

1:0.10A
2:0.12A
3:0.48A
4:0.6A
まず最初は鉄板のオームの法則である。さすがに電気電子工学に携わっている技術者でこれを知らない人はいないだろう。力学における運動方程式と同じくらい基本中の基本である。
とはいってもちょっと結線を複雑にされると読み解きにくくなるのも事実だ。
お時間のあるかたはこちらも覗いて見て欲しい。
高校の物理の問題(応用レベルらしい)
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/11755905.html
さて、結線が複雑になった問題が時々あるといってもそれらを公式、定理で解く方法も考え出されている。が、ここでは出来るだけ愚直に解く方法を用いることにする。
まずオームの法則で解く第一歩は電圧源に対してこの形に追い込むことである。

そう、ただのオームの法則を説明してる図である。ということで問題の回路もまずはこの回路の形になるように変形していかなくてはいけない。
そこで 24Ω、20Ω、80Ωの抵抗の合成値を求めることから始まる。
おさらいになると思うが、抵抗の合成値は以下のように計算する。

ちなみに R1 // R2 は並列接続を表す。特に数式表現として定義されていないのかも知れないが、書籍、サイトなどでこういった書き方を見かけるのでここでもたまに使っている。見ての通り直列接続は足し算なのでオームの法則の適用が直接出来るが、並列接続が中に入るととたんに面倒になる。合成抵抗は教科書的には上の図右側の分数の足し算という形で書かれているが、合成抵抗の値はこの式だとすぐには数値がピンと来ないので、その下の式のように直しておく。
つまり「抵抗値の積」/「抵抗値の和」と覚えれば良い。ただしこの簡易式は並列抵抗が二つの場合までで、三つ以上は教科書の式で右辺に 1 / R3 + 1 / R4 + ・・・ となるので間違えないようにしたい。つまり並列抵抗の逆数の和が合成抵抗の逆数になるということである。
もとの回路に戻って 20Ωと 80Ωが並列になっているのだから、下の図のように値は計算されて 16Ωになる。

よって今度は 24Ωと 16Ωの合成抵抗なるわけだが、上図に示したように足し算で良い。よって問題の回路は下図のように簡略化される。

ここで始めてオームの法則が分かりやすく適用できる。
40Ωの抵抗に 24V を印加したら何アンペアの電流が流れるかと云うことで、図にも書いてあるように I = V / R ということで 0.6A を得る。
元の回路に戻って、この 0.6A が 24V 電源から流れ出し、24Ωを通過した後 20Ωと 80Ωに別れて流れていくことになる。求めたいのは 80Ωに流れる電流であるからここにオームの法則を適用したと云うことになり、80Ωの両端の電位差が分かれば良い。色々手順は考えられるが、20Ω と 80オームの合成抵抗が 16Ωであることは先ほど求めたとおりなので、これを一つの抵抗と考えて回路を書き直すと下のようになり、16Ωに 0.6A が流れているということでここでも簡単にオームの法則 V = I・R が適用できて、16Ωの両端の電位差 0.6A x 16Ω = 9.6V を得る。

80Ωの両端の電位差が分かったので、ここにも簡単にオームの法則が適用できる。なおここで 20Ωの抵抗の存在が気になるが、今までの計算はそれを織り込んでの計算なので全く気にする必要がない。錯覚しがちなので気をつけて下さい。
そこで下図のように追い込むことが出来て I = V / R となり、0.12A を得る。ということで正解は2.ということになる。

以上は解き方の一つである。0.6A が全体に流れているところから、合成抵抗の両端の電圧を求めたが感覚的に戸惑いそうな人は 24Ωにおける電圧降下量を下図のように求めて、80Ωの両端の電圧を求めても良い。

また 0.6A が 20Ωと 80Ωに分流しているというところから、以下のように連立方程式を立てて解いても良い。

試験の時私は「抵抗比が 1:4 だから電流比は 4:1。よって 80Ωにはトータル電流の 1 / 5 が流れていることになる」と考えて解いた。たまたま数値がシンプルだったら暗算で解いたが、数値的に難しくても電卓があれば問題はないので解き方の一つとして覚えておいても損は無いだろう。解き方のアイディアが色々あると検算にも使えるので演習しておくといいと思う。
また最初に紹介した記事の中で、電圧源を分圧して新たな電圧源を仮設しその時の出力抵抗を求めて、そこから負荷に電圧が供給されるという考え方を挙げているが、ここでも同様に 24V を一旦 24Ωと 20Ωで分圧して、その電圧から 24Ωと 20Ωの並列合成抵抗値を通して、80Ωに供給したときの電流を求める方法もある。ここでは数値が分数表現になってしまうので不向きだが、問題によってはこの考え方の方が容易になることもあるので、覚えておくと良い。
さてこんな問題を解くことにどんな実践的応用があるのだろうか、と思う人もいるだろう。
たとえば入力を直流ではなく交流だったらどうなるのか、R ではなく C = 1uF だったらどうなるのか、発展させてみて欲しい。
交流ならばある周波数を決めてから考えるので、R の部分のインピーダンスは 1 / (jωC) になる。80Ωの代わりにこれをいれて計算することになる。交流ならば振幅のみならず位相も考えなくてはいけないので一見複雑そうに見えるが、そこまで含めてオームの法則は成り立つので丁寧にやっていけば答えに行き着くことが出来る。
またオペアンプでこんな回路を作ったらどんな出力が出るのかも考えてみて下さい。

次回も過去問題でオームの法則を用いた物をいくつか紹介しながら解いていこうと思う。

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