前回まででトランジスタを 1つだけ使って、3 ~ 10 倍ぐらいの増幅器を作ってみました。ですがこのままでは(その3)で取り上げたように負荷の影響で利得が大幅に変わってしまうので、もう一つトランジスタを使ってでも出力インピーダンスを下げなくてはいけません。
ということでストレートに作るとこんな回路になります。
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負荷は 100KΩと高いような低いような値ですが、最初のトランジスタの増幅結果がそれほど損なわれず、出力されているようです。ただ白状すると、負荷抵抗をさらに小さくするとちょっと考えづらい波形が出てくるので、今回はここまででやめておきます。何か気が付いていないことがありそうです。

さて、この回路最初のトランジスタは入力信号に対して交流的に接続されて、次のバッファトランジスタへも交流的に接続されています。そして出力も交流的に接続されています。部品点数は多いですし、容量の大きなコンデンサが必要なので賢い設計とは云いがたいです。

前にも書きましたように電源電圧は 5V に制限されているとはいえ、欲しい振幅の最大は ±1.5V = 3Vp-p ですから、上手く工夫して入れ込みたいところです。

前回のトランジスタ一つだけの回路の場合で、ベースに接続する抵抗値を使うトランジスタの特性に合わせてだいたいの調整をすることで、信号の中心電位を 2.5V ~ 3.0V ぐらいに収められそう(多少トランジスタがばらついても)という感触でしたので、これをそのまま、エミッタフォロア回路のベースに接続してしまいます。そうすると、エミッタフォロア回路のエミッタ電位はそこから 0.6V ~ 0.7V ぐらい下がったところに落ち着きますので、エミッタでの信号の中心電位は 1.8V ~ 2.4V ぐらいになりますから、±1.5V を確保できそうなことが分かります。
回路図ではこうなります。
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波形はこうなります。
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左のトランジスタのコレクタ電位の中心が約 3.0V で、直結された右のトランジスタのエミッタ電位の中心は 2.3V ですから、予定通りです。
周波数特性はこのようになって、バッファの後の負荷抵抗のところでの利得の低下も少ないです。
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この回路構成で、左側のトランジスタの hFE が大きく変わる場合は、代表的な物で R3、R4 を調整して Vc が 3V 中心付近になるようにしておけば、品種、ランク、さらにランク内でのバラツキがあっても ±0.15V の交流信号を 10 倍増幅して ±1.5V の信号を作れる回路ができたことになります。

細かいことを云うとキリがないので、ここまでで収めさせてもらいますが、そもそも 5V しか電圧を与えないで 3Vp-p の振幅を取れ、という時点でかなり無茶振りです。そういう意味では、それなりに実用的(実際は電源電圧が高いか、信号振幅が低い)な回路であり、今までの解説の流れでだいたいのところは使える物が出来ていると思います。
もっとも乾電池一個 = 1.5V で小信号で良いからなんとかしろ、と云われると少し考えを変える必要がありますが、組み込み機器などで、3V ~ 5V ぐらいならアナログ回路に分けても良いよ、その代わり ADC の前の振幅を出来るだけとってね、みたいな用途に対しては、設計の考え方としてはこれでいけるのではないかと思います。ただしオペアンプを使った方がラクだったりしますので、検討してみて下さい。