トランジスタ回路というよりは機能を実現するのですから、トランジスタ増幅器を云うべきでしたね。
回路図としては前回示した以下の回路をベースに出来るだけ所望の特性が出るようにしていこうと思います。

最初に制約条件、設計仕様を示しておきます。
・トランジスタは 1 つだけ。
・電源電圧は + 5 V のみ。
・入力信号は ±0.5V ぐらい。増幅率はとりあえず 3 倍くらい(どうしてもアバウトになるのはオペアンプとは違うので)。
・そこで出力電圧も ±1.5V ということになります。
・帯域はオーディオ帯域程度。DC は通しません。歪みも少ないに越したことはないという程度。
さて、トランジスタは電流を使って電流を制御であって、その端子のうちの B(ベース)は入力端子でありそこに流し込む電流によって、トランジスタのエミッタ、コレクタ電流が決まります。決まるのはあくまでも電流です。その電流を電圧に変換するのは抵抗の役目です。
なので、+ 5 V から R1(10K)- トランジスタ C - トランジスタ E - R2(3.3K)- GND に流れる電流とそれに対応した電圧配分というものを考えておかなくてはいけません。
最初の設計仕様で入力電圧は ±0.5V ぐらいといいました。つまり 1 V p-p です。中心電位はさておきトランジスタのエミッタにはその電圧振幅が現れると云うことです。出力電圧はというと約 3倍ということで ±1.5V つまり 3 V p-p です。この振幅がトランジスタのコレクタに現れます。ですので、信号成分としては 1 V + 3 V は電源電圧の中から配分されていなくてはいけないということです。そうすると残りは 1 V しか残っていませんから、トランジスタの特性を考慮しながら配分することになります。
今手元に 2SC1815 の資料がないのでだいたいで決めてしまいますが、トランジスタはエミッタ電流がゼロになってしまうと遮断領域に入ってしまうので、エミッタ電位は最低でもここでは 0.1 V は確保しておくことにしましょう。つまり信号の振幅の最低レベルが 0.1 V ということになります。ですので 0.1 V / 3.3 K = 30 uA は最低でも流れておくようにします。そうするとコレクタ電位の最高値は 10 K x 30 uA となって 0.3 V は + 5 V から低くなると云うことになります。
そうするとトランジスタのエミッタ、コレクタ間の最小電位差は 5 - 0.3 - 3 - 0.1 = 0.6 V でなんとかリニア動作してくれそうな範囲です。これが当然ですがマイナスになったらトランジスタは飽和領域に入ってしまうので、スイッチング動作のようになって出力信号が歪み出します。
ことばで説明したのでまだるっこしかったと思いますので、簡単な図を書いてみました。
ちょっと回路図の関係で電圧のスケールが奇妙ですが我慢して下さい。

これでトランジスタの出力電圧配分が決まりました。今度はこれに合うように入力側の条件を決めていきます。
ポイントはエミッタの中心電位です。グランドから見て 0.1 V までしか入力電圧が下がらないようにしなくてはいけないので、入力信号の半値振幅は 0.5 V ですから、エミッタ電位の中心は 0.6 V ということになります。
さてここからが問題ですが、通常ベース電位はエミッタ電位の 0.6 V から 0.7V ぐらい上がったところ、となっています。
まあ当たらずといえども遠からずなのですが、トランジスタによっても若干違ったりして悩むところです。ここではえいや!と 0.7 V としてしまいます。理由は低めにしてしまうとエミッタ電位の最低値 0.1 V が確保できなくなったりするので、それぐらいなら、エミッタ、コレクタ間の電位差が下がっても余裕がありそうだからです。
ということでベース電位が決まりました。0.6 V + 0.7 V = 1.3 V になります。
では、+ 5 V から単純に抵抗分割すれば良いのかというとちょっと気にしておかなくてはいけないのが、ベース電流です。トランジスタがアクティブに動作するには、コレクタ電流の 1 / hFE の値をベース電流に流し込んでかつベース電位が所望の電位を持っていなくてはいけません。コレクタ電流の最大値は + 5 V / (10 K + 3.3 K) = 0.38 mA ただし実際にはトランジスタが電圧降下を持つのでもう少し小さいです。とりあえずこの値を使って hFE = 100 ぐらいを期待したとして、3.8 uA の振れ幅を持ちつつ、ベース電位を 1.3 V 付近に維持しておけるような定数を R3、R4 に選ばなくてはいけません。ベースとなる回路では 330 K と 100 K で分圧していますが、ここに流れている電流は 11uA なので少々影響を受けそうです。
これを問題視するかしないかは要求精度で決まります。もっとも単純な対策は一桁抵抗値を下げてしまえばいいわけで、ベース電流が多少変化しても(hFE がばらついても)動作点が大きく狂うことはありません。ついでに R4 を単純な分圧して求められる値より少し高めにしておけば、ベース電位 1.3 V の精度が上がります。
ただし、回路全体で見ると入力インピーダンスが下がるので入力コンデンサ C2 の値を大きくする必要があります。でないと低域まで特性がカバー出来ません。
ということで、もっともらしい R3 と R4 としては、33 K と 12 K ぐらいにしてみます。C2 は 10 uF にします。
回路図はこれです。負荷抵抗は外しました。後で出てきます。

波形はこれです。1KHz ±0.5 V の信号を入れて見ました。

Vout はもっともらしく、100 % とは行きませんが ±1.5 V ぐらいの信号になっています。一見良さそうなんですがちょっと問題ありなのが、一番上の ib(Q1) でしたベース電流はあるところで急速に電流が上がっています。電圧波形としてみた場合は結果オーライなのですが、少しオーディオ的な性能が欲しい場合には良からぬ歪みになりそうです。
これらのデータから分かる原因を考えてみましょう。
兆候は一番下のトランジスタの電圧波形に見えています。
カーソルで示しているところを見て下さい。エミッタ電圧は 1.2 V とと 0.1V 高めに出てしまいました。その分エミッタ電流 = コレクタ電流が増えてコレクタ電流が下がってきました。そしてエミッタ電位との差は少なくなってしまっていますが、その時にベース電位がコレクタ電位より上がってしまっています。つまりベース-コレクタ間ダイオードが順方向になってしまっているので、ベース電流が急激に増えてしまっているわけです。
戻ってベース電流の絶対値を見てみましょう。想定より少なく最大でも 2.0 uA ぐらいです。ちょっと気にしすぎて R4 を小さめにしすぎたかも知れません。R4 を 10K にして同様に波形を取ってみます。

かなりギリギリですが、なんとかトランジスタのリニア領域だけで動作させていられるようです。
周波数特性はこうなりました。まあ良好でしょうか。

Vout の FFT 結果です。入力との比較で表示しましたがなぜか Vin 自体にたくさん高調波乗っているので良いのかどうか分かりません。

実はちょっとそもそもの設計コンセプトに無理がありまして + 5 V 電源で 3 倍程度の増幅率で ±1.5 V の出力を得るというのが無茶振りのようです。マイクアンプなどに使いたい場合は、入力はもっと小さいでしょうし増幅率も高いでしょう。
トランジスタ自体はおもいっきり非線形素子なのでその辺りも調査しながら、気をつけなくてはいけないことを探っていこうと思います。
回路図としては前回示した以下の回路をベースに出来るだけ所望の特性が出るようにしていこうと思います。

最初に制約条件、設計仕様を示しておきます。
・トランジスタは 1 つだけ。
・電源電圧は + 5 V のみ。
・入力信号は ±0.5V ぐらい。増幅率はとりあえず 3 倍くらい(どうしてもアバウトになるのはオペアンプとは違うので)。
・そこで出力電圧も ±1.5V ということになります。
・帯域はオーディオ帯域程度。DC は通しません。歪みも少ないに越したことはないという程度。
さて、トランジスタは電流を使って電流を制御であって、その端子のうちの B(ベース)は入力端子でありそこに流し込む電流によって、トランジスタのエミッタ、コレクタ電流が決まります。決まるのはあくまでも電流です。その電流を電圧に変換するのは抵抗の役目です。
なので、+ 5 V から R1(10K)- トランジスタ C - トランジスタ E - R2(3.3K)- GND に流れる電流とそれに対応した電圧配分というものを考えておかなくてはいけません。
最初の設計仕様で入力電圧は ±0.5V ぐらいといいました。つまり 1 V p-p です。中心電位はさておきトランジスタのエミッタにはその電圧振幅が現れると云うことです。出力電圧はというと約 3倍ということで ±1.5V つまり 3 V p-p です。この振幅がトランジスタのコレクタに現れます。ですので、信号成分としては 1 V + 3 V は電源電圧の中から配分されていなくてはいけないということです。そうすると残りは 1 V しか残っていませんから、トランジスタの特性を考慮しながら配分することになります。
今手元に 2SC1815 の資料がないのでだいたいで決めてしまいますが、トランジスタはエミッタ電流がゼロになってしまうと遮断領域に入ってしまうので、エミッタ電位は最低でもここでは 0.1 V は確保しておくことにしましょう。つまり信号の振幅の最低レベルが 0.1 V ということになります。ですので 0.1 V / 3.3 K = 30 uA は最低でも流れておくようにします。そうするとコレクタ電位の最高値は 10 K x 30 uA となって 0.3 V は + 5 V から低くなると云うことになります。
そうするとトランジスタのエミッタ、コレクタ間の最小電位差は 5 - 0.3 - 3 - 0.1 = 0.6 V でなんとかリニア動作してくれそうな範囲です。これが当然ですがマイナスになったらトランジスタは飽和領域に入ってしまうので、スイッチング動作のようになって出力信号が歪み出します。
ことばで説明したのでまだるっこしかったと思いますので、簡単な図を書いてみました。
ちょっと回路図の関係で電圧のスケールが奇妙ですが我慢して下さい。

これでトランジスタの出力電圧配分が決まりました。今度はこれに合うように入力側の条件を決めていきます。
ポイントはエミッタの中心電位です。グランドから見て 0.1 V までしか入力電圧が下がらないようにしなくてはいけないので、入力信号の半値振幅は 0.5 V ですから、エミッタ電位の中心は 0.6 V ということになります。
さてここからが問題ですが、通常ベース電位はエミッタ電位の 0.6 V から 0.7V ぐらい上がったところ、となっています。
まあ当たらずといえども遠からずなのですが、トランジスタによっても若干違ったりして悩むところです。ここではえいや!と 0.7 V としてしまいます。理由は低めにしてしまうとエミッタ電位の最低値 0.1 V が確保できなくなったりするので、それぐらいなら、エミッタ、コレクタ間の電位差が下がっても余裕がありそうだからです。
ということでベース電位が決まりました。0.6 V + 0.7 V = 1.3 V になります。
では、+ 5 V から単純に抵抗分割すれば良いのかというとちょっと気にしておかなくてはいけないのが、ベース電流です。トランジスタがアクティブに動作するには、コレクタ電流の 1 / hFE の値をベース電流に流し込んでかつベース電位が所望の電位を持っていなくてはいけません。コレクタ電流の最大値は + 5 V / (10 K + 3.3 K) = 0.38 mA ただし実際にはトランジスタが電圧降下を持つのでもう少し小さいです。とりあえずこの値を使って hFE = 100 ぐらいを期待したとして、3.8 uA の振れ幅を持ちつつ、ベース電位を 1.3 V 付近に維持しておけるような定数を R3、R4 に選ばなくてはいけません。ベースとなる回路では 330 K と 100 K で分圧していますが、ここに流れている電流は 11uA なので少々影響を受けそうです。
これを問題視するかしないかは要求精度で決まります。もっとも単純な対策は一桁抵抗値を下げてしまえばいいわけで、ベース電流が多少変化しても(hFE がばらついても)動作点が大きく狂うことはありません。ついでに R4 を単純な分圧して求められる値より少し高めにしておけば、ベース電位 1.3 V の精度が上がります。
ただし、回路全体で見ると入力インピーダンスが下がるので入力コンデンサ C2 の値を大きくする必要があります。でないと低域まで特性がカバー出来ません。
ということで、もっともらしい R3 と R4 としては、33 K と 12 K ぐらいにしてみます。C2 は 10 uF にします。
回路図はこれです。負荷抵抗は外しました。後で出てきます。

波形はこれです。1KHz ±0.5 V の信号を入れて見ました。

Vout はもっともらしく、100 % とは行きませんが ±1.5 V ぐらいの信号になっています。一見良さそうなんですがちょっと問題ありなのが、一番上の ib(Q1) でしたベース電流はあるところで急速に電流が上がっています。電圧波形としてみた場合は結果オーライなのですが、少しオーディオ的な性能が欲しい場合には良からぬ歪みになりそうです。
これらのデータから分かる原因を考えてみましょう。
兆候は一番下のトランジスタの電圧波形に見えています。
カーソルで示しているところを見て下さい。エミッタ電圧は 1.2 V とと 0.1V 高めに出てしまいました。その分エミッタ電流 = コレクタ電流が増えてコレクタ電流が下がってきました。そしてエミッタ電位との差は少なくなってしまっていますが、その時にベース電位がコレクタ電位より上がってしまっています。つまりベース-コレクタ間ダイオードが順方向になってしまっているので、ベース電流が急激に増えてしまっているわけです。
戻ってベース電流の絶対値を見てみましょう。想定より少なく最大でも 2.0 uA ぐらいです。ちょっと気にしすぎて R4 を小さめにしすぎたかも知れません。R4 を 10K にして同様に波形を取ってみます。

かなりギリギリですが、なんとかトランジスタのリニア領域だけで動作させていられるようです。
周波数特性はこうなりました。まあ良好でしょうか。

Vout の FFT 結果です。入力との比較で表示しましたがなぜか Vin 自体にたくさん高調波乗っているので良いのかどうか分かりません。

実はちょっとそもそもの設計コンセプトに無理がありまして + 5 V 電源で 3 倍程度の増幅率で ±1.5 V の出力を得るというのが無茶振りのようです。マイクアンプなどに使いたい場合は、入力はもっと小さいでしょうし増幅率も高いでしょう。
トランジスタ自体はおもいっきり非線形素子なのでその辺りも調査しながら、気をつけなくてはいけないことを探っていこうと思います。