ちょっと前に仕事をしていたところで、装置のファンの動作について色々トラブルを経験したので、その内容とは直接関係ないが興味本位で安価なファンモータとはどういうものか調べてみた。
といっても装置で使っているものを持ってくるわけにはいかず、手持ちのジャンク品からと云うことで Intel 純正 LGA1156 のファン(元々 CPU についてあったもの。静音なものに変えたので余っていた)が 2個あったのでそれを動作確認しながら分解していくことにした。

モータの仕様をチェックしていてまず驚いたのが、単相 2 極(2 相 4 極?)だったということ。てっきり 3相かと思っていた。単相または 2 相だと回るには回るが方向はどうやって決まるのだろうか。ドライバーの仕様を見てもコイル端子は 2本しかなく正逆方向に流すことしか出来ず、ホールセンサを使って正逆を切り替えているのだろうが最初にどっちに回るのかはどうやって?
からくりは磁石の方にありそうだが、これは完全に固定されていて調べることができない。
色々サイトを調べてみたが、よく分からない。何か根本的に勘違いしているに違いない。

そういった疑問を残しながらであるがとりあえず電気的にはどういう動きをするかは調べられるので、そこは割り切って進めることにした。

まずは外観である。
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ヒートシンクを外した。
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このファンモータは制御端子がついていて、PWM 信号によって回転数を制御できることになっている。

1pin :PWM 制御端子。0% = 1000rpm、100% = 2000rpm
2pin :回転モニタパルス。オープンコレクタ。2 pulse / 1 回転
3pin :12V(他の電圧でも動くのかは未確認)
4pin :グランド

12V 電源をつなぎ、モータのグランド端子との間に 1Ωの抵抗を入れてその電圧を測定することで、モータに流れている電流を観測してみることにした。2pin は 12V でプルアップした。

まずは 100% デューティ(制御端子をオープンまたは 1.65V 以上の DC 電圧)の状態で起動時の波形を見てみる。

CH1 は電源電圧、CH2 はモニタパルスである。
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こちらは CH1 は電流波形、CH2 はモニタパルス。
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どうやら電流の収束ぐらいからすると 600msec ぐらいで所定の回転数になるようだ。

定常回転(2000rpm)になったときの電流波形とモニタパルスである。
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モニタパルスのエッジタイミング=相切り替えなので、その瞬間に過渡電流が流れている。同時に逆電流も短い時間であるが発生している。平均電流は 40mA でピークが 100mA ぐらいありそうなので気になるなら基板側はこれを吸収できるコンデンサの準備が必要だろう。ただし電解コンデンサは充放電の繰り返しをすると寿命が短くなるようなので(最近は改良されているのか?)部品選択は注意した方がよい。

PWM デューティと回転数をグラフにしてみた。
PWM パルスの基本周波数も振ってある。
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これによると、PWM の基本周波数が低すぎると(ここでは 100Hz)相切り替え周波数が 66Hz とに関係からか電流が暴れるらしく、回転が不安定で制御リニアリティが悪くなる。かといって高すぎると(ここでは 10KHz 以上)だとこれまたリニアリティは悪くなる。これは想像だが、PWM 信号を受け取った回路の応答性が悪く(おそらく立ち上がり方向が遅い)内部で PWM のデューティ比を正しく電圧出来ないからだろうと思われる。ということで 1KHz ぐらいが無難のようだ。
電流の極性を間違えてしまったが、100Hz と 1KHz の波形は残しておいた。
100Hz
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1KHz
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そこまでやったところで、さらに解体。
基板とコイル、ローターはこんな感じである。コイルは 4つある。
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モータドライバは ANPEC 社の APX9270 で、基本動作回路はこうなっている。
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これだけで十分動きそうな気がするが、他にもコンパレータなどいくつか部品がついている。最初の回転方向などについての疑問に対する答えかも知れない。

で、LGA1156 対応の Intel 純正ファンが余っているので詳細動作をもう一度見ようと思ったら、一見似ているがものが少し違っているらしく、動作も変わっていた。最初のやつをもう少し調べておけばよかったと後のお祭り騒ぎである。

今回得た知見としては、

・モータは相切り替えのところでパルス上の電流が流れるので、他の回路への注意が必要である。
・PWM で回転数を制御するタイプは、PWM の基本周波数に対してリニアリティがどうなっているのか調べておく必要がある。


というところか。

また何か手に入れたら調べてみたい。