高校生の娘が電気回路の応用問題がどう解いて良いか分からないので教えてくれ、と云ってきた。
回路はこれで、問題は真ん中の電流計はいくつを示すかという問題である。
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リケ女ではないので分からないのは仕方がない、ということだが、友達に聞きながら自分なりに考えたのが以下のストーリーである。

まずは電流計の抵抗を 0 Ωと置いて回路を書き換える。
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さらに並列抵抗同士をまとめるように書き換え、並列抵抗を計算して求める。この場合は、1/Ra = 1/R1 + 1/R2、1/Rb = 1/R3 +1/R4 ということで、Ra = R1R2/(R1 + R2)、Rb = R3R4/(R3 +R4) となって、Ra = 75 Ω、Rb = 85.7 Ωとなる。ちょっと端数が出てしまっているので学校の問題としては今一つか。R4 を 120 Ωにしておけば良かったとか。ちなみに抵抗(他のインピーダンス素子も同じ)を並列接続した時は R1//R2 と表して、合成抵抗値は(抵抗値の積)/(抵抗値の和)と覚えておけば良い。娘に教えたら感動していた。
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Ra Rb が分かったので、全体の抵抗値が決まり(75 + 85.7 = 160.7 Ω)電池から供給される電流 I も決まる。この場合は 18.7mA になる。
電池からは電流 I が流されているので、これは R1 と R2 に分けて流れることになり、その比は抵抗値の逆数の比である。よってちょっと添え字の説明は省略するが、

I = Ir1 + Ir2
Ir1 : Ir2 = 1/R1 : 1/R2

Ir1 = I / (100 + 300) * 300 = 14mA
Ir2 = I / (100 + 300) * 100 = 4.7mA

R3, R4 の方も同様に計算すると、

Ir3 = 8mA
Ir4 = 10.7mA

ということで各抵抗に流れる電流が求まった。
最初の図面に書き込んでみると、
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となる。
ここまでくればもう分かるだろう。R1 に流れ込んだ電流は 14mA なのに、その先にある R3 には 8mA しか流れていない。よってその差分が電流計に流れることになる。つまり 6mA である。念のため R2、R4 の方でも確認しておくと、R2 の電流は 4.7mA なのに対して電流計から 6mA 合流してくるから、合計 10.7mA が R4 に流れるはずでありその通りになっている。

やり方も結果も 100点満点である。娘も友達に聞いてこれの一歩手前までは到達できていたようだ。

ところが自分は次のような説明をした。

回路図はこのように書き換えられる。単に縦にしただけである。
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ここで一旦電流計を外して V1、V2 の電位を等価回路で表そうとすると、V1 は E を R1、R3 で抵抗分割した電位になり、V2 は R2、R4 で抵抗分割した電位になることが分かる。
よって回路図はこうなる。
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E1 と E2 は前述の抵抗分割した電圧なので、

E1 = 2V
E2 = 1V


ここで、V1 と V2 が電流計でつながれるとここは 0 Ω抵抗でつながれたことになり、E1 と E2 の電位差が(R1//R3)+(R2//R4) に流れることになるから、

I = (3 - 2) / (66.7 + 100) = 6mA


ということになる。
このやり方の良いところは、V1 と V2 の間に入るものが電流計ではなくて、通常の抵抗でも簡単に解けると云うことで有る。良くあるブリッジ回路の問題になるわけだが、仮に 33.3 Ωでつながっていたとすれば、上式の分母にこれを足せば良くて、
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I = (3 - 2) / (66.7 + 33.3 + 100) = 5mA

ということになる。
もちろんこの方法がベストと云うことはなく、電気回路の教科書を見ていくと色々な簡単化の定理があるのでそちらを使った方が楽だという人もいるだろう。
ただ私は長年の慣れで、電圧源を 2 つのインピーダンスで分割するような回路を見ると、脊髄反射的に分圧された電圧源と並列接続合成インピーダンスの直列回路をイメージしてしまうのでこうなってしまった。

で、さすがに高校生には無理だったようだ。この変換を理解するには電圧源と電流源の変換が必要で、電流源などと云うものは高校では扱わないのでよほど電気に好きな人でないと何が起こっているのかすら分からないだろう。

でも大学で電気工学を専攻した人なら容易に理解できると思うので、回路によっては解析が楽になるので気に留めておいても良いかと。
当ブログでも「やさしく考えるアナログ回路」の書庫ではちらちらを現れています。

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