理想オペアンプとリアルのオペアンプの違いを最初の頃に「電源電圧」「入力振幅」「ゲインと帯域」などのテーマで解説をしていましたが、あるとき脱線したらしばらく戻れなくなっていました。
ここの書庫ではオペアンプの使い方を中心に解説をして理想型についてはだいたいのところまでやったので、次のステップとして現実に起こりうることを把握しておきたいと思います。
脱線した記事の中には、「入力容量」「出力インピーダンス」などが実際の動作にどう関わるかを説明しているのがありますので、ある程度はカバーしていますが、抜けているものをいくつか取り上げていきます。
まずは入力オフセット電圧です。
これは読んで字の如く入力端子に内在するオフセット電圧のことです。オペアンプは (+)端子と (-)端子がほぼ同電位になるように出力電位を決めるのですが、この出力電位が安定しているためには「ほぼ同電位」=「オフセットを含んだ電位差」ということになります。
他にも入力端子間の電位差が発生する要素としてオープンループゲイン不足があるのですが、ここでは DC だけについてですのでほとんどがオペアンプ自体の持つ入力オフセット電圧として考えることにします。
反転増幅器を以下のように組んでみました。(+)端子はゼロ電位、入力信号は抵抗を通して (-)端子に接続されさらに帰還抵抗を通して出力端子に接続されます。

ここで入力信号がゼロ電位だったとします。すると入力抵抗に流れる電流はゼロ、よって帰還抵抗に流れる電流もゼロで (-)端子電位と出力電位は等しくなって、出力端子はゼロ電位で落ち着きます。
ところがオペアンプに入力オフセット電圧 Vos があったとすると、入力抵抗には Vos / R1 の電流が流れます。この電流が帰還抵抗に流れるので Vos / R1 x R2 の電位差が帰還抵抗に生じ、出力電圧としては Vos + Vos / R1 x R2 になります。これが入力オフセット電圧の影響となります。当然 R2 / R1 の比が大きいほど=ゲインを取ろうとするほど影響は大きくなります。
もっと単純な例を挙げると、非反転 x1 の場合は Vos がそのまま出力に現れます。
スペックシートではこんな記述になっています。

早い話がこの値が小さいほど DC 的に高精度なオペアンプといえます。
システム全体の設計としては一度どこかでこのオフセット電圧が発生すると、これを取り除くことは調整しない限りできませんから、初段なほど高精度なオペアンプが必要と云うことになります。
センサからの信号を増幅する場合は、出来るだけこの値が小さいオペアンプを選ぶと同時に増幅率も初段で稼ぎたいところです。
I - V 変換の場合は、利得補正をしない限りゲインはとりませんので、出力に現れるオフセットは変換利得に関係なく Vos そのままです。ですので I - V 変換利得はできるだけ高くとるのがコツと云うことになります。

スペックシートにはオフセット電圧の温度特性として、ΔVos / ΔT というのも載っています。通常の温度 25°のオフセットが温度で変化する割合を示しています。Typ. で 1.5uV / ℃ となっていますから、10℃ 上がれば 15uV ということで、Vos の Typ. の 23uV にこれが加算される形になります。
オペアンプのスペックシートには測定条件、測定回路が記載されていますので詳細を調べたい人はそちらを見て下さい。
大ざっぱにはスペックシートを見ながら上述の計算を行って「使用範囲では問題ないようだな(桁が違うとか、倍以上マージンがあるとか)」と判断したり、「調整が必要なようだ」という判断をすれば大丈夫ではないかと思います。何を持って大丈夫かは扱う製品の要求事項次第です。
特に初段のアンプの選定を誤るとシステム全体の性能に影響を与えますので注意が必要です。後で色々な付加回路を付けたり、自動調整プログラムを入れる羽目になるぐらいなら、初段のアンプにはコスト高でもそれなりの性能を持たせたものを選んだ方がトラブルが少ない、というのが私の経験です。
ここの書庫ではオペアンプの使い方を中心に解説をして理想型についてはだいたいのところまでやったので、次のステップとして現実に起こりうることを把握しておきたいと思います。
脱線した記事の中には、「入力容量」「出力インピーダンス」などが実際の動作にどう関わるかを説明しているのがありますので、ある程度はカバーしていますが、抜けているものをいくつか取り上げていきます。
まずは入力オフセット電圧です。
これは読んで字の如く入力端子に内在するオフセット電圧のことです。オペアンプは (+)端子と (-)端子がほぼ同電位になるように出力電位を決めるのですが、この出力電位が安定しているためには「ほぼ同電位」=「オフセットを含んだ電位差」ということになります。
他にも入力端子間の電位差が発生する要素としてオープンループゲイン不足があるのですが、ここでは DC だけについてですのでほとんどがオペアンプ自体の持つ入力オフセット電圧として考えることにします。
反転増幅器を以下のように組んでみました。(+)端子はゼロ電位、入力信号は抵抗を通して (-)端子に接続されさらに帰還抵抗を通して出力端子に接続されます。

ここで入力信号がゼロ電位だったとします。すると入力抵抗に流れる電流はゼロ、よって帰還抵抗に流れる電流もゼロで (-)端子電位と出力電位は等しくなって、出力端子はゼロ電位で落ち着きます。
ところがオペアンプに入力オフセット電圧 Vos があったとすると、入力抵抗には Vos / R1 の電流が流れます。この電流が帰還抵抗に流れるので Vos / R1 x R2 の電位差が帰還抵抗に生じ、出力電圧としては Vos + Vos / R1 x R2 になります。これが入力オフセット電圧の影響となります。当然 R2 / R1 の比が大きいほど=ゲインを取ろうとするほど影響は大きくなります。
もっと単純な例を挙げると、非反転 x1 の場合は Vos がそのまま出力に現れます。
スペックシートではこんな記述になっています。

早い話がこの値が小さいほど DC 的に高精度なオペアンプといえます。
システム全体の設計としては一度どこかでこのオフセット電圧が発生すると、これを取り除くことは調整しない限りできませんから、初段なほど高精度なオペアンプが必要と云うことになります。
センサからの信号を増幅する場合は、出来るだけこの値が小さいオペアンプを選ぶと同時に増幅率も初段で稼ぎたいところです。
I - V 変換の場合は、利得補正をしない限りゲインはとりませんので、出力に現れるオフセットは変換利得に関係なく Vos そのままです。ですので I - V 変換利得はできるだけ高くとるのがコツと云うことになります。

スペックシートにはオフセット電圧の温度特性として、ΔVos / ΔT というのも載っています。通常の温度 25°のオフセットが温度で変化する割合を示しています。Typ. で 1.5uV / ℃ となっていますから、10℃ 上がれば 15uV ということで、Vos の Typ. の 23uV にこれが加算される形になります。
オペアンプのスペックシートには測定条件、測定回路が記載されていますので詳細を調べたい人はそちらを見て下さい。
大ざっぱにはスペックシートを見ながら上述の計算を行って「使用範囲では問題ないようだな(桁が違うとか、倍以上マージンがあるとか)」と判断したり、「調整が必要なようだ」という判断をすれば大丈夫ではないかと思います。何を持って大丈夫かは扱う製品の要求事項次第です。
特に初段のアンプの選定を誤るとシステム全体の性能に影響を与えますので注意が必要です。後で色々な付加回路を付けたり、自動調整プログラムを入れる羽目になるぐらいなら、初段のアンプにはコスト高でもそれなりの性能を持たせたものを選んだ方がトラブルが少ない、というのが私の経験です。