今回はオーディオにおけるトーンコントロールについて調べてみます。
といってもちょっと検索すれば色々な回路や特性が紹介されていますので、ここでは私が昔疑問に思っていたことを調べるだけにします。
ということでこのグラフをご覧下さい。

大昔からよく云われているトーンコントロール特性を簡単に書いてみました。もちろんこんな感じという程度でプリメインアンプのカタログにはもっとちゃんと書いてあります。で、これは CR 型の場合で NF 型の場合は違います、とオーディオ解説書に書いてありました。
さてこのようなグラフを見たのは数十年前なので、その後電子電気工学を学んで仕事して改めてこのグラフを見ると非常に違和感があります。
どういうところかというと、CR フィルタで一次ローパスフィルタなりハイパスフィルタを作ると、その増減特性は ±6dB / oct(±20dB / dec)となるはずで、これらを何段か重ねたりアクティヴフィルタなどで増減特性を変えてもその整数倍(±12dB / oct、±18dB / oct ・・・)にしかならないはずですが、何故かこのグラフをみると中途半端な増減特性、つまり 0.x 次とでも言えるのでしょうか、一次フィルタよりも増減特性が低くなっています。
ちなみに NF 型は ±6db / oct はそのままでカットオフ周波数が変化すると書いてあったような気がします。
さて、CR 型はなんでこんな変な特性になるのでしょうか。それに位相特性はどうなっているのでしょうか。±6dB / oct の場合は位相は ±90°になっていますが、この場合はどうでしょうか。
ということでオペアンプを使ったトーンコントロール回路を見つけましたので、その低域増減回路の部分だけ取り上げてみます。
回路図はこんな感じです。

入力から入った信号は R1 を通じて (-)端子に向かいますが、途中で可変抵抗とコンデンサに分かれてしまいます。可変抵抗の中点は (-)端子に接続されていて、その先は先ほどのコンデンサと合流して R1 を通じて出力端子につながっています。
で、こういう場合は極端なケースを考えてみると分かると思って、可変抵抗の中点が回路図で左側(低域カット)と右側(低域ブースト)になった場合の回路を書いてみました。

低域カットの場合で考えてみますと、直流だったらコンデンサはオープンと考えて良いですから、オペアンプにとっての入力抵抗は R1 +R2 になります。ですのでこの場合の直流ゲインは R1 / (R1 + R2) < 1 になります。では超高域だったらというとコンデンサはショートと見なせるので、入力抵抗は R1 となり帰還抵抗 R1 と同じになりますからゲインは 1 になります。
低域ブーストの場合も同様に考えると、直流ゲインは (R1 + R2) / R1 > 1、超高域ゲインは 1 になります。ということで可変抵抗の位置によって低域をブーストしたりカットしたりすることが出来そうです。
R1, R2, C で構成された回路だけ取り出してみます。

この部分のインピーダンス特性はというと以下のような計算で求めることが出来ます。

最後の式を見てみます。s = 0 の時は直流を表すのですが、分数の部分は分母分子ともに 1 になるますから分数部分は 1、よってインピーダンスは R1 + R2 になるのが分かります。s → ∞ の時は分数部分は R1 / (R1 + R2) になり全体としては R1 のみになります。
ではその途中の周波数での特性はというと、分母の方が s に掛かる係数は大きいので 1 / 2πCR2 の周波数からインピーダンスが下がり始めて、R = R1 // R2 と置いておいて 1 / 2πCR の周波数でインピーダンスの減少が止まるというわけです。実際には位相も変わりますので、緩やかに変化します。こういう特性が入力抵抗になって帰還抵抗との関係で周波数特性を持つわけです。あるいは帰還抵抗になって入力抵抗との関係で周波数特性を持ちます。
似たようなのが以前の記事で出てきました。
前々回の補足>位相進み遅れ補償回路
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/7859743.html
このように一次フィルタ特性の組み合わせを行うことで、振幅を減少させたり減少をある周波数からやめたりすることができます。その時の位相はというと、±90°まで変化しないうちにもと(0°)に戻されるため中途半端な位相を持つことになります。完全なフィルタと違うのはその中途半端な位相にとどまることはない、ということでしょうか。
ということで百聞は一見しかずとシミュレーションで確認してみます。
回路図はこうです。約 1KHz より低い帯域をブースト/カットするようにしてみました。

シミュレーション結果はこうなりました。

確かに ±6dB / oct より傾斜が緩い増減特性を持っています。位相も一旦遅れたり進んだりしますが、 1KHz から離れるとまたゼロに戻っていきます。
で、±6dB / oct になっていない理由を整理しますと、前述の位相進み遅れフィルタと比較してプースト/カットの比が小さいため、±6dB / oct の特性になる前にフラットなってしまうため、±6dB / oct には見えない、ということになります。別に 0.x 次フィルタになったわけではありません。
ですのでトーンコントロール特性を模式的に表すのであれば、こちらの表現の方が設計的な感じがします。

とはいえ、実際にシミュレーションでも緩い増減特性を持っていることが確認できたので、そういうものかとしておきたいと思います。
ちなみにコンデンサの代わりにインダクタンスを使うと高域側のトーンコントロール回路を作ることができます。
もっともインダクタンスや抵抗値が現実的でないと思われるので、あくまでも構成上の話ですが。この構成でやるならシミュレテッドインダクタを使うことになりそうです。
インダクタンスの場合のインピーダンス特性は次のようになります。

オーディオ解説などではトーンコントロールは効かせれば効かせるほど歪む、などと書かれていたようですが、もちろんアンプや素子の問題の他に位相が周波数毎に変化してしまうという問題もあるのかも知れません。デジタル信号処理ではそれを回避する方法がありそうですが。
といってもちょっと検索すれば色々な回路や特性が紹介されていますので、ここでは私が昔疑問に思っていたことを調べるだけにします。
ということでこのグラフをご覧下さい。

大昔からよく云われているトーンコントロール特性を簡単に書いてみました。もちろんこんな感じという程度でプリメインアンプのカタログにはもっとちゃんと書いてあります。で、これは CR 型の場合で NF 型の場合は違います、とオーディオ解説書に書いてありました。
さてこのようなグラフを見たのは数十年前なので、その後電子電気工学を学んで仕事して改めてこのグラフを見ると非常に違和感があります。
どういうところかというと、CR フィルタで一次ローパスフィルタなりハイパスフィルタを作ると、その増減特性は ±6dB / oct(±20dB / dec)となるはずで、これらを何段か重ねたりアクティヴフィルタなどで増減特性を変えてもその整数倍(±12dB / oct、±18dB / oct ・・・)にしかならないはずですが、何故かこのグラフをみると中途半端な増減特性、つまり 0.x 次とでも言えるのでしょうか、一次フィルタよりも増減特性が低くなっています。
ちなみに NF 型は ±6db / oct はそのままでカットオフ周波数が変化すると書いてあったような気がします。
さて、CR 型はなんでこんな変な特性になるのでしょうか。それに位相特性はどうなっているのでしょうか。±6dB / oct の場合は位相は ±90°になっていますが、この場合はどうでしょうか。
ということでオペアンプを使ったトーンコントロール回路を見つけましたので、その低域増減回路の部分だけ取り上げてみます。
回路図はこんな感じです。

入力から入った信号は R1 を通じて (-)端子に向かいますが、途中で可変抵抗とコンデンサに分かれてしまいます。可変抵抗の中点は (-)端子に接続されていて、その先は先ほどのコンデンサと合流して R1 を通じて出力端子につながっています。
で、こういう場合は極端なケースを考えてみると分かると思って、可変抵抗の中点が回路図で左側(低域カット)と右側(低域ブースト)になった場合の回路を書いてみました。

低域カットの場合で考えてみますと、直流だったらコンデンサはオープンと考えて良いですから、オペアンプにとっての入力抵抗は R1 +R2 になります。ですのでこの場合の直流ゲインは R1 / (R1 + R2) < 1 になります。では超高域だったらというとコンデンサはショートと見なせるので、入力抵抗は R1 となり帰還抵抗 R1 と同じになりますからゲインは 1 になります。
低域ブーストの場合も同様に考えると、直流ゲインは (R1 + R2) / R1 > 1、超高域ゲインは 1 になります。ということで可変抵抗の位置によって低域をブーストしたりカットしたりすることが出来そうです。
R1, R2, C で構成された回路だけ取り出してみます。

この部分のインピーダンス特性はというと以下のような計算で求めることが出来ます。

最後の式を見てみます。s = 0 の時は直流を表すのですが、分数の部分は分母分子ともに 1 になるますから分数部分は 1、よってインピーダンスは R1 + R2 になるのが分かります。s → ∞ の時は分数部分は R1 / (R1 + R2) になり全体としては R1 のみになります。
ではその途中の周波数での特性はというと、分母の方が s に掛かる係数は大きいので 1 / 2πCR2 の周波数からインピーダンスが下がり始めて、R = R1 // R2 と置いておいて 1 / 2πCR の周波数でインピーダンスの減少が止まるというわけです。実際には位相も変わりますので、緩やかに変化します。こういう特性が入力抵抗になって帰還抵抗との関係で周波数特性を持つわけです。あるいは帰還抵抗になって入力抵抗との関係で周波数特性を持ちます。
似たようなのが以前の記事で出てきました。
前々回の補足>位相進み遅れ補償回路
http://blogs.yahoo.co.jp/susanoo2001_hero/7859743.html
このように一次フィルタ特性の組み合わせを行うことで、振幅を減少させたり減少をある周波数からやめたりすることができます。その時の位相はというと、±90°まで変化しないうちにもと(0°)に戻されるため中途半端な位相を持つことになります。完全なフィルタと違うのはその中途半端な位相にとどまることはない、ということでしょうか。
ということで百聞は一見しかずとシミュレーションで確認してみます。
回路図はこうです。約 1KHz より低い帯域をブースト/カットするようにしてみました。

シミュレーション結果はこうなりました。

確かに ±6dB / oct より傾斜が緩い増減特性を持っています。位相も一旦遅れたり進んだりしますが、 1KHz から離れるとまたゼロに戻っていきます。
で、±6dB / oct になっていない理由を整理しますと、前述の位相進み遅れフィルタと比較してプースト/カットの比が小さいため、±6dB / oct の特性になる前にフラットなってしまうため、±6dB / oct には見えない、ということになります。別に 0.x 次フィルタになったわけではありません。
ですのでトーンコントロール特性を模式的に表すのであれば、こちらの表現の方が設計的な感じがします。

とはいえ、実際にシミュレーションでも緩い増減特性を持っていることが確認できたので、そういうものかとしておきたいと思います。
ちなみにコンデンサの代わりにインダクタンスを使うと高域側のトーンコントロール回路を作ることができます。
もっともインダクタンスや抵抗値が現実的でないと思われるので、あくまでも構成上の話ですが。この構成でやるならシミュレテッドインダクタを使うことになりそうです。
インダクタンスの場合のインピーダンス特性は次のようになります。

オーディオ解説などではトーンコントロールは効かせれば効かせるほど歪む、などと書かれていたようですが、もちろんアンプや素子の問題の他に位相が周波数毎に変化してしまうという問題もあるのかも知れません。デジタル信号処理ではそれを回避する方法がありそうですが。