前回までアクティヴフィルタ設計をする場合のオペアンプの選び方の注意点を解説しました。
今回は実際の抵抗、コンデンサの値をどう選ぶかについて一例を挙げてみたいと思います。
まず回路構成と伝達関数を示します。
このような回路の場合、

伝達関数は以下のようになります。

この関数式は確かに特性を正しく表しているのですが、いざ設計しようとするとカットオフ周波数と飛び上がり量が設計目標値としてあがってくると思うので、各素子の値からそれらがすぐにイメージできません。回路解析には向いているのですが。
そこでまず s^2 の項に着目して、カットオフ周波数を考えてみますと、s = jw とした場合に w = 1 / (R1R2C1C2)^0.5 の時にこの項が -1 となることが分かり、定数項(+1) と相殺して s の項だけ残ることが分かります。ここがカットオフ周波数(あるいはピーク周波数)と云うわけです。
ここで R を R1 と R2 の相乗平均、C を C1 と C2 の相乗平均となるように考えると、w = 1 / (RC) となりカットオフ周波数がわかりやすくなります。前回までコンデンサの値を 2KC、C / 2K とおいたのはこの相乗平均を一定にするためだったのです。
さて現実に抵抗やコンデンサの値を任意に選ぶことが出来るのなら前回までの検討で問題ないのですが、実際はコンデンサは抵抗より値の自由度が少なく、せいぜい 12 系列(1.0, 1.2, 1.5, 1.8, 2.2, 2.7, 3.3, 3.9, 4.7, 5.6, 6.8, 8.2)、もしかしたら 6 系列程度しかないかも知れません。その他に 2.0、3.0 が加わるぐらいでしょう。これに対して抵抗は 24 系列はたいてい準備されています。
これではカットオフ周波数は抵抗で何とかなってもピーク量は上手く設定できないかも知れません。そこで今回は抵抗も相乗平均を一定にしたままアンバランスにすることで、ピーク量を細かくコントロールしてみようと思います。
以下の式を見て下さい。先ほどの伝達関数から抵抗、コンデンサの相乗平均をそれぞれ一定 R, C に保ったまま係数 M, N を与えてアンバランスにしています。

K に関する M, N の関係式が途中に出てきますが、K と N は単純な比例関係なのに対して、M は K に対して 1 が最大になるような関数になっています。(下図)

最後は二次関数の解の公式により K, N が先に与えられたとして M の取るべき値が示されるわけですが、平方根の中がゼロ以上であるためには N は K より大きくなくてはならず、つまり M はどう選んでも N で決められた K より大きくは設定できないことになります。まだるっこしい云い方になってしまいましたが、要するに欲しい K が決まったならそれより大きくなるように N を選び、M を適当に調整して欲しい K に大きい方から近づける、という手順になると云うことです。
例を示してみましょう。
設計目標として、カットオフ周波数を 10KHz、飛び上がり量を 3(= 10dB)のフィルタを作るとします。
まず基準となる R, C を決めます。わかりやすいところで R = 15.9KΩ、C = 1000pF とします。
K = 3 ですから、N は 3 以上にしなくてはいけません。この場合 C1 = 3 x 2 x 1000pF = 6000pF となりますから、12系列でそれより大きめの一番近いところで、6800pF とします。C2 = 1000pF / 2 / 3 = 167pF となりますから、150pF というところです。C1 と C2 の相乗平均は 約 1010pF になりますので、誤差は 1% 程度です。N は 6.8 / 2 = 3.4 ということになります。
K = 3, N = 3.4 先ほどの最後の式に入れると、M = 1.67 が得られます。あらかじめエクセルなどで式を作っておくと簡単ですね。
結局 R1 = 1.67 x 15.9KΩ = 26.5KΩ、R2 = 15.9KΩ / 1.67 = 9.54KΩ となります。24系列の中で近いものを探すと、R1 = 27KΩ、R2 = 9.1KΩというところでしょうか。R2 の誤差がちょっと気になる人は直列に抵抗を入れても良いと思います。
元の式に戻って念のため計算しておきましょう。
カットオフ周波数 = 1 / 2 /π /(R1R2C1C2)^0.5 =10.053KHz となってほぼ目標値通りです。
ピーク量はシミュレーションでおおよそ 9.4dB と一応近い値になりました。もう少し微調整したい場合は抵抗値の比を小さくすれば良いです。


ちなみに R1 と R2 はどちらを大きくしても同じですが、前回の検討で R1、C1 のルートで流れる電流は小さい方がオペアンプの特性の影響が少ないことから R1 > R2 にしておけばいいでしょう。
設計と云うことでこれが最適というものではありませんが、考え方の参考になれば幸いです。
今回は実際の抵抗、コンデンサの値をどう選ぶかについて一例を挙げてみたいと思います。
まず回路構成と伝達関数を示します。
このような回路の場合、

伝達関数は以下のようになります。

この関数式は確かに特性を正しく表しているのですが、いざ設計しようとするとカットオフ周波数と飛び上がり量が設計目標値としてあがってくると思うので、各素子の値からそれらがすぐにイメージできません。回路解析には向いているのですが。
そこでまず s^2 の項に着目して、カットオフ周波数を考えてみますと、s = jw とした場合に w = 1 / (R1R2C1C2)^0.5 の時にこの項が -1 となることが分かり、定数項(+1) と相殺して s の項だけ残ることが分かります。ここがカットオフ周波数(あるいはピーク周波数)と云うわけです。
ここで R を R1 と R2 の相乗平均、C を C1 と C2 の相乗平均となるように考えると、w = 1 / (RC) となりカットオフ周波数がわかりやすくなります。前回までコンデンサの値を 2KC、C / 2K とおいたのはこの相乗平均を一定にするためだったのです。
さて現実に抵抗やコンデンサの値を任意に選ぶことが出来るのなら前回までの検討で問題ないのですが、実際はコンデンサは抵抗より値の自由度が少なく、せいぜい 12 系列(1.0, 1.2, 1.5, 1.8, 2.2, 2.7, 3.3, 3.9, 4.7, 5.6, 6.8, 8.2)、もしかしたら 6 系列程度しかないかも知れません。その他に 2.0、3.0 が加わるぐらいでしょう。これに対して抵抗は 24 系列はたいてい準備されています。
これではカットオフ周波数は抵抗で何とかなってもピーク量は上手く設定できないかも知れません。そこで今回は抵抗も相乗平均を一定にしたままアンバランスにすることで、ピーク量を細かくコントロールしてみようと思います。
以下の式を見て下さい。先ほどの伝達関数から抵抗、コンデンサの相乗平均をそれぞれ一定 R, C に保ったまま係数 M, N を与えてアンバランスにしています。

K に関する M, N の関係式が途中に出てきますが、K と N は単純な比例関係なのに対して、M は K に対して 1 が最大になるような関数になっています。(下図)

最後は二次関数の解の公式により K, N が先に与えられたとして M の取るべき値が示されるわけですが、平方根の中がゼロ以上であるためには N は K より大きくなくてはならず、つまり M はどう選んでも N で決められた K より大きくは設定できないことになります。まだるっこしい云い方になってしまいましたが、要するに欲しい K が決まったならそれより大きくなるように N を選び、M を適当に調整して欲しい K に大きい方から近づける、という手順になると云うことです。
例を示してみましょう。
設計目標として、カットオフ周波数を 10KHz、飛び上がり量を 3(= 10dB)のフィルタを作るとします。
まず基準となる R, C を決めます。わかりやすいところで R = 15.9KΩ、C = 1000pF とします。
K = 3 ですから、N は 3 以上にしなくてはいけません。この場合 C1 = 3 x 2 x 1000pF = 6000pF となりますから、12系列でそれより大きめの一番近いところで、6800pF とします。C2 = 1000pF / 2 / 3 = 167pF となりますから、150pF というところです。C1 と C2 の相乗平均は 約 1010pF になりますので、誤差は 1% 程度です。N は 6.8 / 2 = 3.4 ということになります。
K = 3, N = 3.4 先ほどの最後の式に入れると、M = 1.67 が得られます。あらかじめエクセルなどで式を作っておくと簡単ですね。
結局 R1 = 1.67 x 15.9KΩ = 26.5KΩ、R2 = 15.9KΩ / 1.67 = 9.54KΩ となります。24系列の中で近いものを探すと、R1 = 27KΩ、R2 = 9.1KΩというところでしょうか。R2 の誤差がちょっと気になる人は直列に抵抗を入れても良いと思います。
元の式に戻って念のため計算しておきましょう。
カットオフ周波数 = 1 / 2 /π /(R1R2C1C2)^0.5 =10.053KHz となってほぼ目標値通りです。
ピーク量はシミュレーションでおおよそ 9.4dB と一応近い値になりました。もう少し微調整したい場合は抵抗値の比を小さくすれば良いです。


ちなみに R1 と R2 はどちらを大きくしても同じですが、前回の検討で R1、C1 のルートで流れる電流は小さい方がオペアンプの特性の影響が少ないことから R1 > R2 にしておけばいいでしょう。
設計と云うことでこれが最適というものではありませんが、考え方の参考になれば幸いです。